まちづくりに詳しい知人と、市街地の再編はなぜ進まないのか、というテーマで意見交換をしました。
日本中の多くの自治体は、人口が増えて経済がぐんぐん伸びた時代に、家が足りなくなるというので家を建てられる市街地を拡大させました。
ここ稚内でも、50年前には何もなかった原野が住宅地になっていて、多くの一軒家が建てられています。
そして逆に昔は栄えていた駅前や商店街はどんどん廃れる一方。地域の人口が減ったから、ということもあるでしょうが、かつて賑やかだった旧市街地は、空き家も増えていてそれが一向に建て替わったりする気配がありません。
ところが同じ市の中でも、近年市街地になったようなところでは、家が空いてもやがて買い手がつくか、空いた土地はちゃんと更地になって次の買い手を待っています。
「新しい市街地だと土地の所有者がちゃんと家や土地を処分するのに、古い市街地だと家が建て替わらないし、土地も動かない。空き家も解体されずにそのまま残ってしまうんです」
「私も不思議に思っていましたが、それはなぜでしょう」
「多分相続を受ける人と地域との関係じゃないかと思うんです」
「と言いますと?」
「かつて栄えたようなところでは、もう子供さんが稚内を出てしまっていて、孫の代になるともう稚内とは縁がほとんどありません。そんな世代の人たちが稚内の土地を相続したりして所有者になってしまう。しかしそうなるともう自分に関係のない土地の関係のない建物なので関心や責任が強くでないような気がします」
「なるほど」
「それが新市街地だと、まだそこで住んでいる人たちは地域に知り合いがいたり世間の目を感じるので、古い家はちゃんと解体しておく。土地や家に対するそんな責任の違いはあると思います」
「それが家や土地の新陳代謝に繋がっているのだと…」
「もちろん、新しい市街地では都市計画に基づいた幅の広い道路などの都市インフラが整備されているということもあると思います。旧市街地ではそういう都市整備もなかなか手がつかないところがありますしね」
地方都市では人口減少が進み、このままでは都市の活力を維持してゆくことができません。
国も様々な政策で都市機能や居住機能の集約を進めコンパクトシティを目指すように誘導していますが、都市に一定の活力があるうちでなくては誘導も効果的に働きません。
「都市の再生も時間勝負ですね。手を付けても完成するまでに住民がいなくなったり商業が廃れてしまっては、活力を取り戻して息を吹き返すのは限りなく難しくなるでしょうね」
人の移動、世代交代、土地に対する執着心、時間との勝負…。町の再生にはそれを阻むいろいろなキーワードがあります。
それを見ぬいて良い方向に向けるよう市民の理解と共感を得ることは至難の業だなあ、とつくづく感じた、友人と対談でした。