「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

子どもの意見をでは、誰が聴くのか。アドボケイト(子どもの意見等表明支援員)の配置を中央区でも!

2024-12-28 13:44:02 | 小児虐待

 子どもの意見は、その子自身のことを聴くことも大事であるし(個別アドボカシー)、子ども達が関わる地域、学校、自治体の政策のことを聴く(システムアドボカシー)のも大事です。

 次期虐待防止法で、子どもが意見を表明することを支援するアドボケイトの養成についても議論されています。

 中央区でも、アドボケイトを担える人材が育成されいくことを願いっています。

*****小坂 区政報告抜粋********


*****朝日新聞2024.12.27********

 

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子ども虐待対応の手引き 全文は、こちらから。

2024-12-13 18:43:42 | 小児虐待

https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/hourei-tsuuchi/taiou_tebiki



 子どもを守るのが、小児科医の役目です。
 なんかあったら、お気軽に、お近くの小児科医へも。


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子ども虐待と体罰;予防に向けた取り組みとその背景 日本公衆衛生学会 シンポ11

2024-12-12 16:38:08 | 小児虐待

1、子どもへの体罰の現状と対応;日本と国際的な視点から

*2000年児童虐待法成立
    すこやか親子第一次 

 2015年すこやか親子第二次

*子ども虐待医学会 虐待対応プログラムBEAMS

 小児科学会 子ども虐待診療の手引き第2版(2014) 全65ページ
       同 第3版(2022)全105ページ

*虐待と体罰は地続き
 2019年児童虐待防止法、児童福祉法改正
 2022年12月民法改正 懲戒権の削除

 体罰 完全禁止 67カ国、2020年59番目、1979年スウェーデンで菌糸が一番

 体罰に代替
 ・父親の育児参加、子どもの注意を逸らす、より良い行動を伝える、こうしてほしいと伝える、良い行動をした時にほめる、タイムアウト(クールダウン、年齢✖️1分)

2、児童虐待防止に関する法律について
*児童虐待防止法第14条(親権行使と体罰)

*民法 第822条 懲戒 → 第821条 令和4年改正

*国内法には、体罰の定義がない。

3、体罰の予防から虐待のない世界へ

 

 

 

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虐待死を防ぐ。出生時の死亡を防ぐために、小児科医ができることは何か。

2024-10-24 09:31:05 | 小児虐待

 虐待死で、多いのが出生時の死亡。

 小児科医にも、産婦人科医にもかかっておらず一人で思い悩んだ結果なのだと、推察します。

 小児科医としての大きな課題でもあると考え、重く受け止めています。
 小児科医として防ぐ手立てもあると考えます。包括的性教育がその一つだと思っています。



*****朝日新聞2024.10.24******

 

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子どもアドボカシー(意見表明支援)って何ですか。

2023-07-02 19:53:35 | 小児虐待
子どもアドボカシー(意見表明支援)について


 この4月にこども基本法が施行、また、こども家庭庁も発足しました。最も大切な柱の一つとして、子どもアドボカシー(意見表明支援)が謳われています。すなわち、子どもの声を、その子自身の処遇や進路等を決める際にも、子ども施策を作っていく上でも、聴いていくことが進められることとなります(同法第11条)。
 小児科医師としても、ぜひとも進んでいってほしいと考える施策です。
 今回、これから広がるべき大切な施策、「子どもアドボカシー」について、特に、虐待などを受け児童相談所で保護された社会的養護を必要とする子ども達のアドボカシーにフォーカスを当ててお伝えさせて下さい。

1,「子どもアドボカシー」とは、何か。

 皆様も、子どもの頃、自分の気持ちや考えを無視•軽視されたと思う経験があると思います。その根底にあるのは十分に思いを聴いてもらえなかったことではないでしょうか。子どもアドボカシーは、児童養護施設に入所した子が自分に関する事柄についてどうあってほしいかいうことができず、ただ諦めて受け入れるしかなかったことの反省から、英国やカナダで始まりました。
 子ども自身の考えを一人で言えるように支援し、一人で言えないなら付き添ったり、代わりに言ったりする支援を行います。一言でいうと子どもの声の「マイクになること」です。
 子どもは保健福祉サービス等の「受動的な受益者」として大人から守られればよいとする(アダルティズム)のではなく、「権利の主体」として位置付け(児童福祉法第1条)、意見を述べる「能動的な参加者」とする発想の転換が今求められている中で、子どもアドボカシーが、政策の柱として位置づけられました。

