昨日の歴史・文化セミナーで講演していただいたお二人の先生とは、昨日の夜に懇親会を催しました。
サハリン写真紀行をお話してくれた斉藤マサヨシさんは、講演では聞けなかった旅の物語ネタをたくさんお持ちです。
その一。斉藤さんは間宮林蔵の旅をトレースする冒険旅で、いわゆる間宮海峡というサハリンと大陸の距離が一番近づいているところで大陸へ渡ろうとしました。
そのあたりはかなりの浅瀬になっていて、大きな船では渡れずゴムボートを出して渡ろうとしたのですが、なんと途中でひっくり返り斉藤さんは海に投げ出されてしまったのだとか。
ところが驚いたことに、海に投げ出されたのに飲んだ水はまったく塩辛くなかったんですって。
「アムール川の川水ですか?」
「そうなんです。アムール川の大量の川水が流れ込んでいるので塩っ気がなくなるんですねえ。地元の住民に効いてみましたが、やはりこのあたりでの漁では海の魚が取れず川の魚ばかりなんですって」
海が塩辛くないなんて、アムール川の力は大きいんですね。
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その二は間宮林蔵の旅での食事。
間宮林蔵が大冒険をしながら後世に名を残せたのは、彼が旅の途中で病気にならず頑健に旅を続けられたからです。
彼は旅先で病気にならないコツとして、「現地の住民の食べているものを食べることだ」と述べています。
サハリンの北の方へ行くと、現地人はアザラシなどの海獣の肉を生で食べるのだそうですが、林蔵はまさにそれを現地人と一緒になってそれを食べたというのです。
斉藤さんも現地でそれを真似てみたそうですが、とても口には合わずに飲みこむことはできなかったそうです。
「あれが食べられたとしたら狂気ですよ。私などはロシアを旅する時はお湯でご飯ができるようなパックをずっと持参して食していますからね(笑)」
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三つ目はロシアへオーロラを見に行った話。
「北半球の夜が長い冬に北へ行けばよいと思って、この冬に飛行機を乗り継いで最北の町まで行ったんです。そして夜にオーロラを見ようと思ったんですが…全くダメでした」
「ダメだったんですか。天気が悪かったとか」
「天気というか気象条件なのですが、大陸の冬って海がなければ気温差が生まれなくて空気の対流が起きないのです。その上寒いために空気の水分が凍って濃いモヤがずっとかかったきりになるんです。現地の人に尋ねたら『そんな、オーロラだったら夏に来ないと駄目だよ』と笑われてしまいました。思い込みで行くと駄目ですねえ(笑)」
旅をして実際にその目で様々な事象を見て経験を積んでいる人には敵いません。
「かわいい子には旅をさせ」とは言いますが、自分を可愛がろうとすれば旅をしましょう。そして生の経験をたくさん積みましょう。
笑い話が多い人生って最高ではありませんか。