築地市場の移転候補地豊洲6丁目東京ガス工場跡地に生鮮食料品を扱う卸売市場を建設することに関しての環境アセスメント(環境影響評価)がなされています。
年末年始にかけて『環境影響評価書案』が出され、私も意見書を都に送りました。
このたび、引き続きの『環境影響評価書案に係る見解書ー豊洲新市場建設事業ー』(平成23年2月 東京都)が出されましたので、こちらでもお伝えいたしておきます。
中央区における閲覧については、以下。
縦覧期間
2月25日(金曜日)から3月16日(水曜日) (閉庁日を除く)
縦覧時間
午前9時30分から午後4時30分
縦覧・閲覧場所
・区役所7階環境保全課・日本橋特別出張所、月島特別出張所
・京橋図書館、日本橋図書館、月島図書館
・都庁第二本庁舎8階環境局 都市地球環境部環境都市づくり課
以上。
****以下は、環境影響評価書案に対して出した私の意見書(再掲)****
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/0807151627066fb0f1d3f543f176ed8a
環境影響評価書案―豊洲新市場建設事業―平成22年11月(再実施)に対する意見書
中央区議会議員、小児科医師(医学博士)
小坂 和輝(43歳、男)
東京都中央区月島3-30-3
メール:kazuki.kosaka@e-kosaka.jp
1全般事項
a) 基本姿勢に関して
・豊洲新市場建設事業での土壌・地下水浄化対策を行うにあたり、世界に冠たる東京都の誇りをもって正々堂々・公明正大に、世界に通用する環境改善処置を行っていただきたい。
・中央環境審議会の「最新の土壌汚染対策のあり方についての答申」等を最大限尊重し、WHOのガイドラインを尊重し、世界中に通用する土壌汚染対策・水質汚濁対策はこうあるべきという規範を示すことが重要である。全体の土壌改善プロセスを世界中の誰でもが理解し納得できるレベルでの使用化を行い、公開することを通して、環境改革の技術者を育て技術の向上に貢献する端緒としての役割を東京都の積極的なリーダーシップのもとで担うべきであると考える。土壌対策・水質改善対策が必要な世界中の要求に東京都が確立する仕様での改善プロセスの適用を可能とし環境改善技術の提供を考慮してほしい。
・豊洲での経験を有効活用し、改善プロセスの改良に反映し、一豊洲土壌対策・水質汚濁対策に留まらず、改善されたプロセスの活用を内外(国内だけでなく海外)の汚染地域の環境改善に役立てることを推進すべきである。
・この観点からの考察及びリーダーシップは、残念ながら今までの専門家会議、技術会議の議事録・報告書、または東京都の豊洲新市場整備方針の中には見当たらない。ぜひ、この観点での見直しを切にお願いする。
(上記は、調査計画書における意見の再掲です。(本編10-5)再度、上記意見をもって、東京都及び環境影響評価審議会委員の皆様に問いたいと思います。)
b)環境影響評価審議会における専門家会議・技術会議の提言内容の是非の評価
環境影響評価審議会では、専門家会議・技術会議で提言された内容で土壌汚染処理ができるかどうかをきちんと検証し、その上で環境アセスメントを行っていただきたい。
土壌汚染調査及び土壌汚染処理技術の是非を論じる中で、その汚染処理技術の問題点が見えてくるはずである。たとえば、有楽町層以下の汚染調査を行っていないため、汚染が地下に残存し続けることがわかる。また、地下水汚染もその汚染源である土壌汚染を完全に除去しない限り、地下水汚染は続くことになる。すなわち、汚染状況がつづくことを前提に、環境影響評価書案を立てる必要性が出てくることになる。
このように、専門家会議・技術会議の提言の是非の評価を審議するのとしないのとでは、環境アセスメントの方向性を大きく変ってくる。
どうか、環境影響評価審議会においては、委員各位に専門家会議・技術会議の提言の是非の評価をし、ご議論いただけることを願う。その議論をもとに、環境影響評価書案を作成することを求める。提出いただいた環境影響評価書案では、残念ながら是非の議論がないため、本評価書案を認めることはできない。
C)『環境影響評価書案』作成の時期の不適切さ
『環境影響評価書案』をいくら読んでもどの場所にどのような土壌汚染対策工事をするかは、特定出来ない。
土壌汚染対策工事設計に関する発注が、本評価書案の縦覧が行われている最中の平成22年12月になされているとのことであり、本来ならば、土壌汚染対策工事設計が出され、土壌汚染工事の全容があきらかになった後に、『環境影響評価書案』を作成されるべきである。
