井村雅代さんといえば、かつては日本シンクロのコーチとして全メダル獲得に貢献した。
今は中国のヘッドコーチとして、ロンドン五輪でも銀と銅を中国チームにもたらした。
日本!日本!の大合唱に少々疲れ気味の私には、今朝の朝日新聞記事「人魚を泳がせるためならば」西村欣也記者記事 は興味深かった。
彼女が日本を脱出して中国のコーチに就いた経緯は詳しくはわからないが想像はできる。
早い話が、日本でシンクロのコーチをやりずらくなった。
狭い業界のことだからありうること。
そして、井村コーチは強烈な個性の持主。
売国と非難されたという。
そういう了見の狭い人はいる。
しかし考えてみれば、近代スポーツはほとんど海外の技術を導入してレベルを上げたもの。
サッカーのドイツ人コーチが日本男子サッカー唯一のメダル獲得に貢献したことは有名だし、ザッケローニ監督の祖国と、さむらいジャパンがワールドカップで戦うことだって当然ありうる。
レベルの高い国の指導者が他国のチームのレベルアップに貢献することはスポーツ界では当たり前なのだ。
レベルの低い国のレベルを高めて、レベルの高い試合をすることこそ意味のあることではないか。
「人魚を泳がせるためならば」、どこまでもいく指導者こそ、なでしこの進化であり、なでしこインターナショナルの未来像ではないだろうか。
なでしこは、すでにその次元まで来ているように思う。
朝日新聞記事「人魚を泳がせるためならば」では、井村コーチと長嶋茂夫氏の対談の様子が描かれている。
アテネ五輪の1年前のこと。
長嶋「われわれは、日本最高のシェフを3人つれていっておりますからね。選手や、お二人とも、食べにいらっしゃってください」
長嶋一流のリップサービスだったのかもしれない。しかし井村の返事は意外なものだった。
井村「そんなことを言うているから、あかんのですよ。シンクロは出されるものはなんでも食べる。食べるもの仕事。何が出てきてもね。男の子はあかんなあ」
西村氏は長嶋がたじろぐのを初めて見たという。
この逸話は、恵まれた男子野球とその指導者に対して、這いつくばってメダルを獲得している女子指導者の心のありようをよく現わしている。
世界に飛躍するのは長嶋ではなく井村だったことがよくわかる。
なでしこの未来形は、井村コーチの視線の先にあるはず。
男子サッカーの懐から独り立ちする時が必ず来る。
そのときこそ、なでしこインターナショナルが実現する時だ。
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