ホタテの加工会社の方にお会いして、最近のホタテにまつわるお話を聞かせていただきました。
オホーツクでは一昨年の大嵐で海が攪乱されてホタテが砂に埋まり大量に死滅したことで、昨年は生産量が大きく減りました。
「昨年は十月にも大嵐があったので、今年の生産量も心配です」
自然を相手の産業は、何もなければ安定した経営ができますが、ひと度猛威をふるわれると生産が大きく左右されてしまいます。
生産量が減ると値段が上がるので、漁師さんは収入の減少がまだ抑えられますが、問題は加工屋さん。加工する原材料が減るとてき面に仕事が減るのです。
人を雇用している会社にとっては厳しい事態。原材料が獲れなくてはすぐに仕事が減り、それは地域の経済に影を差す。地域の望みは安定です。
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そうはいってもホタテの殻むきなどの作業には人出不足だと聞きます。
「建設業もそうですが、将来はこの業界に参入する人が減ることが予想され、効率化をしなくてはならない、という機運が盛り上がっていますが、ホタテの加工の世界も同じようなものでしょうか」
「全く同じですね。この業界にも人がどんどん集まりにくくなっています」
「しかしそうかといってロボット導入などで効率化をすると、地域の人口が減るという副作用もあるのではありませんか」
「それは逆ですね。そもそも集まらないと予想されているのですから効率化をしておかないと大変なことになる、という思いです。もう時代の流れは確実にそちらに向かっていますよ」
「ホタテの殻むきロボットはまだ人間に適わない、という話もありましたが」
「はい、やはり実績をもっと積み上げないといけません。こちらも投資をするということになると大きな資金を必要としますから、性能や耐久性もそれなりのものを要求します。そうした技術はまだ発展途上ですが、効率化には国も支援の用意があると聞いていますので、期待しています」
どんな世界も、人口減少を見越した効率化・省力化を進めなければならないという覚悟を固めつつあるようです。
人手に頼っている産業は特に対策のスピードを速める必要があるでしょう。なんだか気が焦りますが、着実なロードマップを描いて計画的にすすめなくてはなりますまい。
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さて、この一年間ご愛読いただいた『北の心の開拓記』の稚内編ですが、本日人事異動の内示があり、この四月一日をもって退職し、札幌へ戻ることとなりました。
稚内や宗谷地域でのいろいろな場面に遭遇して楽しい思いを積み重ねてきましたが、それもあと一週間です。
公務員生活も34年。様々な場所への転勤や立場を経験させていただき実に充実した年月でした。この間私を支えていただいた諸先輩並びに後輩諸兄、ならびにご厚情をいただいた多くの友人の皆様に改めて感謝申し上げる次第です。
一年間という稚内生活は振り返るとあっという間のことでした。
「その日一日を精一杯生きたか?」と自問自答すると、もったいなかった時間もあったように思います。どうぞ皆様も今この時を大切にしてくださいね。
詳しい話は明日以降に譲るとして、まずは稚内を離れることのご挨拶まで。
お世話になりました。
【この景色も見納めかな】