2,子どもの声を聴くことの背景にあるもの

 コロナ禍、虐待件数が過去最高になったといいます。
 また、「ヤングケアラー」なる用語も、時々耳にするようになりました。法令上の定義はありませんが、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どもをいいます。例えば、がん、難病、精神疾患など病気のある家族のケアをしたり、アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応する子どものことです。令和2年度3年度の厚労省による全国実態調査では、中学2年生の約17人に1人の割合で「世話をしている家族がいる」結果となっています。
 そのような子ども時代に経験するトラウマ(心の傷)となりうる出来事を、小児期逆境体験(ACE、Adverse Childhood Experiences)と言います。1890年代から米国で始まった研究では、成人になって及ぼす影響が多大であるとする研究成果が出されています。それによると、①身体的虐待、②心理的虐待、③性的虐待、④身体的ネグレクト、⑤心理的ネグレクト、⑥親との別離、⑦近親者間暴力、⑧家族のアルコール依存・薬物乱用、⑨家族の精神疾患・自殺、⑩家族の服役の10の質問項目で経験した数の合計をACEスコア(0~10)とします。 ACEスコアと成人後の心身の疾患や問題行動に明らかな関連があるとスコアが4以上の人はゼロの人と比べ、がんになるリスクは1.9倍、脳卒中は2.4倍、アルコール依存は7.4倍、自殺未遂は12.2倍高いという結果が出ています。 また、失業や貧困、社会的孤立や子育ての困難も高率に来たします。 発症のメカニズムは、ストレス反応の変化、脳そのものの変化、遺伝子発現の抑制などと考えられます。
 小児期にACEによって受傷しながらも、その子どもが地域で信頼できる他者と関りをもつこと等で、その傷とうまく折り合いをつけて強く生きていくことが可能です。 トラウマへのケアもなされます。
 虐待を受けた子ども、ヤングケアラー、ACEサバイバーらの子ども達の声を、まずは、丁寧に聴いていかねばならないと考えるところです。
 
3,子どもの声を聴くうえで大切なこと

 虐待やヤングケアラーの子どもが、児童相談所を通じて、一時保護所や里親、児童養護施設などで保護されることとなります。いったん保護されている一時保護所から、家庭に戻りたいのか、施設に入るのか、里親制度を用いるのかその進路をどのように選択するのかや、社会的養護を受ける施設や里親の生活における困りごとがないかどうかについて、その保護された子どもの声を聴く者を、アドボケイト(意見表明等支援員)と言います。
 アドボケイトが子どもの意見を聞く場合に大切なことについて述べます。
 そもそも、それら子どもを支援する際は、子どもが、声を上げるのが難しい状況にあります。言ったことで自分がどのように評価されるかの不安、言ったことでの影響、言ったとしても何も変わらない、変わらなかったことによる無気力などが要因しています。
 しかし、感情や思考が抑圧された経験は、自分の人生なのに自分で決められないということであり、これからの人生でも孤立感・孤独感を抱き、助けてが言えないままとなるかもしれません。  
 あらゆる子どもにも通じる傾聴のありかたを以下、10のポイントとして述べます。

①安全をつくること :まずは、安全をつくること。笑顔で聞いてあげて、安心感を与えてあげる。気持ちを和らげてあげる。
②目を見て聴く:聞いてもらえたという実感を与えられるように努力する。そのことは、本人にしかわからないとしても。目を見て話すことも重要。
③さえぎらないこと :一つ一つ丁寧に、時間をかけて聴く。時間をかける中では、子どもが言ったことが、考えが変わることもあるかもしれないので、それが変わったとしても大丈夫であることも伝えてあげる。さえぎらずにに最後まで聴き切る。最後まで聞いてもらったと言えるように聴く。
④言葉だけでなく、声、表情を受け止める:本人が言ったことばをそのまま受け取るのではなく、声、表情なども入れ、総合的に判断する必要がある。恥ずかしくて言えていないこともある。
⑤言いたくないことは言わなくて良い、言ったことも撤回できる :言いたくないことは言わなくてよいこと、途中でやめてもよい、言ったことを撤回してもよいことを伝える。言いたくないことや表情が固くなることなどもあり、その場合は、体が固くなって苦しそうにみえるよなどナレーションを入れて対応する。間を大切にしながら聴く。その子の発したマイナスの感情もとても重要で、待つことも大事。
⑥遊びの場なども活用 :遊びをしながら、ぽろっということも非常に重要な意味を持つことがある。心の傷の体験などもごっこ遊びででることもある。
⑦大人としてではなく対等な立場で聴く、専門性の帽子を脱ぐ :大人の経験や専門性はまず横に置いておいて、アドバイスは途中でせず、聴き切る。誘導はしない。思い込みで聴く側も判断しない。アドバイスを求めているかなども判断してから、行う。
⑧子どもには力がある :子どもには、力があることを信じて聴く。その子なりの経験や考えがあり、敬意をもってきく。
⑨トラウマインフォームドケアのスキル:トラウマインフォームドケアについても学びながら傾聴のスキルを上げていくことが重要。
⑩学校連携 :学校などの他機関との連携を行う。

