お隣の区で、平成19年12月25日に可決された画期的な条例
『千代田区地球温暖化対策条例』
多くの学ぶべき点があるため、
全文を、転載いたします。
私が思う、学ぶべき点
①地球温暖化対策について、区の取るべき行動のあり方を、他区に先駆け定めた。
②中学生が前文を書いている。中学生の頃から区政・行政に参加するというシチズンシップ教育を実践している点。
③条例自体、すべての人が読んで判るように、書いている。
④区民の定義を、区に住むというだけでなく、区に働きに来る人、買い物に来る人まで含め、幅広く定義づけ、行政サービスを行おうとしている。
⑤千代田区だけが、温暖化対策をとるというのではなく、他の区がとろうとする温暖化対策を尊重し、それに協力していこうとする謙虚な姿勢がある。
などなど。
温暖化対策は、目に見えないし、すぐには重大なことは起こらず、知らず知らずの間に、重大な危機的状態に進行する。その危機は人類の存続にかかわる重大な事態が起こるのである。
だれもが、取り組まねばならぬこと。
しかし、きっと先進的に取り組んだ千代田区は、産業界から、すごい風当たりを食らうはずである。すでに、条例自体と同時に可決された附帯決議を読んでいて、その兆候が感じられる。
どうか、めげないでがんばっていただきたい。
そして、そのがんばりに、お隣さんとしてのここ中央区も早く追いつき、ともに地球を守る区にしていきたいと考える。
以下、紙ベースの条例を、その斬新さゆえ、実に興奮しながら、全文を打たせていただいた。
タイピング間違いはどうか、ご容赦を。
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前文
「千代田区は日本の経済の中心、だけど比較的緑が多くて、産業と自然の調和がとれた、過ごしやすい区だよね。」
「今よりもっと千代田区を緑でいっぱいにいして『緑の区、千代田』と呼ばれるようにしたいね。」
「そうだね。経済だけでなく環境対策でも中心地となる千代田区になったらいいな。」
「環境問題といってもいろいろあるよね。」
「うん、なかでも今は地球温暖化が深刻になってきているよ。」
「そうか。地球温暖化か。地球温暖化はおおきな気候変動をもたらし、大規模な自然災害の原因となって、生活や経済に大きな影響を与えるという問題があるよ。」
「ねえ、千代田区は、昼と夜の人口が大きく違うよね。」
「そう、住んでいる人よりも、仕事や勉強に来る人のほうが多いんだ。だから、区外から来る人にも地球温暖化防止を呼びかけなくてはならないよね。」
「千代田区で地球温暖化対策が進んでいけば、きっと他の地域にも、地球温暖化への意識が広がっていくよ。」
「千代田区を、地球温暖化対策で一歩先を行く発信地にしていこう。」
「みなさん、地球の中の日本、日本の中の東京、東京の中の千代田区として地球温暖化防止への取り組みを進めましょう。」
「千代田区が動いて、周辺の地域に、全国に、環境への取り組みを働きかけていこう。」
「世界中にこの取り組みを伝え、次の世代の人々に美しい地球を残しましょう。」
区内の中学生より
地球温暖化による気候変動は、すでに異常気象などにより私たちの生活に影響をもたらしています。このまま放置すれば、砂漠化の進行や海面上昇などの直接的な影響のほか、食糧不足、飲料水の枯渇、生態系の破壊など人類の生存基盤に一層深刻な影響が出てくるものと予想されています。
このため2050年までには、地球温暖化の主原因である温室効果ガス排出量を世界全体で半分以下にする必要があるといわれています。
千代田区で排出される温室効果ガスのほとんどは二酸化炭素です。千代田区には、わが国を代表する大企業や官公庁などが多く存在していて、今後も活発な事業活動や都市の再整備が見もまれるため、このままだとそのエネルギー消費により二酸化炭素の排出は増え続けます。
千代田区は、経済と環境とが調和した二酸化炭素の排出が少ない社会をめざし、この美しい地球を良好な状態で、こどもたちやさらに未来の人々に引き継ぐため、この条例を制定します。
第1章 はじめに
(目的)
第1条 この条例は、地球温暖化の防止に関し、次のことを定め、千代田区(以下「区」といいます。)にかかわるすべての人々が将来にわたり、より健康で快適な生活をおくれるようにするとともに、地球全体の環境保全に貢献することを目的とします。
(1)地球温暖化対策の基本となる考え方
(2)区や区民、事業者の責務
(3)地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進
(ことばの意味)
第2条 この条例で用いられることばの意味は、以下のとおりです。
(1)地球温暖化
人々の活動に伴い発生する二酸化炭素などが増加することによって、地球全体の地表と大気の温度を上昇させる現象をいいます。
(2)地球温暖化対策
人々の活動に伴い発生する二酸化炭素の量を減らすなど、地球温暖化の防止に役立つ方法をいいます。
