協定を結ぶことは、有効な手段であると考えます。記事にあります。「風穴があきました!」
まちづくりにも応用できそうですね。
■再開発準備組合と周辺マンション管理組合等団体が結んだ協定の骨子
・超高層建築物を建築しようとする場合、再開発準備組合は「周辺マンション管理組合及び町会等」に事前に丁寧に説明する
・説明に対して「周辺マンション管理組合及び町会等」が意見を述べた場合、再開発準備組合は理解を得るよう最大限努める
・生活住環境維持のため必要があれば、「周辺マンション管理組合及び町会等」は再開発準備組合に協議会の開催をいつでも求めることができる
・「周辺マンション管理組合及び町会等」は超高層建築物周辺の生活住環境維持のため、再開発準備組合に環境影響評価を求めることができる
・超高層建築物を建築しようとする場合、再開発準備組合は「周辺マンション管理組合及び町会等」の意見提起、環境影響評価、生活住環境維持対策の要求などについて事前に協議することで、実質的に事前に了解を得る仕組みとする
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https://digital.asahi.com/articles/DA3S13427297.html
(時時刻刻)立地外の原発同意、条件 原電、「地域特性」を強調 東海第二、新協定
2018年3月30日05時00分
日本原子力発電東海第二原発をめぐって29日に締結された新しい協定で、再稼働や延長運転には立地自治体だけではなく、周辺自治体の同意も必要になった。全国初の試みに、権限の拡大を求めてきた各地の原発周辺自治体は歓迎の意向を示す一方、電力会社は再稼働のハードルが上がりかねないと警戒を隠せないでいる。▼1面参照
「意見を真摯(しんし)に拝聴して納得いただけるまでとことん協議させていただく」。茨城県東海村役場で開かれた会合後、原電の村松衛社長は厳しい表情で語った。
協定では、同原発が再稼働や延長運転をする時に6市村が意見を述べたり安全対策を求めたりした場合、原電がきちんと対応するという仕組みを設けることで、6市村の「地元同意」につなげた。
協定締結に至った理由について、村松社長は「地域特性」を強調した。
福島第一原発事故後、「脱原発」を訴える東海村の村上達也・前村長らが首長懇談会を設立。「原発事故は周辺自治体にも影響が大きい」と、現行の安全協定を改定し、事前了解の権限を拡大するよう原電に求めてきた。また東海第二原発は首都圏に近く、半径30キロ圏だけで全国最多の約96万人が住んでいる。原電は先送りを繰り返してきたが、14年には首長懇と覚書を交わし、安全協定を見直すと約束した。
背景には同原発が今年11月、原則40年の運転期間を終えるという事情がある。昨年11月に原電が同原発の運転延長を国に申請する前には、首長懇が事前了解の権限拡大を強く求め、「実質的な事前了解」という言葉を原電から引き出した。水戸市の高橋靖市長は今回の協定について、「一つの自治体でも納得しなければ再稼働しないということ」と評価した。
課題は今後6市村の意見集約をどう図るかなどの運用面だ。6市村の中で意見が食い違った場合、「協議の打ち切りはない」(原電)としているが、実際の運用がどうなるかは不透明。首長懇の座長を務めた東海村の山田修村長は、多数決による合意は「向かないのかなと思う」としたが、合意形成の方法は今後検討するとした。
(箱谷真司、比留間陽介)
■他原発の周辺自治体、歓迎
福井県の3町に原発11基(4基は廃炉決定)を持つ関西電力は、立地する同県と3町のほか、県内4市町、京都府と同府内7市町、滋賀県と同県内2市と安全協定を結んでいる。
東京電力福島第一原発の事故後、京都府や滋賀県は立地と同様の安全協定を関電に求め、福井県は「地元の範囲は『立地』」と牽制(けんせい)してきた。関電は協定を結ぶ範囲を広げたが、異常時の連絡や事故時の損害補償などにとどまっている。