 社会的養護を必要とする子ども達を中心に、子どもアドボカシーについて述べました。今後、社会的養護の分野における子どもアドボケイトを東京都は、新しく養成を始めることとなります。本年1月に都の児童福祉審議会で『児童相談所が関わる子供の意見表明を支援する仕組み(子供アドボケイト)の在り方について』として提言が出されたばかりの大変新しい施策として実施されていくこととなります。
 ご関心のあるかたは、どうか、「アドボケイト養成講座」にご参加され、子どもの意見表明をご支援いただけますようにお願いします。
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小児期の逆境体験(Adverse Childhood Experences、略してACE(エース)或いはACEs(エーシーズ))への対応の重要性について、情報発信しました。

2023-06-24 08:50:43 | 小児虐待

 ACE(Adverse Childhood Experences)への対応の重要性について、情報発信しました。


 

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小児科医としても、小児期逆境体験ACEsが、心理面だけではなく、様々な疾患の原因となってきており重要です。

2023-05-23 15:49:10 | 小児虐待

 小児期逆境体験ACEsが、課題に上ってきています。

 小児科医としても、小児期逆境体験ACEsが、心理面だけではなく、様々な疾患の原因となってきており重要です。

 逆に、小児期逆境体験ACEsを予防することで、それら疾患の発症も押さえていくことが可能であります。

 よい新刊本が出されたということを池田 裕美枝先生のSNSで知りました。
 学びを深め、取り組みを進めていきたいと思います。

*****朝日新聞2023.4.28*******



*******新刊本******
ACEサバイバー ――子ども期の逆境に苦しむ人々 (ちくま新書 1728) 新書 – 2023/5/11

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人口20万人となることが既に想定されている中央区は国の新基準に則った児童相談所設置の検討が喫緊の課題であると考えます。

2021-12-14 19:05:17 | 小児虐待

 国の方も、2021.7.21児童相談所の設置に関して、厚労省通知「新基準」(後掲)と言われる通達を出しました。
 20万人~100万人にの管轄人口に一施設を設置をうたっており、中央区も20万人の人口を有する区となることを見据え児童相談所設置は、喫緊の課題となってきました。


 では、児童相談所を設置する場合に、何を注意しながら設置をすればよいか、日本子ども虐待防止学会での学びを受け思うところを書きます。

1、地域の中の児童相談所

●地域に寄り添う

●関係機関との連携、警察との連携

●地域で見守る体制作り

2,一時保護所

●定員をどうするか

例、江戸川区児童相談所 人口約70万人、児童人口約10.5万人 定員35名

●定員を超える場合の対応は、里親などの地域資源は。

●急速な入所対応、臨機応変

●子ども会議、子どもの意見表明、アドボケイトをどう保護していくか。
 子どもの自主的なイベント開催

●子どものニーズの把握

●登校は?教育の保障は?児相内分教室か。

●生活訓練

●公共と個室との分離、閉鎖性の排除、自律的、自治的

●近隣自治体の一時保護所で実践をしつつ、中央区へフィードバック

●第三者委員、第三者評価、外部の目

●職員倫理、メンタルヘルス対応、職員間の意思疎通、チームで支援



3,職員の養成 

●絶対的な数をどうするか

例、江戸川区児童相談所 職員総数182人(32人) 令和3年4月現在、東京都比3倍。
            児童福祉司 49人、児童心理司 24人

●特にスーパーバイザー(SV)の要請も重要

4,子ども家庭支援センターと児童相談所との関係をどうするか

例、江戸川区では、二元体制を集約し、一元化とされている。

5,常勤弁護士の配置

6,虐待対応

●虐待初動班を置くか、地区担当制にするか

例、江戸川区では、地区担当制を導入、介入から支援まで同じ児童福祉司が行う

●地域との連携

民生・児童委員、保健師、生活保護、コーディネーターとの連携

要保護児童対策協議会、実務者部会

7、デジタル化
●音声分析・モニタリングシステム:電話の会話が、自動的に文字おこしをし文章化、スーパーバイザーが適切に助言できる。出現する単語によっては、アラートが点滅。

●一時保護リスクアセスメントシステムとしてAIの活用。

8、DV対応

●DV支援員を配置

●相談に来れないかた、相談に来る気力のないかたへの相談

●シェルター

●切れ目のない支援

●若年女性の自殺

●児童相談所と一緒の家庭訪問

●女性相談、DV相談

●カウンセリングやケアプログラムの導入

●男女共同参画センターとの連携

9,学術との連携

●世界の取り組みを参考にする

●学術的な検討を活かす

など


******厚労省通知******
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210726N0030.pdf








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子どもに関わられているすべての皆様へ、誰一人の子どもも取り残さない家族を支える支援の基礎知識がオンデマンドでめいっぱい学べます。