土壌汚染対策工事の全容を把握しないまま作成された『環境影響評価書案』は、意味を成さないため、本評価書案を認めることはできない。
このことは、同様に都知事自身が、調査計画書審査意見書に対して、
「【項目全般】1 土壌汚染対策工事において、汚染土壌及び地下水を仮設プラントにより処理する計画をしていることから、仮設プラントの施設の種類ごとに施設規模、処理対象物質、処理方法等の緒元を明らかにすること。2 仮設プラントごとに処理対象物質や処理方法等が異なると考えられることから、事前に仮設プラントの性能や特徴等を調査し、調査項目の見直しやそれらの影響について検討し、その検討結果を詳述すること。 3 工事施行中における予測方法について、選定した項目によっては「施行計画に基づき予測する。」と記載されていることから、事業の進捗にあわせ、適切な予測手法などを設定して予測・評価すること。」(本編10-2)
と意見を述べている。この知事の意見をきちんと反映して本評価書案が作成されたとは考えにくい。
2対象範囲について
事業の実施により環境に影響が及ぼす地域の範囲が、中央区(晴海一丁目~五丁目)と江東区(豊洲一丁目~六丁目、有明一丁目)に限られている(本編9-1)。首都圏3300万人の広域市場建設であり、東京都全域を対象範囲とすべきである。
3環境影響評価の項目について
「災害時における予測評価」がなされていない。専門家会議や技術会議で懸念されていたことであるが、軟弱地盤の上への卸売市場建設であり、万が一の震災時には、液状化にともない、汚染土壌が卸売市場に噴出することになる。
4土壌汚染
a)専門家会議の土壌汚染調査で汚染を見逃す可能性
理由1)10mメッシュでは、ピンポイントで存在している汚染を見逃してしまう。
理由2)有楽町層以下の土壌汚染調査が未実施であり、有楽町層に汚染が存在した場合、見逃してしまう。
(なお、有楽町層以下に汚染が拡大する理由は、①有楽町層が水を通さない不透水の層ではなく、水を通しにくい難透水であり、たとえゆっくりでも汚染が拡大するはずである。②有楽町層を何本も貫く東京ガス工場当時の杭が存在し、その杭を通じ汚染が拡大するはずである。③実際に、有楽町層以下にも汚染が拡大した場所が、新聞報道で指摘されている。)
理由3)盛り土の土壌汚染が存在する。これは、もともと汚染物質が混入した土の搬入である場合と、地下水の上昇に伴い、下に存在していた汚染物質が上昇して再汚染した二つの場合が考えらる。盛り土汚染の状況を、盛り土の再調査やコアサンプルの再分析を行うなどして、評価すべきである。
土壌汚染を見逃すことは、土壌の無害化ができないことに通じる。
であるのであれば、そのような場所に卸売市場を建設すべきではないという結論が先であるが、少なくとも環境影響評価書案では、「工事の完了後」においても、土壌汚染物質の確認を行う評価項目をいれるべきである。
b)路補助315号線下の汚染の存在
本評価書案には、道路補助315号線下の土壌汚染を、評価の対象外としている。
道路補助315号線の部分の環境影響評価を行わなくてよいのか、別に行うのか。
また、道路補助315号線の部分の土壌汚染が無害化できたことを証明していただきたい。
c)土壌汚染対象有害物質を25へ拡大
今後、新市場移転候補地は、土壌汚染対策法が改正されて同法に定める土壌汚染の「指定区域」と改めて指定されることになる。
よって同法にそって、10mメッシュで、深度方向も1m間隔で10mまで、対象有害物質を25に広げて再度土壌汚染調査を実施すべきである。
変電所付近であれば、PCB汚染(コンデンサーに使用される絶縁油汚染)もあるはずであるが、その評価がなされていないため、これも含め、必ず、調査されねばならない。
5地下水汚染/地下水汚濁
a)ヒ素、鉛は、環境基準10倍以下の自然由来の汚染は放置することについて(都議会経済港湾委員会で、ヒ素と鉛については、10倍以下は土壌調査や対策をしないと回答していることについて)
改正土壌汚染対策法では、自然由来と操業由来の区分がなくなり、自然由来であろうが、処理の対象となっている。
技術会議でも地下水も環境基準以下にすると結論づけている。
改正土壌汚染対策法に従わず、また、技術会議の結論にも従うことなく、地下水汚染を残したままの卸売市場開設は、許されるものではない。
