岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

資料:『曙の潮風』-長島愛生園自治会史-

2008-07-29 06:34:27 | ハンセン病
平成10年9月30日 発行
日本文教出版 342p

 この書物は、自治会史としては第2冊にあたる。
第1冊は、1982年長島愛生園創立50周年の自治会記念事業としての
『隔絶の里程』-長島愛生園入園者50年史ーである。

第1冊を発行した82年から後に、ハンセン病史には歴史的変革があった。
「邑久長島大橋」開通であり、「らい予防法」の廃止である。
『曙の潮風』が発行された時点で、入園者の平均年齢は72歳であり、
大部の出版物を自治会として出版する最後の機会と思われたのかもしれない。
詳細な年表が1996年まで書かれている。

特に、「邑久長島大橋」開通にいたる経緯については、60pにわたり書かれ、
17年がかりの架橋実現への不断の努力がわかる。
地元、町、県、そして、厚生省担当課、大臣、地元国会議員への働きかけ、
地元マスコミの支援など得て、ついに完成へとこぎ着ける。
まさしく執念のたたかいは、自治会の力なくしては不可能だった。
このこともハンセン病史に特筆されることと思われる。

 時代は20世紀から21世紀に受け継がれ、ハンセン病の研究もさらに進んだ。
明らかになった事実も多い。
自治会史の読み方も時代性を考慮にいれなけれならないことは当然だが、
貴重な証言と、時代のなかで人々のとった行動の推移は、後から学ぶものにとって、
宝庫のようである。
 幸い県立図書館にある数部のうち一冊は、貸し出しができる。
ありがたいことだ。


写真は、表紙(表裏)。長島愛生園を東側上空から撮影している。
左上の3.5km先に邑久長島大橋がある。当然映っていない。

最新の画像もっと見る