2021-12-09 19:02:06 | 小児虐待

子どもに関わられているすべての皆様へ

誰一人たりとも、子どもを取り残さないように、家族を支える支援の基礎知識がオンデマンドでめいっぱい学べます。

令和3年12月4日(土)、5日(日)開催の『日本子ども虐待防止学会』第27回学術集会 かながわ大会

今からでも、申し込みができて、オンデマンドで講演、シンポジウムの多くを見ることができます。

絶対に、おすすめします。

私も、学んでいます。

参加申し込み:https://www.jaspcan27.jp/entry.html

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日本子ども虐待防止学会 第27回学術集会かながわ大会

2021-12-06 10:54:28 | 小児虐待

 オンデマンド配信もあるとのこと、勉強させていただきます。

➨ https://www.jaspcan27.jp/index.html

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社会的養護、その情報発信の動画

2021-12-05 15:12:45 | 小児虐待

 社会的養護、「保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うこと」
 厚労省:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/syakaiteki_yougo/index.html

 社会的養護を受けられた当事者のかたがたが、情報発信をされています。

 https://www.businessinsider.jp/post-214691

 THREE FLAGSの紹介動画:https://www.youtube.com/watch?v=-Be286hVfLU

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小児虐待に対し、充実させるべき制度や課題。

2021-05-04 17:35:06 | 小児虐待

 小児虐待は、その子どもに、深刻な影響を及ぼします。

 ●生命への危機、心理的外傷(トラウマ)

 ●愛着障害による様々な問題行動、人格の歪み

 ●自己イメージの低下

 ●脳や内臓機能(胸腺の萎縮)へのダメージ

 ●非行化、人格障害、解離障害、多重人格、精神障害、自殺

 ●世代間連鎖、二次的虐待


 取り組みとして、

 ・児童相談所での個人的対応ではなく、組織的な対応(平成15年(2003年)岸和田事件)

 ・24時間体制の通告受理➨全国共通ダイヤル189(平成27年(2015年)に制度化)

 ・都道府県知事による保護者への指導を受けることの勧告
 (課題:児童相談所と保護者間での指導であり、第三者的調整機関がない)

 ・予防支援に力点(平成20年(2008年)ごろより)、こんにちは赤ちゃん事業、特定妊婦のフォロー

 ・民間(子ども食堂、学習支援、フードバンク、シェルター、居場所づくり等)と要保護児童対策地域協議会との連携

 ・家族再統合支援:課題:再統合する・しないの基準が設定されていない
  課題:里親、保護者、ホスタリング、市町村の連携が重要。

  課題:児童養護施設と保護者の情報共有、児童養護施設の退所後の児童福祉司や職員による定期的家庭訪問、施設と家庭の養育方針や生活習慣の違いから子どもがストレスを受けている。

 ・施設など入所人数 総数37925人(平成30年全国数値-厚労省)
  児童養護施設24908人、里親5556人、ファミリーホーム1548人
  児童心理治療施設1366人、児童自立支援施設1226人、乳児院2678人
  自立援助ホーム643人

  里親委託率20.5%(里親*ファミリーホーム児童数/里親・ファミリーホーム・児童養護施設・乳児院の総児童数)
  ➨「新しい社会的養育ビジョン」(平成29年8月)で乳幼児の75%、学齢児の50%を里親に委託する方針が示される。

 ・生い立ちの整理作業➨ライフ・ストーリー・ワーク(英では法律で義務化)課題:子どもが生い立ちに負い目を追わないようにすること

 ・施設からの自立支援
  週末里親(大阪市平成6年(1994年)に制度化)、ソーシャル・スキル・トレーニング、企業でのインターンシップ、個別学習体制、施設退所後の居場所、宿泊型シェルター(例、子どもセンターぬっく)、

 ・ケース支援のポイント
  自然な流れで話さる環境をつくる、詮索的な質問は避ける

  家族病理への対応、ワンポイント改善(万が一は、ここに電話して)も効果的

  権限を持つ当事者への働きかけをする。継続ケースは、概ね3か月に一度の見直し

 ・令和元年(2019年)児童福祉法等の改正
  しつけに際し、体罰を加えてはならない。
  施行後5年を目途に、中核市及び特別区に児童相談所を設置できるよう政府は支援
  児童の意見表明権を保障する仕組みを施行後5年を目途に構築
  など 
  

  

*参考 第124回日本小児科学会 教育講演11『児童虐待問題総論と課題~福祉分野の実際~』津崎哲郎氏
  
*関連ブログ:https://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/940a1603109e35d7273e44b849529703
 
*************朝日新聞2021.5.1*************

https://digital.asahi.com/articles/DA3S14890465.html



生活費・学費に悩み、33% 養護施設や里親家庭を離れた若者 初の全国調査


2021年5月1日 5時00分


 虐待や貧困などにより児童養護施設や里親家庭で育った若者は、施設などを離れた後どのような状況にあるのか。初の全国実態調査の結果が30日、厚生労働省から公表された。回答者の3人に1人が生活費や学費で悩み、「貯金がもう底つきそうで死にそう」との声も寄せられた。連絡先不明など、調査の案内を届けられなかった対象者が全体の3分の2を占め、その人たちも含めると状況はさらに厳しいとみられる。▼3面=住まい転々

