2021年9月26日にドイツの総選挙が行われた。この選挙にアンゲラ・メルケル首相は立候補してない。新内閣発足とともに政界を引退する。そして次期首相には社会民主党のショルツ党首が有力になっている。そのことは事前に書いておいたので、結果も報告しておきたい。ドイツの重要性もあるが、選挙制度が世界のどこにもない仕組み(小選挙区比例代表併用制)なので面白いのである。
(総選挙の結果)
選挙結果を議席が大きい順番に書いてみる。(小=小選挙区、比=比例代表区)
①ドイツ社会民主党(SPD) 206議席(小=121、比=85)
②ドイツキリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU) 196議席
(内訳)
ドイツキリスト教民主同盟(CDU) 151(小=98、比=53)
キリスト教社会同盟(CSU) 45(小=45、比=0)
③同盟90/緑の党(B90/Gr) 118議席(小=16、比=102)
④自由民主党(FDP) 92議席(小=0、比=96)
⑤ドイツのための選択肢(AfD) 83議席(小=16、比=67)
⑥左翼党(Linke) 39議席(小=3、比=36)
⑦南シュレースヴィヒ選挙人同盟(SSW) 1議席(小=0、比=1)
今回の総議席数は、小選挙区299、比例代表区436の合計735議席である。(過半数は368議席になる。)「今回の」と書いたのは、毎回議席数が選挙結果で変わるからで、前回2017年は709議席だった。基本的には政党名投票の比例で数が決まるが、小選挙区でそれ以上当選していればその分が「超過議席」となるのである。
そして「5%条項」があって5%未満の政党には議席が配分されない。ということは知っていたのだが、今回4.9%に落ち込んだ左翼党にも配分されている。それは小選挙区で3議席以上を獲得した政党は特例が適用されるというのである。また南シュレースヴィヒ選挙人同盟という聞いたこともない党が1議席獲得している。これは北部のシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州の地域政党で、デンマーク系、フリースランド系住民の利益を代表する政党だという。少数民族のための特例として5%条項を免除されているという。(知らないことは多い。)
小選挙区比例代表併用制という特殊な制度のため、政党名投票が多いSPDやCDU・CSUだが、比例分の議席は少ない。比例区は緑の党やFDPの方が多い。それは大政党は小選挙区で当選出来るからである。比例分の議席が決まると、小選挙区当選者から埋めていき、残った分が比例の当選数になる。FDPは小選挙区がゼロなので、純粋に比例分の96議席となる。(連邦制なので、多分各州ごとに当選者を決めているんだと思う。)
(SPDのショルツ党首)
結果を見れば一目瞭然だが、連立しないと政権が出来ない。(西ドイツと統一後のドイツでは)戦後すべての政権が連立である。それじゃ困るだろうと思うが、それ以上にナチスのような一党独裁政党の再現を阻止することが優先するのだろう。では今後どのような連立がまとまるだろうか。まず言えることは、SPDもCDU・CSUも、この両党の「大連立」を除けば、他のどこか一つの党と連立しても過半数にならないことである。
「ドイツのための選択肢」は極右政党なので、連立の対象から外されている。「左翼党」はSPDが政権に入って妥協的になった左派系党員が離党して、民主社会党と合同したもの。民主社会党というが、これは東ドイツの政権党だったドイツ社会主義統一党の後身である。そのため基本的には連立対象外だが、「SPD+緑」に左翼党を加えて過半数になる場合は、閣外協力はありうる。しかし、今回の当選者数ではそれは不可能。
(メルケル首相の支援で追い上げたCDUのラシェット党首)
となると、緑の党とFDPの双方と連立交渉をまとめられるかにかかってくる。しかし、一党が加わるだけで過半数に達するなら、その党は独自政策を高く売りつけることが可能だが、2党合わさるとどうなるか。小党は下手に妥協すると特徴がなくなって支持者を失いやすい。緑の党は当然環境問題優先。FDPは5%割り込んだ過去があって、本来は左右の中間の中道政党だが、近年では企業寄りの自由経済を主張することで支持者を確保している。つまり、この両党は主張が正反対で、政権入りのために妥協し過ぎると次の選挙が危なくなる。
前回2017年の時も、この両党との連立交渉が延々と行われた挙げ句、結局6ヶ月も掛かってまとまらず「大連立」しかないということになった。しかし、今回は「大連立」になると10議席とは言え第一党になったSPDのショルツ党首が首相に就任することになる。(そうじゃないとまとまらない。)その場合首相職を明け渡すCDU・CSUとしては何とか緑の党、FDPを連立に巻き込もうと必死の交渉を繰り広げるだろう。しかし、緑の党が環境政策を薄めてまで連立に参加するメリットは少ない。
そうなると最終的には再び「大連立」になるしかないとなる。そういう可能性が高いのではないだろうか。そう覚悟するまで半年ぐらい掛かるかもしれないが、何とか年内に決着して欲しいものだ。メルケル首相が継続するならともかく、辞めると判っている首相がいつまでやってるというのは、ドイツの重要性から考えて望ましくない。こういう風に長く揉めるとなると、比例代表中心の選挙というのも考えものかと思う。