(3)区民
区内に住んでいる人や、区内の企業や学校などで働き学ぶ人、買い物などで一時的に区を訪れる人をいいます。
(4)事業者
企業、官公庁(区を除きます。)その他の団体や個人事業主をいいます。
(5)京都議定書目標達成計画
気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(平成17年条約第1号)に基づき、政府が定めた計画をいいます。
(6)地球温暖化配慮行動
省エネルギーや省資源の取組みなど、地球温暖化の防止に役立つ行動をいいます。
(7)環境マネジメントシステム
「計画、実行、評価、見直し」の繰り返しにより、環境により良い行動を継続的に行う仕組みをいいます。
(8)千代田エコシステム
区にかかわるすべての人々が取り組みやすい環境マネジメントシステムをいいます。
(9)再生可能エネルギー
太陽光や風力など、二酸化炭素の発生が少なく、繰り返し活用できるエネルギーをいいます。
(10)未利用エネルギー
下水の熱や地中熱など、あまり利用されていないエネルギーをいいます。
(11)公有施設
区をはじめとする官公庁など、公的機関が保有する施設をいいます。
(12)低炭素型社会
人々の活動に伴い発生する二酸化炭素の量が少なく、地球全体の環境保全に貢献する社会をいいます。
(13)エネルギー事業者
電気やガスなどのエネルギーを供給する事業者をいいます。
(基本となる考え方)
第3条 区は、次の考え方に基づいて地球温暖化対策(以下「温暖化対策」といいます。)に取り組みます。
(1)区民が健康で快適に暮らすためのより良い環境を保ち、こどもたちやさらに未来の人々へ引き継ぎます。
(2)サービスの提供や都市の再整備などの事業活動と、より良い環境とがともに成り立つ社会を目指します。
(3)区や区民、事業者は、互いに知恵と力を出し合って、広く日常生活や事業活動のすべてにおいて温暖化対策に取り組みます。
(対策目標)
第4条 区は、次に定める目標を達成する社会をめざし、区民や事業者と協力しあって、温暖化対策に取り組みます。
(1)短期目標
2012年までに、京都議定書目標達成計画に定められた業務部門や家庭部門の水準を達成します。
(2)中期目標
2020年までに、区内の二酸化炭素排出量を1990年比で25%削減します。
(区の責務)
第5条 区の責任として行わなければならないことは、次のとおりです。
(1)温暖化対策に役立てるための計画や指針などを作成し、推進すること。
(2)区民や事業者に対し、区が実施する温暖化対策への参加協力を促すこと。
(3)区の事務や事業に関し、率先して温暖化対策に努めること。
(区民の責務)
第6条 区民の責務として行わなければならないことは、次のとおりです。
(1)日常生活や区内でのいろいろな活動において、温暖化対策に努めること。
(2)区が実施する温暖化対策に協力すること。
(3)他の区民、事業者が実施する温暖化対策に協力するよう努めること。
(事業者の責務)
第7条 事業者の責務として行わなければならないことは、次のとおりです。
(1)事業活動を行うとき、温暖化対策に努めること。
(2)事業活動に関して、区が実施する温暖化対策に協力すること。
(3)事業活動に関して、区民や他の事業者が実施する温暖化対策に協力するよう努めること。
(公表)
第8条 区長は、区内の二酸化炭素排出量を定期的に公表します。
2 区長は、具体的な温暖化対策の取組みや成果をその都度明らかにします。
第2章 地球温暖化対策の取組み
(地域推進計画)
第9条 区長は、区全体の温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するため、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「温暖化対策推進法」といいます。)に基づく地域推進計画を定めます。
2 地域推進計画は、次の事項を定めます。
(1)温暖化対策に関する計画期間や目標
(2)温暖化対策に関する具体的な方法
(3)その他、温暖化対策の推進に役立つ事項
3 区長は、地域推進計画を定めるときや変更するときは、区民や事業者の意見を反映するように努めます。
4 区長は、地域推進計画を定めたときや変更したときは、速やかに公表します。
(区の実行計画)
第10条 区長は、区の事務や事業に関し、自ら率先して温暖化対策に取り組むため、温暖化対策推進法に基づく実行計画を定めます。
(国や東京都などとの連携)
第11条 区は、温暖化対策を推進するため、広域的な取組みについては、国や東京都、他の地方公共団体と連携するよう努めます。
2 区は、近隣の地方公共団体と連携して、温暖化対策を推進するよう努めます。
(環境にかかわる教育や学習)
第12条 区は、区民や事業者の地球温暖化配慮行動(以下「配慮行動」といます。)を促すため、環境にかかわる教育を推進します。