 施設や里親など社会的養護を経験した若者は、自立後も親からの生活費や住居の支援が乏しく、生活が不安定になると指摘されている。今回の調査は、こうした若者が何を求めているかを把握し、支援を充実させる目的で初めて行われた。

 対象は2015年4月~20年3月に、中卒以上で施設などを離れた人全員(2万690人)。昨年11月30日~今年1月31日にアンケートを実施し、2980人から回答を得た。回答者の主な年齢層は18~23歳。

 「現在の暮らしの中で、困っていることや不安なこと、心配なこと」(複数回答)は「生活費や学費のこと」が33・6%で最多。「将来のこと」31・5%、「仕事のこと」26・6%などが続いた。

 月々の収支が黒字と答えたのは全体の26・8%で、赤字が22・9%だった。また「過去1年間に病院や歯科等を受診できなかった経験」は、2割が「あった」と回答。その理由(複数回答)は「お金がかかるから」が66・7%と最多だった。自由記述にも「家賃や光熱費が払えない」「給料が少なすぎて貯金どころではない」といった窮状の訴えが並んだ。

 回答者から大学などに在学する686人を抜いた最終学歴は、全日制高卒が54・5%で最多。次いで「中卒」15・4%、「専門学校・短期大学」10・6%だった。4年制大卒は2%で、「就業構造基本調査」(17年)の20~24歳の「大卒・院卒」の全国平均29・6%と大きな差があった。

 報告書をとりまとめた検討委員会の松本伊智朗委員長(北海道大大学院教授、教育福祉論)は「若者が経済的に厳しい状況に置かれていることが改めて浮き彫りになった。18歳以上の進学率も低く、教育を受ける機会から大変遠ざけられている」と語った。さらに「18歳以上は児童福祉法上、支援の対象外なのでこれまで手が付けられてこなかった。(社会的養護を経験した若者は)本来は子どもの声を代弁する家族の基盤も脆弱(ぜいじゃく)で、声が反映されにくい」として、本人に対する継続的な実態把握が必要だと強調した。(浜田知宏)

 ◆キーワード

 <社会的養護> 貧困や虐待、死別などで親と一緒に暮らせない子どもを公的責任で保護・養育する仕組み。年齢などに応じて乳児院や児童養護施設、里親のもとで育ち、原則18歳を迎えると自立する。厚生労働省の調査では、対象は約4万5千人。

 


「親も頼れる人もいない」 施設離れた若者、家賃払えず転々


2021年5月1日 5時00分

 厚生労働省が児童養護施設などを離れた若者たちに実施した初の実態調査では、経済的・精神的に困難な状況に置かれた若者たちの実態が浮き彫りとなった。首都圏で暮らす男性(31)も、その一人だ。「帰る家が無い。頼れる親がいない。そして抜け出すすべが見つからない」と、自らの経験を振り返る。▼1面参照

 男性は生後間もなく、乳児院に引き取られた。その後、児童養護施設を経て里親家庭へ。

 里親家庭では常に名字で呼ばれた。トイレと風呂の掃除を任され、汚れていると夜中でも起こされて「素手で洗え」と言われたという。機嫌を損ねると、冬でもパンツ1枚で庭に出された。「出ていけ」と怒鳴られても、「ここにいさせてください」と懇願した。「ここにしか自分の居場所がないと信じていた。だって家がないんだから」

 高校卒業後、アパレル関係の店で働き始め、アパートを借りた。「最初は家の暖房の付け方さえも分からなかった。ほんのささいなことでも、頼れる人がいないのは不安だった」。職場で面倒を見てくれた上司が異動するといじめが始まり、1年経たずに辞めた。

 アパートの家賃が払えず、友人宅を頼った。だが長くはいられず、「寮がある」と誘われて夜の街でホストになった。「生きるため。苦手な酒を気力で飲んだ」。上下関係は厳しく、常に暴力が身近にあった。ある晩、逃げ出した。

 20代半ばからは、住み込みで働ける旅館やホテルなどを転々とした。人間関係に苦労することが多かった。「相談先は年の近い友人。大人としての振るまい方、仕事がうまくいかない時のアドバイスをしてくれる人がほしかった」。振り返ると、いつも同じような問題で悩んできたと思う。

 そうした中で支えになってきたのが、手元に残された数枚の写真だ。幼い自分が幸せそうに笑い、老夫婦がその姿を見てほほえんでいる。施設にいた頃、長期休暇のたびに訪れた老夫婦宅で撮ったものだ。今では連絡先も分からないが、老夫婦の優しさは記憶に残る。一緒に庭でご飯を食べ、あちこちに出かけ、夜は横で寝てくれた。「どんなに苦しくても、まっとうに生きたいと思うのは、この人たちから受けた愛情があるからです」

