不動産の所有権が甲乙丙と順次移転したのに、登記名義は依然として甲にある場合には、丙が甲に対し直接自己に移転登記を請求することは、甲および乙の同意がないかぎり、許されない。
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事件番号
昭和39(オ)985
事件名
所有権移転登記等請求
裁判年月日
昭和40年9月21日
法廷名
最高裁判所第三小法廷
裁判種別
判決
結果
棄却
判例集等巻・号・頁
民集 第19巻6号1560頁
原審裁判所名
大阪高等裁判所
原審事件番号
昭和38(ネ)8221
原審裁判年月日
昭和39年5月22日
判示事項
中間省略の登記を求める請求の許否。
裁判要旨
不動産の所有権が甲乙丙と順次移転したのに、登記名義は依然として甲にある場合には、丙が甲に対し直接自己に移転登記を請求することは、甲および乙の同意がないかぎり、許されない。
*****判決文全文 最高裁ホームページ*****
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人西阪幸雄の上告理由第一点について。
法律解釈の根拠、理由の説明は、必ずしも判決に示す必要がないのであるから、
これを欠いているからといつて、審理不尽、理由不備の違法があるとはいえない。
論旨は採用することができない。
同第二、三点について。
実体的な権利変動の過程と異なる移転登記を請求する権利は、当然には発生しな
いと解すべきであるから、甲乙丙と順次に所有権が移転したのに登記名義は依然と
して甲にあるような場合に、現に所有権を有する丙は、甲に対し直接自己に移転登
記すべき旨を請求することは許されないというべきである。ただし、中間省略登記
をするについて登記名義人および中間者の同意ある場合は別である。(論旨引用の
当裁判所判決は、すでに中間省略登記が経由された後の問題に関するものであつて、
事案を異にし本件には適切でない。)本件においては、登記名義人の同意について
主張、立証がないというのであるから、上告人の中間省略登記請求を棄却した原判
決の判断は正当であつて、不動産登記法に違反するとの論旨は理由がない。また、
登記名義人や中間者の同意がない以上、債権者代位権によつて先ず中間者への移転
登記を訴求し、その後中間者から現所有者への移転登記を履践しなければならない
のは、物権変動の経過をそのまま登記簿に反映させようとする不動産登記法の建前
に照らし当然のことであつて、中間省略登記こそが例外的な便法である。右の法解
釈をもつて経験則や慣習に違反しているとの論旨もまた理由がない。所論は、いず
れも採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 田 中 二 郎
裁判官 五 鬼 上 堅 磐
裁判官 横 田 正 俊
裁判官 柏 原 語 六
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事件番号
昭和39(オ)985
事件名
所有権移転登記等請求
裁判年月日
昭和40年9月21日
法廷名
最高裁判所第三小法廷
裁判種別
判決
結果
棄却
判例集等巻・号・頁
民集 第19巻6号1560頁
原審裁判所名
大阪高等裁判所
原審事件番号
昭和38(ネ)8221
原審裁判年月日
昭和39年5月22日
判示事項
中間省略の登記を求める請求の許否。
裁判要旨
不動産の所有権が甲乙丙と順次移転したのに、登記名義は依然として甲にある場合には、丙が甲に対し直接自己に移転登記を請求することは、甲および乙の同意がないかぎり、許されない。
*****判決文全文 最高裁ホームページ*****
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人西阪幸雄の上告理由第一点について。
法律解釈の根拠、理由の説明は、必ずしも判決に示す必要がないのであるから、
これを欠いているからといつて、審理不尽、理由不備の違法があるとはいえない。
論旨は採用することができない。
同第二、三点について。
実体的な権利変動の過程と異なる移転登記を請求する権利は、当然には発生しな
いと解すべきであるから、甲乙丙と順次に所有権が移転したのに登記名義は依然と
して甲にあるような場合に、現に所有権を有する丙は、甲に対し直接自己に移転登
記すべき旨を請求することは許されないというべきである。ただし、中間省略登記
をするについて登記名義人および中間者の同意ある場合は別である。(論旨引用の
当裁判所判決は、すでに中間省略登記が経由された後の問題に関するものであつて、
事案を異にし本件には適切でない。)本件においては、登記名義人の同意について
主張、立証がないというのであるから、上告人の中間省略登記請求を棄却した原判
決の判断は正当であつて、不動産登記法に違反するとの論旨は理由がない。また、
登記名義人や中間者の同意がない以上、債権者代位権によつて先ず中間者への移転
登記を訴求し、その後中間者から現所有者への移転登記を履践しなければならない
のは、物権変動の経過をそのまま登記簿に反映させようとする不動産登記法の建前
に照らし当然のことであつて、中間省略登記こそが例外的な便法である。右の法解
釈をもつて経験則や慣習に違反しているとの論旨もまた理由がない。所論は、いず
れも採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 田 中 二 郎
裁判官 五 鬼 上 堅 磐
裁判官 横 田 正 俊
裁判官 柏 原 語 六