(総選挙の結果)
選挙結果を議席が大きい順番に書いてみる。(小=小選挙区、比=比例代表区)
①ドイツ社会民主党(SPD) 206議席(小=121、比=85)
②ドイツキリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU) 196議席
(内訳)
ドイツキリスト教民主同盟(CDU) 151(小=98、比=53)
キリスト教社会同盟(CSU) 45(小=45、比=0)
③同盟90/緑の党(B90/Gr) 118議席(小=16、比=102)
④自由民主党(FDP) 92議席(小=0、比=96)
⑤ドイツのための選択肢(AfD) 83議席(小=16、比=67)
⑥左翼党(Linke) 39議席(小=3、比=36)
⑦南シュレースヴィヒ選挙人同盟(SSW) 1議席(小=0、比=1)
今回の総議席数は、小選挙区299、比例代表区436の合計735議席である。(過半数は368議席になる。)「今回の」と書いたのは、毎回議席数が選挙結果で変わるからで、前回2017年は709議席だった。基本的には政党名投票の比例で数が決まるが、小選挙区でそれ以上当選していればその分が「超過議席」となるのである。
そして「5%条項」があって5%未満の政党には議席が配分されない。ということは知っていたのだが、今回4.9%に落ち込んだ左翼党にも配分されている。それは小選挙区で3議席以上を獲得した政党は特例が適用されるというのである。また南シュレースヴィヒ選挙人同盟という聞いたこともない党が1議席獲得している。これは北部のシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州の地域政党で、デンマーク系、フリースランド系住民の利益を代表する政党だという。少数民族のための特例として5%条項を免除されているという。(知らないことは多い。)
小選挙区比例代表併用制という特殊な制度のため、政党名投票が多いSPDやCDU・CSUだが、比例分の議席は少ない。比例区は緑の党やFDPの方が多い。それは大政党は小選挙区で当選出来るからである。比例分の議席が決まると、小選挙区当選者から埋めていき、残った分が比例の当選数になる。FDPは小選挙区がゼロなので、純粋に比例分の96議席となる。(連邦制なので、多分各州ごとに当選者を決めているんだと思う。)
(SPDのショルツ党首)
結果を見れば一目瞭然だが、連立しないと政権が出来ない。(西ドイツと統一後のドイツでは)戦後すべての政権が連立である。それじゃ困るだろうと思うが、それ以上にナチスのような一党独裁政党の再現を阻止することが優先するのだろう。では今後どのような連立がまとまるだろうか。まず言えることは、SPDもCDU・CSUも、この両党の「大連立」を除けば、他のどこか一つの党と連立しても過半数にならないことである。
「ドイツのための選択肢」は極右政党なので、連立の対象から外されている。「左翼党」はSPDが政権に入って妥協的になった左派系党員が離党して、民主社会党と合同したもの。民主社会党というが、これは東ドイツの政権党だったドイツ社会主義統一党の後身である。そのため基本的には連立対象外だが、「SPD+緑」に左翼党を加えて過半数になる場合は、閣外協力はありうる。しかし、今回の当選者数ではそれは不可能。
(メルケル首相の支援で追い上げたCDUのラシェット党首)
となると、緑の党とFDPの双方と連立交渉をまとめられるかにかかってくる。しかし、一党が加わるだけで過半数に達するなら、その党は独自政策を高く売りつけることが可能だが、2党合わさるとどうなるか。小党は下手に妥協すると特徴がなくなって支持者を失いやすい。緑の党は当然環境問題優先。FDPは5%割り込んだ過去があって、本来は左右の中間の中道政党だが、近年では企業寄りの自由経済を主張することで支持者を確保している。つまり、この両党は主張が正反対で、政権入りのために妥協し過ぎると次の選挙が危なくなる。
前回2017年の時も、この両党との連立交渉が延々と行われた挙げ句、結局6ヶ月も掛かってまとまらず「大連立」しかないということになった。しかし、今回は「大連立」になると10議席とは言え第一党になったSPDのショルツ党首が首相に就任することになる。(そうじゃないとまとまらない。)その場合首相職を明け渡すCDU・CSUとしては何とか緑の党、FDPを連立に巻き込もうと必死の交渉を繰り広げるだろう。しかし、緑の党が環境政策を薄めてまで連立に参加するメリットは少ない。
そうなると最終的には再び「大連立」になるしかないとなる。そういう可能性が高いのではないだろうか。そう覚悟するまで半年ぐらい掛かるかもしれないが、何とか年内に決着して欲しいものだ。メルケル首相が継続するならともかく、辞めると判っている首相がいつまでやってるというのは、ドイツの重要性から考えて望ましくない。こういう風に長く揉めるとなると、比例代表中心の選挙というのも考えものかと思う。