 男性は今、生活保護を受けて暮らしている。食事を配送する仕事をしながら、調理師免許を取得するために職業訓練校に通い始めたところだ。

 ■調査届かぬ人、より厳しい状況も

 厚労省の報告書は「進学、就職、出産・育児などのライフステージの変化がある。年齢で支援を終結するのではなく、長期的に見守り、必要に応じて支援を行う仕組みを構築することが必要だ」と結論づけた。

 今回の調査では、長期的な見守り・支援に向けた課題も明らかになった。調査対象者全体のうち、本人に調査案内が届いたのは35・7%で、残りは届いていない。届かなかった主な理由では、施設や里親が若者の住所や連絡先を知らないことが挙がり、多くの若者とのつながりは途切れてしまっている状況だ。

 調査に関わり、施設などを離れた若者の当事者団体にも携わる武蔵野大学講師の永野咲さんは、「調査を通じて厳しい状況が明らかになった一方で、回答できなかった若者は、より厳しい状況に置かれている可能性がある」と指摘する。

 永野さんらが2014年発表した論文では、独自調査や自治体の公表データを基に、施設などを離れた若者の生活保護受給率を推計。自治体平均の3~5倍、20代に限ると約18倍に達したという。(浜田知宏)

 ■調査に寄せられた若者の声

 <困っていることや不安など>

 ・施設を退所してしまえば、長い付き合いの職員とも他人になってしまう。そして、信頼できる人をなくし、孤独感を感じる

 ・借金の返済

 ・病気になった場合の出費が心配

 <国や自治体などに伝えたいこと>

 ・施設で育った子に対する偏見がなくなってほしい

 ・自治体が保証人になって家を借りれるようにしてほしいです

 ・児童が希望する場合はできる限り、スマートフォンを持たせてあげてください。周りの同級生と対等に関わっていくためには、もはや必要不可欠です

 (調査報告書から抜粋)


 




 

 


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児童虐待対応で、一歩前進。子どもを守るために、中央区と区内警察の間における児童福祉法に基づく情報共有等に関する協定締結。

2019-11-13 18:33:58 | 小児虐待

 児童虐待から子どもを守ることは、小児科医としても重要なテーマです。

 本日2019.11.13開催の中央区議会 福祉保健委員会において、児童虐待の迅速な対応が取れるように、中央区と区内警察の情報共有等に関する協定を締結することが報告されました。

 発案・実行された担当部署のご努力に感謝申し上げます。

 今後は、着実な運用と、都の児童相談所を「丙」として入れながら、三者での情報共有をすることなど、期待を致します。






 

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社会保障審議会 児童部会 新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告(提言) H28(2016).3.10

2019-11-13 06:55:08 | 小児虐待

 平成28年(2016年)6月児童福祉法等が改正され、児童虐待分野においても、①子どもの権利、②家庭養育原則、③市町村による家庭支援など明記された点で一部前進がみられました。

 この改正に向け、出された提言を見てみます。


⇒ 社会保障審議会 児童部会 新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告(提言)https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000116162.html

 社会保障審議会児童部会新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告(提言)

 抄:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/sankou01.pdf#search='%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%9A%9C%E5%AF%A9%E8%AD%B0%E4%BC%9A%E5%85%90%E7%AB%A5%E9%83%A8%E4%BC%9A%E3%83%BB%E6%96%B0%E3%81%9F%E3%81%AA%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E5%AE%B6%E5%BA%AD%E7%A6%8F%E7%A5%89%E3%81%AE%E3%81%82%E3%82%8A%E6%96%B9%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%B0%82%E9%96%80%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%8F%90%E8%A8%80'

 

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小児虐待を防ぐには、小児科医の思い。「お互いの職務や動き方を知っておくこと、顔の見える関係を作っておくことが、うまく連携するにはとても大事です。」

2019-05-21 15:33:33 | 小児虐待
 本日2019年5月21日の朝日新聞で、目黒区で虐待を受けて死亡した船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)の元主治医であった小児科医木下あゆみ氏のインタビューが掲載されています。

 小児科医師は、児童相談所や警察と連携をしながらも、重要なもうひとつのセーフティネットです。
 小児科医師も加わり、調査官や弁護士や検察官、警察官、児相、行政、医療機関などで虐待に関わる人たちとの連携の構築がとても大切です。

 〇――虐待をしているのに、親は子どもを受診させるのですか。

 「私も昔から不思議だったのですが、虐待したくないけどしてしまう、助けてほしいという親のSOSだと思っています。『助けて』と来るのだから、そこは大事にしなければいけないと思っています。医療者は親を責めてはいけません」

 〇「小児科医には虐待の芽に気付き、防ぐ素地があると思います。また、行政は担当地域や職域を越えられないので、医療機関が中心になって子どもを見るのは意味があると思います。」