環境影響評価書案では、「工事の完了後」においても、地下水汚染物質の確認を行う評価項目をいれるべきであり、無害化を確認出来ない場合は、それ以降の工事の進行を中断するように環境アセスメントの側からの措置を講ずることを強く要望する。
b)観測井戸設置の数、位置の記載の欠如
観測井戸をいくつつくり、地下水汚染が無害化されたことをいかに確認するかの記載がない。
環境影響評価書案では、「工事の完了後」においても、地下水汚染物質の確認を行う評価項目をいれるべきである。
c)地下水汚染のみの区域の汚染処理の記載について
地下水汚染のみの汚染が存在ということはありえない。汚染源があって地下水汚染が生じる。汚染源を特定し取り除かないかぎり地下水汚染はなくならない。
環境影響評価書案では、「工事の完了後」においても、地下水汚染物質の確認を行う評価項目をいれるべきである。
d)現状において、地下水汚染が区域外に流出している
テレビ朝日の報道で明らかになったが、地下水が区域外に現状において、流出している。
この事実に対し、東京都は、どのような対策をとる考えか。
この事実から考えられることは、汚染は必ず、矢板で囲おうがその外に出て行く可能性があると言うことである。
環境影響評価書案では、「工事の完了後」においても、地下水汚染物質の確認を行う評価項目をいれるべきである。
e)2年間の地下水モニタリング
改正土壌汚染対策法では、土壌汚染・地下水汚染処理後、2年間のモニタリングをすることを規定している。
きちんと2年間の地下水モニタリングを行い、無害化を確認してから、卸売市場建設工事に入るべきであるが、2年間のモニタリングを待たずに、建設工事を進める記載になっている。
無害化の確認なしの建設工事着工は、許されることではない。
6地盤沈下
a)地下水揚水に伴う地盤沈下をみているのみであり、工場立地に伴う地盤沈下の評価をしていない。
埋め立て地であるこの土地が軟弱地盤であることの指摘はなされているところであり、葛西市場のように地盤沈下は起こりうる。
環境影響評価書案では、「工事の完了後」においても、地下水管理だけでなく、地盤沈下についての評価項目をいれるべきである。
7大気汚染
a)ベンゼン・ベンゾaピレンの中温加熱処理(約10800㎡、日量約270㎥)の処理において出されるガスによる大気汚染評価がなされていない。
このことは、同様に都知事自身が、調査計画書審査意見書に対して、
「【大気汚染、土壌汚染】2 汚染土壌に掘削・処理及び汚染地下水の処理工事に伴い大気環境中へ放出されるベンゼンについて予測事項としているのに合わせ、同工事の実施により揮散するおそれのあるその他の化学物質についても、必要に応じて、予測・評価の実施について検討すること。」(本編10-2)
と意見を述べている。この知事の意見をきちんと反映して本評価書案が作成されたとは考えにくい。改めて、同工事の実施により揮散するおそれのあるその他の化学物質についても、必要に応じて、予測・評価の実施について検討することを行うことを強く要望する。
検討を行わないのであれば、揮散するおそれのあるその他の化学物質を都民にきちんと説明をおこなっていただきたい。
b)土壌汚染処理における粉塵の評価についても
土壌汚染処理における粉塵の評価についても上記と同様である。
このことは、同様に都知事自身が、調査計画書審査意見書に対して、
「【大気汚染、土壌汚染】1 本事業の工事は大規模かつ長期間にわたることから、各種工事に伴い発生する土ぼこり等の粉じんの予測・評価について検討し、その検討結果について、記述すること。」(本編10-2)
と意見を述べている。この知事の意見をきちんと反映して本評価書案が作成されたとは考えにくい。いったいどこに検討結果を記述したのか。
検討結果を記述していないのであれば、記述をすることを強く求める。
8リスクコミュニケーション
「地下水位•水質のモニタリングや点検の結果を、東京都と市場関係者で共有し、意見交換を行い、その結果をその後の管理に反映させることが必要です。
そのための一つの方策として、学識経験者も入った、管理に関する協議会を設置し、共同で適切かつ長期的な管理を図る方法も有効です。
→都・市場業者及び学識経験者からなる協議会を設置し、共同で適切かつ長期的なリスク管理を図る方法も有効です。」(『専門家会議報告書のあらまし』10ページ)
とあるにもかかわらず、『環境影響評価書案』には、協議会設置の記載がない。
きちんと、協議会の設置について記載を行うことを求める。
そして、実際に協議会を設置し、第三者の立場から、土壌汚染・地下水汚染が処理がきちんとなされているか、無害化がなされているかを確認することを求める。
