ある大学の先生の所へ、除雪機械の現状について説明に伺いました。
良く考えたら、我々の除雪機械に関して研究をしてアドバイザーになってくれたり、学問的なバックアップをしてくれる大学の先生っていなかった、ということに気が付き、少しでも理解していただけそうな先生をあたってみようということにしたものです。
今日訪ねたA先生は、そうした趣旨を事前にお伝えしたところ、「ぜひ教えてください」と乗り気になってくださった方で、まずは現状のデータ集を持って説明に上がりました。
全道で1,030台の除雪車を保有してこれを業者さんに官貸して除雪をしてもらっていますが、除雪予算が年々削減されたことで機械の更新が進まなくなり老朽化が著しくなっていること。
それに伴って故障率が増加の一途をたどっていること、そしてそれを少しでも食い止めようと、予防整備や効率的な配置、さらに一台で二種類の作業を行う多機能化などの努力をしていることなどをお伝えしました。
基本的には共感を持っていただけて、話は大いに盛り上がりました。
A先生の関心は除雪全般に及んでいて、様々な会議の場などにも出られているので知識も豊富でこちらも感心することが多い意見交換となりました。
A先生は、「除雪というと、札幌では年間200億円ほど投入していますが、札幌の市民でも『なんでそんな融ける雪のために200億円も投入するのか、もったいない』という人がいるのに驚きです」と言います。
私が「北海道では雪が降ることは災害ではない、と思っている人が多いのですが、私に言わせればこれだけ都市の機能を低下させている事象なのだから逆に"毎年必ず来る災害"だと思った方が良いのではないか、ということ。また、雪だって北海道の10センチは災害でないにせよ、暴風を伴ったり一晩で50センチも降るようならやはり災害だ、と思うべきではないでしょうか」と言うと、「そのとおりです」とおっしゃって下さいました。
A先生「そもそも、雪が降ることで都市の便益は明らかに急速におちるわけです。その落ち方というのはまさに災害級と言えるもので、その低下する便益を支えるために200億円を投下していると言えるわけで、私もそのうち、200億円という資本投下がどれだけの便益の低下を防いでいるのか、というような経済的なアプローチをしてみたいと思っているんです」
ぜひそうした研究をお願いしたいと思います。
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話は次に、暴風雪の際に国道などを通行止めにすることの是非に及びました。
私「昔は、何としても止めるな!という価値観が大勢でしたが、コスト縮減の流れや悪天候の中に飛び込んで行った車を救出することの大変さが分かってきたこと、さらには、山梨での豪雪でもそうでしたが、早く止めた方が被害が少なく復旧が早くなるということが知られてきたように思います」
A先生「それは間違いありませんね。早く止めるオペレーションをいち早く取り入れたのはやはりしょっちゅう悪天候に見舞われる北海道で、やはり経験がものをいっている感じがします」
私「ありがとうございます」
A先生「ただ、懸念するのは止めれば管理は楽なのですが、やはり物流などを止めると地域経済にはそれなりに大きな影響を与えます。道路は止められると大変だ、ということが物流に携わる人たちの中からもっと大きな声になっても良いと思います」
私「酪農地帯では牛乳を毎日運ぶ必要があって死活問題です」
A先生「それもありますがやはり電気の復旧だとか、急病人で命に係わるといいったことは切実ではないでしょうか。噂ではそうしたときには緊急の事案の車を除雪車が先導して走らせているとも聞きます。ただ、どんな状況の時にどんな車は通して、それ以外は断固として止めるという基準やルールがまだできていないと感じていて、こういうことは平時にしっかりと議論してコンセンサスを得ておくような取り組みが必要だと思います」
私「おっしゃるとおりです。現場で通行止めを監視する最前線を守る業者さんでも一番大変なのは、『なぜ止める、損害をどうしてくれる』という怒りだと聞きます」
A先生「そうでしょう。そのときにふと見ると通行している車があると『俺も通してくれ』となりますよね。やはり平時にしっかりとルールを定めておくことが大切なような気がします」
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そんなわけで充実した意見交換ができた一日となりました。
いつでもおにぎりのあるコンビニは、道路が通れるということを前提としたサービスシステムです。
道路がいつでも通れるためにどれくらいの機械力をどれくらいのコストで整備しておくことが妥当なのか、という議論がもっとあって良いように思います。
雪国に生きる市民としての生涯学習として。