 〇「虐待防止や育児支援に当たる『要保護児童対策地域協議会(要対協)』という仕組みがあります。市や児相が参加しますが、法的に医師が必ず入るとは定められておらず、虐待対応の輪の中に入れていないのが現状です。でも、医師は大きな役割を果たせます。その子どもの主治医が会議ごとに参加するのは現実的ではないので、スーパーバイザーとして虐待全般に詳しい医師が加わるのがいいと思います。その上で主治医から情報が上がってきたり、会議の結果をフィードバックして診察のときに気を付けてもらったりする仕組みができればと思います。」

 〇「虐待した親を検察が処分する前に関係機関と対処法を検討する『処分前カンファレンス』が全国に先駆けて始まりました」

 ――具体的には。

 「例えば警察は容疑者である親の逮捕が第一ですよね。でも、その子どもは『自分のせいで家族がバラバラになってしまった』と思いがちです。こうした状況を事前に共有できれば、医師や児童福祉司が子どものケアに同時に入ることができます。虐待事件が起きると、福祉の対応は生ぬるい、警察と虐待事案を全件共有すべきだという意見が出ますが、警察も子どものことをよくわかった上で対応しなければ、子どもは幸せにはなれません。お互いの職務や動き方を知っておくこと、顔の見える関係を作っておくことが、うまく連携するにはとても大事です」


******朝日新聞2019.05.21*******
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14022620.html

(インタビュー)結愛ちゃん虐待、教訓は 小児科医・木下あゆみさん


2019年5月21日05時00分


 昨年3月、東京都目黒区で虐待を受けた船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5)が亡くなった。児童相談所や関係機関の連携不足により、虐待で亡くなる子どもは後を絶たない。親や子への支援を途切れさせないためには何が必要なのか。結愛ちゃんが香川県善通寺市に住んでいた当時の主治医、小児科医の木下あゆみさん(45)に聞いた。

 ――約4カ月間、結愛ちゃんを診ていたそうですね。

 「週に1~2回、来院していました。話を聞くのは1~2時間。結愛ちゃんは年齢に比べるとお利口さん過ぎるところがありました。これだけの頻度で来てもらっていたのは、強い危機感があったからです。医療機関が中心となり、結愛ちゃんが隙間に落ちないようにネットを張っていたつもりですが、引っ越しでネットが『すこん』と抜けてしまいました」

 「そうなると隙間に落ちるのは時間の問題です。どの道を選べば亡くならなくてすんだのか、ずっと考え続けています」

 ――結愛ちゃんが亡くなったと聞いた瞬間、どう感じましたか。

 「『悲しい』というより、『悔しい』という気持ちがわきました。でも『なぜ?』とは思いませんでした。転居前から『東京の病院を紹介するから、引っ越し先が決まったら連絡してね』と伝えていましたが、教えてもらえないまま引っ越してしまいました。都の方でも結愛ちゃんの無事を確認できていないと聞いており、誰も無事を確認できていないのだとすれば、危ないと思っていたのです」

 ――なぜ、「悲しい」より「悔しい」だったのでしょう。

 「誰もつながっていなかった家庭で、子どもが虐待で亡くなったという事件は多くあります。でも結愛ちゃんは、香川では病院や児相、市や警察が関わっていました。転居先の東京の児相が結愛ちゃんに会えていないと耳にして、私たちの病院が持つ危機感が児相に伝わっていないのではと、電話しました。結愛ちゃんが亡くなる直前でした。大変なことが起きているのではと想像していたから、亡くなったと聞き『やっぱり』という気持ちになりました」

 ――主治医として、もっと出来たのではと思うことは。

 「もし転居先が分かっていれば、その近くの病院を探して直接電話して、詳しい内容を引き継ぐこともできました。香川の児相にリスクを伝えたつもりだったのですが、もっとうまく伝えられていたら、結果が違ったのかなとも思います。そこは私の反省点です」

    ■     ■

 ――児相に対して思うことは。

 「虐待対応の要は児相ですが、やり取りをしていると、人が全然足りていないと感じます。『緊急でケース会議をしたい』と持ちかけても、『他の緊急対応がある』と言われることも。土日や昼夜を問わず仕事をされているし、一人の職員がたくさんのケースを抱えています。連携が取れるようになっても、職員の方は2~3年で異動してしまうことが多い。ストレスも多く、心を病んで辞められる方もいると聞いています」

 ――人手不足の問題は、ずっと指摘されています。

 「軽微な傷やあざ、ネグレクトなどは軽いと判断されやすく、『見守り』という名の様子見が続きがちです。でも人手が足りず、数年ごとに職員が異動してしまう現状では、児相が医学的判断を正しく理解し、問題に対応できる専門家集団になることは難しいと思います。児相の問題というよりは、制度の問題だと思います」

 ――虐待対応で医療者が出来ることは何でしょうか。

 「けがの重症度=虐待の重症度ではありません。たとえば青あざ。おなかにあるのと足にあるのとでは重要度が全然違います。ほかの機関が医療者に求めるのは『擦過傷なのか打撲傷なのか』『全治はどれぐらいか』といったことですが、小さいけがでも普通に転んだだけではできない部位にあれば、第三者によるけがの可能性があります。私はけがの解釈や子どもの心理状態なども含めて診断するようにしていますが、重みを持って受け止めてもらえているか不安になることがあります」

 ――なぜですか。

 「たとえば病院では、日本全国どこでも同じような治療が行われます。でも児相の対応は、自治体により様々です。人事異動により、法律や子どもの心理に詳しくない人や、やりがいを感じていない人が担当する場合もあります。国の研修機関で全国統一の研修があったり、国家資格になったりすれば、もっと違うのではないかと思います」

 ――医療者のレベルアップも必要では?

