北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

雨乞いの心理

2009-07-09 23:50:42 | Weblog
 アメリカの心理学者にバラス・フレデリック・スキナー(1904~1990)という人がいました。

 彼は道具的条件付けの実験としてスキナー箱というものをつくりました。これは鳩が自由に動き回れるスペースのある箱ですが、中にキーと呼ばれる遠景の部分があって、鳩がそれをつつくと餌が出たり、嫌な刺激が出たりするように工夫されたものです。

 スキナーはこの箱で、鳩が偶然にキーをつついたときに餌が出るようにしました。するとやがて鳩はキーの側にいることが多くなり、やがてキーをつつくことを覚えるというのです。

 こうした行動の後で報酬を与えることを心理学では「強化」と呼ばれ、今日の教育方法におけるティーチングマシン開発などにも活用されています。

 まあ条件反射の延長のようなものですが、これは動物の調教や訓練などにも応用されていて、今日一般的な理論になっています。

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 ところでそんなスキナーは、1948年に飢えた鳩たちにスイッチを無視して餌を与えるというアイディアを思いつきました。

 今まではキーを押したら餌がもらえるという行動が身に付きかけていたところへ、そんなこととはお構いなしに全くランダムに餌が与えられる環境になったわけです。

 さて鳩はどういう行動を取るようになったと思いますか?

 なんと鳩たちは、彼らに深く根付いた統計的な仕組みが働いて、雨乞いに似たタイプの行動を身につけたのだそう。

 ある鳩は箱の決まった隅でリズミカルに頭を振り、別な鳩は頭を反時計回りに回しはじめる…。

 全ての鳩が特定の儀式を身につけて、それがかなった時に餌がもらえるらしいという思いこむようになったのだそうです。

 これって人間で言うと「ゲンかつぎ」そのものではありませんか!

 相撲の力士が勝っている間は髭を剃らないとか、勝ちたい時に勝負パンツを履くとか、悪いことが起きないように出かける時に切り火を切る…なんてのはみんなそう。

 物事はランダムに起きるものだ、ということが分かっていたとしても人間も飢えた鳩と同じように、何かを信じて良いことが起きるように、悪いことが起きないようにと特別の振る舞いをするものなのです。

 そのこと自体なかなか心底理解出来るものではないのですが、そこまで分かったとして人が取れる行動は二つのパターンです。

 一つ目は、だから無駄な迷信を考えないようにすればよいのだ、という強い生き方。

 そしてもう一つは、人間はその弱さを克服することはできない存在なのだということを自覚して、せいぜいそれに影響されすぎないようにほどほどにしよう、という自らの心のごまかし方を覚える柔軟な生き方。

 ただし二つ目はごまかし方を間違えると、どこまでも迷信に追い立てられてドツボにはまる危険性も持ち合わせています。

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 さて、私も現実的にはごまかしながら生きているのですが、所詮人間なんて飢えた鳩と同じくらいの理性と感情しか持ち合わせていない存在だと、どこまで冷静に思うことが出来るでしょうか。

 世の中の偶然に抵抗することのむなしさと難しさが感じられますか?
 
コメント
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