福井県敦賀市に敦賀原発がある原電も同様だ。ある周辺自治体の担当者は「東海第二原発の安全協定は一つの事例になる」と期待感を示した。
今月23日に3号機が再稼働した九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)。30キロ圏は福岡、佐賀、長崎3県の8市町にまたがり、長崎県壱岐市など周辺の3市が再稼働に反対している。その一つ、松浦市の友田吉泰市長は「地元の定義も含め、国に見直しをしてもらう必要がある」と話した。一方、玄海町の岸本英雄町長は29日、今回の安全協定について、「拒絶する権利も担保した事前了解なのか即断できない。もしそうなら一自治体でも国策にストップをかけられることになるので、全く腑(ふ)に落ちない」と話した。
九州電力の瓜生道明社長は29日の記者会見で、事前了解の対象拡大について考えを問われ、「事業者がどうこういう筋合いのものではない」と繰り返し、距離を置く姿勢を示した。
原発の再稼働を急ぐ電力業界や国にとっては、事前了解の範囲を拡大する動きが広がれば、再稼働へのハードルがまた上がることになる。ある大手電力幹部は「ほかの原発の周辺自治体から同じ声が上がる可能性は十分ある」と警戒する。
これに対し、経済産業省幹部は、そもそも事前了解に法的根拠はなく、紳士協定にすぎないとの考えで、「他の地域に広がったらどうしようという心配はない」。今回も個別の話と捉え原子力行政全体への波及を避けたいとの思いをにじませた。
(荻原千明、福岡泰雄)
■<視点>理不尽な枠組みに風穴
原発の30キロ圏にあり、事故に備えた避難計画策定を義務づけられながら、肝心の再稼働に待ったをかける権限がない。そんな理不尽な日本の原子力防災の枠組みに、風穴が開いた。東海第二原発の再稼働をめぐり、周辺5市が日本原子力発電に、初めて事前了解の権限を認めさせた。
東京電力福島第一原発事故の反省から、原発の防災対策の重点区域は30キロ圏に拡大された。電力会社は30キロ圏の自治体と新たに安全協定を結ぶなどの対応はとってきたが、再稼働の事前了解の権限は、あくまで原発の立地市町村と道県にしか認めてこなかった。
事前了解の権限を求める周辺自治体の動きは全国に広がる。九州電力玄海原発に近い長崎県や、中部電力浜岡原発がある静岡県などでも、立地自治体と同等の権限を求める声がある。今回の協定を受け、権限を求める動きは強まるだろう。
30キロ圏の自治体の首長は住民の「生命、身体及び財産を災害から保護する」避難計画をたて、実施する責務を法的に負う。再稼働の可否の判断に加わって当然だ。今回の原電の対応は、周辺自治体の反発が無視できなくなったことを示す。他の電力会社もこの協定を重く受け止め、事前了解の権限の範囲を見直すべきだ。
(編集委員・上田俊英)
■日本原子力発電(原電)と6市村が結んだ協定の骨子
・原発の再稼働や延長運転をしようとする場合、原電は6市村に事前に丁寧に説明する
・説明に対して6市村が意見を述べた場合、原電は理解を得るよう最大限努める
・安全確保のため必要があれば、6市村は原電に協議会の開催をいつでも求めることができる
・6市村は原発周辺の安全確保のため、原電に現地確認を求めることができる
・再稼働や延長運転をする場合、原電は6市村の意見提起、現地確認、安全対策の要求などについて事前に協議することで、実質的に事前に了解を得る仕組みとする
◆キーワード
<日本原子力発電> 1957年設立の原発専業会社。株主に東京電力ホールディングスや関西電力など大手電力会社が並ぶ。保有する4原発のうち東海原発、敦賀原発(福井県)1号機は廃炉作業中。敦賀2号機は原子炉建屋の直下に活断層が存在する可能性が指摘され再稼働が厳しい情勢で、東海第二の再稼働が経営の浮沈を握っている。