 「丸々と太った元気そうな赤ちゃんにあざがたくさんあり、全身を丁寧に診察すると、肋骨(ろっこつ)や腕、足に骨折がたくさんありました。虐待に関する知識がなければ『ミルクを飲んでいるし、元気そうだから』で終わってしまったかもしれません。病院で見つけてあげなければ、その子は死んでしまうかもしれない。医学生のうちに虐待に関する知識を学ぶべきだと思います」

 ――虐待をしているのに、親は子どもを受診させるのですか。

 「私も昔から不思議だったのですが、虐待したくないけどしてしまう、助けてほしいという親のSOSだと思っています。『助けて』と来るのだから、そこは大事にしなければいけないと思っています。医療者は親を責めてはいけません

    ■     ■

 ――木下さん自身、10代の子ども3人を育てています。

 「自分が子どもを産んでみて、小児科医なのに、全然思うように子育てはいきませんでした。赤ちゃんの体重は増えんしお乳は出んし夜寝んし。子育てって大変です。どの親もいっぱいいっぱいの中で、何とかやっている。そこを理解しないと何の解決にもなりません。育児って、もっと人に頼っていいと思うんですよ

 ――診察は、親から話を聞くチャンスなのですね。

 「小児科の診察は、お母さんと話す時間の方が長いです。『2人目ができたんですよ』という話から『実は……』と悩みを打ち明けてくれる。小児科医には虐待の芽に気付き、防ぐ素地があると思います。また、行政は担当地域や職域を越えられないので、医療機関が中心になって子どもを見るのは意味があると思います。ただ、じっくり話を聞こうとすると、通常の診察の何倍もの時間をかけることになります。例えば育児支援加算といった形で診療報酬をつけないと、理解のある病院でしか実施できません。自治体が費用を持つといった形も必要だと思います」

 ――なぜ医療者が、もっと関われないのでしょう。

 「虐待防止や育児支援に当たる『要保護児童対策地域協議会(要対協)』という仕組みがあります。市や児相が参加しますが、法的に医師が必ず入るとは定められておらず、虐待対応の輪の中に入れていないのが現状です。でも、医師は大きな役割を果たせます。その子どもの主治医が会議ごとに参加するのは現実的ではないので、スーパーバイザーとして虐待全般に詳しい医師が加わるのがいいと思います。その上で主治医から情報が上がってきたり、会議の結果をフィードバックして診察のときに気を付けてもらったりする仕組みができればと思います」

    ■     ■

 ――香川県は医療機関も含めた各機関の連携が進んでいます。

 「私が家庭裁判所の調査官の研修で講師を務めたことをきっかけに、調査官や弁護士や検察官、警察官、児相、行政、医療機関などで虐待に関わる人たちとの勉強会を開くようになりました。ちょうどその頃、高松高検の検事長が虐待問題に強い関心を持っていたこともあり、虐待した親を検察が処分する前に関係機関と対処法を検討する『処分前カンファレンス』が全国に先駆けて始まりました」

 ――具体的には。

 「例えば警察は容疑者である親の逮捕が第一ですよね。でも、その子どもは『自分のせいで家族がバラバラになってしまった』と思いがちです。こうした状況を事前に共有できれば、医師や児童福祉司が子どものケアに同時に入ることができます。虐待事件が起きると、福祉の対応は生ぬるい、警察と虐待事案を全件共有すべきだという意見が出ますが、警察も子どものことをよくわかった上で対応しなければ、子どもは幸せにはなれません。お互いの職務や動き方を知っておくこと、顔の見える関係を作っておくことが、うまく連携するにはとても大事です」

 ――身近なところからですね。

 「みんなが『子どものために』と同じ方向を向き、ちょっとのおせっかいというか、例えば『連絡がつかないときは家に行ってみた方がいいと思う』と申し送りに一言添えれば、その後の対応は大きく変わります。個人の資質に頼るのではなく、互いの職種を知って、自分の職域ののりしろを少し広げて隙間を埋める。虐待に関心が強い人が役割を担える、そんな法律や制度ができればいいと思っています」

 (聞き手・山田佳奈、山本奈朱香)

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 きのしたあゆみ 1974年生まれ。四国こどもとおとなの医療センター育児支援対策室長。小児科医として約20年間、育児支援や虐待防止に取り組む。
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