2 区民や事業者は、環境にかかわる教育を行うとともに、学習に努め、配慮行動を実施するものとします。
(環境マネジメントシステム)
第13条 事業者は、千代田エコシステムなど環境マネジメントシステムの導入に努めるものとします。
2 区は、区民や事業者へ千代田エコシスエムの普及を促します。
3 区民は、千代田エコシステムへの参加に努めるものとします。
(建物に関するエネルギー対策)
第14条 区は、建物から排出される二酸化炭素の削減を図るため、次のエネルギー対策(以下「建物のエネルギー対策」といいます。)に取り組みます。
(1)建物の省エネルギー化
(2)再生可能エネルギーの導入
(3)未利用エネルギーの有効活用
2 公有施設を新築、増改築するものは、建物のエネルギー対策を導入するものとします。
3 公有施設を維持管理するものは、建物のエネルギー対策に努めるものとします。
(エネルギーの適切な使用)
第15条 区民や事業者は、日常生活や事業活動において、エネルギーを無駄なく適切に使用するものとします。
2 区民や事業者は、省エネルギー効率に最も優れた電気機器やガス機器など(以下「機器」といいます。)の使用に努めるものとします。
3 区は、区民や事業者が機器を買い換えるとき、省エネルギー効率に最も優れた機器の導入を支援します。
(相互支援の促進)
第16条 区は、区民や事業者が他の区民や事業者の行う温暖化対策について支援することを促進します。
第3章 推進制度
(配慮行動の促進)
第17条 区は、区民や事業者の配慮行動を促進するための指針(以下「配慮行動指針」といいます。)を作成し、公表します。
2 規則で定める一定規模以上の事業者(以下「特定事業者」といいます。)は、配慮行動指針に基づいて、積極的に従業員への環境教育などに取り組み、区長に対して定期的に計画書や報告書を提出するものとします。
3 特定事業者以外の事業者と区民は、配慮行動指針に基づいて、配慮行動に取り組み、区長に対して計画書や報告書を提出することができます。
4 区長は、大幅に二酸化炭素を減らすなど、模範となる配慮行動を行った区民や事業者を表彰し、公表します。
(低炭素型社会の形成)
第18条 区は、低炭素型社会の形成に関する指針を作成し、公表します。
2 区は、区内全域で、次のエネルギー対策に取り組みます。
(1)区長は、規則で定める一定規模以上の建物の新築や増改築を行う者に対し、低酸素型社会の形成に関する指針に基づいて、建物のエネルギー対策を求めます。
(2)建物のエネルギー対策を求められた者は、区長に計画書を提出し、建物のエネルギー対策の内容について協議を行うものとします。
3 区は、さまざまなまちづくりの取組みと連動して、次の温暖化対策に取り組みます。
(1)区長は、低酸素型社会の形成に関する指針に基づいて、地域の関係者と協議のうえ、より高い効果をあげるため集中的な温暖化対策を行う地域を温暖化対策促進地域として指定します。
(2)区長は、温暖化対策促進地域の関係者と協議を行い、低炭素型社会を目指した取組みを進めます。
(経済的支援)
第19条 区は、区民や事業者が行う温暖化対策について、基金の活用などにより経済的支援を行います。
2 区は、区民や事業者が他の区民や事業者の行う温暖化対策を支援できる仕組みを設けます。
3 区長は、温暖化対策推進のための資金の一部として、区民や事業者からの寄附のほか規則で定める一定の建築行為等を行う者に対して、適切な負担を求めることができるものとします。
(エネルギー事業者への協力依頼)
第20条 区長は、区内の二酸化炭素排出量を把握するため、エネルギー事業者に区内の総エネルギー使用実績の提出を依頼します。
2 エネルギー事業者は、区長の依頼に応じて協力するものとします。
(推進体制)
第21条 区長は、温暖化対策に関するさまざまな取組みを計画的に推進するため、必要な体制を整備します。
2 区長は、温暖化対策の推進や取組みの評価などに関する意見を聴くため、有識者や区民などから構成される組織を設置します。
3 区長は、温暖化対策を適切に推進するため、区民や事業者と連携した組織を設け、温暖化対策に関する情報提供や技術支援を行います。
第4章 その他
第22条 この条例について必要な事項は、区長が別に規則で定めます。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成20年1月1日から施行します。ただし、第17条から第19条までの規定と第21条の規定については、規則で定める日から施行します。
(条例の見直し)
2 この条例は、温暖化対策をめぐる技術の進歩や国内外の情勢の変化に合わせて、その都度見直すものとします。
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