この協議会の設置の約束なしに、これ以上、移転に向けて話を進めることを、許すことはできない。
9その他
a)給排水計画
築地市場では、海水を浄化して利用している。
豊洲新市場では、上水と集水した雨水のことは、記載しても、海水の記載がない。当然、土壌汚染、地下水汚染のある周辺海域の海水の再利用などありえないわけであるが、海水使用ができない点で、豊洲新市場は、水産物の市場にはふさわしくないことがわかる。
海水利用ができない点を明記すべきである。
b)コアサンプルの保存
採取したサンプルは、土壌汚染対策法上きちんと「5年間保存」されねばならない。それが、保存されることなく、破棄されることは、あってはならない。後からの検証ができなくなってしまう。
現在、豊洲汚染土壌コアサンプル廃棄(証拠隠滅)差止請求訴訟がなされているところであるが、コアサンプルがきちんと保存されることを求める。
c)東京ガスの地歴の入念な見直しを
協力会ヤード周辺や道路下、6街区の貯水池がかつてあった周辺などを中心に汚染物質が埋まっている可能性が指摘されている。
操業当時、汚染物質が、どの場所で、どのような処理がなされ、どこに埋められたのかという事実を、東京ガスから資料提供を受け、現況調査で明らかにすべきである。
d)土壌汚染処理対策のいわゆる新技術の実行可能性について
東京都は、土壌汚染処理対策の新技術の実行可能性を説明していない。
環境アセスメントの計画書以前に、きちんと実行可能性を説明すべきである。
① バイオ処理技術の実行可能性
複合汚染の場合、微生物は死滅して、機能しないはず。実際にかつて、東京ガスは、豊洲のこの場所で試みて失敗している。
② 加熱処理の実行可能性
場@)中温加熱処理のドラム
ドラムを作成する技術の欠如がいわれている。
場A)水分含有量の多さによるコストの増大
水分を多く含んだ土壌の加熱処理では、まず、水分を飛ばすため多大なエネルギーを浪費することになるといわれている。
場B)加熱処理時の有毒ガスの処理技術
水分を多く含んだ汚染土壌を加熱した場合、蒸発した水分の中に含まれる化学物質の処理が明確に示されていない。
③ 地下水浄化の実行可能性
場@)浄化の処理膜
処理膜を用いる必要を考えるがその技術の欠如が言われている。
場A)地下水の揚水法
粘性の強い土壌から、地下水を抜き出す技術の欠如が言われている。
場B)周囲からの地下水の進入
地下水を出し切ろうとしても、囲いの外から、水が浸透してきて、出し切ることは不可能と言われている。
e)液状化対策について
土壌汚染処理と液浄化対策を同時に実施するフローがかかれていない。
f)土壌汚染地で働く人のマネジメント
豊洲の現場で、1000人程度働く人の健康被害を予防し、どのようにチェックするのか明らかにしていただきたい。
g)情報の公開について
今まで、ベンゾ(a)ピレンの高濃度の問題や、有楽町層への汚染の進展に関して、情報の隠蔽と誤解されても仕方のない報道がいくつかあった。
環境アセスメントの過程で情報公開をいかに担保するかを、環境影響評価書案の中で、明確に述べていただきたい。
h)東京ガスとの関係性について
そもそも東京ガスの土地を東京都が購入するが、購入する側がなぜ、お金を払って、購入先の土壌汚染処理をする必要があるかの説明責任を果たしていない。
また、現在、公金支出金返還訴訟がなされているが、購入した土地が不当に高く見積もられていたことの説明及び、これから新たに購入する土地についても不当に高く見積もった額で購入することの説明を求める。
i)ブラウンフィールドの土地、莫大な土壌汚染対策費用の586億円の支出について
ブラウンフィールド」(塩漬け土地)という概念が、環境・土木分野でいわれてる。
汚染対策費が、土地購入費の20%を上回ればそのように定義される。
豊洲の土壌汚染地は、土壌汚染対策費586億円、土地購入費1980億円(すでに購入720億円+今年度予算執行をするという1260億円)であり、586億円÷1980億円=0.295 約30%となり、ブラウンフィールドの定義に合致する。
そのような土地を、購入者である東京都が巨額の税金586億円の支出(土壌汚染が計画通り行かない場合、さらに費用はかさむ可能性あり。)を行うことが許されることとは到底考えづらい。
j)意見書への回答
集められた意見書に対しては、それぞれ、回答を行い、環境影響評価書案本編に回答とともに記載することを強く要望する。
以上、