北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

中沢新一著「アースダイバー」を読む

2007-04-30 23:32:32 | 本の感想
 今日は昨日持ち帰ったソフト類をパソコンにインストールする作業に時間を費やしました。パソコンの環境って本当に大事ですね。
 これでハードディスククラッシュは三回目でしたが、なかなか学習ができません。
 バックアップは大切に。

【「アースダイバー」を読む】
 中沢新一さんの「アースダイバー」を読みました。

 東京に着いて早々に、知人に「週末は東京巡りをしようと思うんだ」と話をしたところ、「それだったら中沢新一の『アースダイバー』を読んでおいた方が良いですよ。すごく面白かった!」と言われ、早速購入して読んでいたものです。

 このほんの切り口は、「縄文時代の地図で東京を散策すると今まで見えなかった東京が見えてくる」というもの。

 地球の長い歴史の中でおよそ6000年前の、日本では縄文時代に、温暖化のピークを迎えた時代があったといわれています。そのときには海の水位が今よりも数メートル上がったと言われ、今の陸地からずっと奥まで水位の上がった海が入り込んだらしいのです。
 そしてそれを『縄文海進』と呼んでいます。

 著者の中沢新一さんは、この出来事が地層の変化に現れているという地質学の視点で手製の地図を作ったのだそうです。

 この手製の地図には、海水が奥まで入り込んだ時代でも地表に露出していた洪積層と、その当時陸地をえぐって水が進入してきたところに見られる沖積層の分布から、当時の海を再現したものです。
 そしてその地図にはさらに、縄文から弥生時代の遺跡や古墳、古くからの神社仏閣を落とし込みます。

 この地図で東京を眺めそして歩けば、縄文時代の土地の記憶がよみがえるのだと言います。

 縄文時代の土地の記憶は、今でも残る遺跡や古墳、そして古くからの神社仏閣、そして墓地がこの地図上では不思議なほど、当時海に突き出た岬状の場所に合致していることで甦ります。

 なるほど、東京をこういう視点から眺めましたか。目からウロコが落ちる思いです。

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 ただ、風俗や賑わいの集まる場所が縄文の記憶で、新宿を『縄文的盛り場』
と言われても、ちょっとぴんとこないのが正直な感想。

 私は、そこから先に培われてきた人間の営みの曰く因縁の積み重ねの方に興味を感じてしまいます。

 私のつとめる西新宿には十二社熊野神社があることは地図を眺めていて知っていたのですが、この本にはこの因縁も詳しく書かれていました。すぐに行くべき神社の一つでしたね。

 東京の神社仏閣も、こうした土地や地形から眺めるとまた違った風景が見えてくることでしょう。面白い視点を与えられた思いがして、東京巡りの楽しみ方がまた一つ増えたのでした。

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 さて、著者の中沢さんは本の中で東京巡りをするのに、黄色いママチャリを購入して走り回り、そしてこのやり方を「アースダイバー式」と名付けた、と書いています。

 それはアメリカ先住民の神話に由来するお話。

「・・・アメリカ先住民の『アースダイバー』神話はこう語る。はじめ世界には陸地がなかった。地上は一面の水に覆われていたのである。そこで勇敢な動物たちがつぎつぎと、水中に潜って陸地を作る材料を探してくる困難な任務に及んだ。ビーバーやカモメが挑戦しては失敗した。こうしてみんなが失敗したあと、最後にカイツブリ(一説にはアビ)が勢いよく水に潜っていった」

「水はとても深かったので、カイツブリは苦しかった。それでも水かきに込める力をふりしぼって潜って、ようやく水底にたどり着いた。そこで一握りの泥をつかむと、一息で浮上した。このとき勇敢なカイツブリが水かきの間にはさんで持ってきた一握りの泥を材料にして、私たちの住む陸地はつくられた・・・」

「・・・そこでぼくは自分もカイツブリにならなければ、と思ったのである。泥を材料にしてつくられてきた『人間の心』という陸地が、水中に沈みかけている。そこでもういちど水の中に潜って、底のほうから一握りの泥をつかんでこなければいけなくなった。その泥を材料にして、もういちど人間の心を泥からこね直すのである。そんな気持ちで東京を見回してみると、驚いたことにそこには、大昔に水中から引き上げられた泥の堆積が、そこここに散らばっているのが見えてくるのだった」

 黄色いママチャリで東京を走り巡る活動。私も札幌のエディ・メルクスを持って来たくなりました。東京には自転車が似合うんだよなあ。

 地中に潜らない今の東京巡りを応援してくれる本でした。
コメント (2)
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