尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

問題は「立共」より「自公」ではないのか

2021年10月21日 22時22分22秒 |  〃  (選挙)
 立憲民主党共産党が一定の「選挙協力」を行っていることに、自民党などから「反共攻撃」が激しくなっている。甘利幹事長など「政権選択ではなく、体制選択」などと言っているようだ。しかし、きちんとした協力というほどのものではなく、共産党などが候補を取り下げて立憲民主党が「事実上の野党統一候補」になっているという程度の話である。自公が過半数を割ったとしても、立憲民主党内閣には共産党は入閣せず閣外協力に止まるという。実際上どの程度効果があるものなのか、やってみないと判らない。

 立憲民主党と共産党とは、例えば日米安保条約に関して違いがある。立憲民主党は安保条約を認めているが、共産党は廃棄して日米友好条約にすると言っている。そういう違いが将来大きな問題になる日が来るかもしれないが、今回の選挙に関しては何か大騒ぎする意味があるのだろうか。もともと「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」と立憲民主党、共産党、社会民主党、れいわ新選組の4党派が「市民連合と立憲野党の政策合意にあたっての声明」で共通の合意に達している。(9.8日)国民民主党はその合意に加わらなかった。
(市民団体と4党の合意)
 そういう合意がある訳だから、その範囲において各党が協力するのは当然のことだ。合意内容は詳しくはリンク先に掲載されているが、幾つかを挙げてみれば以下のような項目がある。
安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などの法律の違憲部分を廃止し、コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対する
核兵器禁止条約の批准をめざし、まずは締約国会議へのオブザーバー参加に向け努力する
コロナ禍による倒産、失業などの打撃を受けた人や企業を救うため、万全の財政支援を行う
最低賃金の引き上げや非正規雇用・フリーランスの処遇改善により、ワーキングプアをなくす
再生可能エネルギーの拡充により、石炭火力から脱却し、原発のない脱炭素社会を追求する
ジェンダー、人種、年齢、障がいなどによる差別を許さないために選択的夫婦別姓制度やLGBT平等法などを成立させるとともに、女性に対する性暴力根絶に向けた法整備を進める
森友・加計問題、桜を見る会疑惑など、安倍、菅政権の下で起きた権力私物化の疑惑について、真相究明を行う

 僕にはおおよそのところ、反対するところが全然ない政策合意である。他の項目もあるわけだがこの、政策合意に賛同する人は合意した政党の候補が一人だったら、その候補に投票すれば良い。反対するのは自由だが、共産党が入っているから反対なんて理由だったら、いつの時代だよという感じだ。自民党には何か特に共産党だけには知られたくないことがあるのかもしれないが、一般有権者には関係がない。

 中央政治では共産党が与党になったことはないけれど、地方政治だったら半世紀前には「社共共闘」の「革新自治体」がいっぱいあった。しかし、その後自民党に取り戻されてしまった自治体ばかりだ。共産党の首長も今までに何人かいたけれど、結局のところ「だから、何?」というあたりだろう。先駆的な政策もあったし、あまり意味がなかったこともあるだろう。もし共産党に問題があったら次の選挙で交代して貰うだけのことで、大騒ぎするようなことでもないと思う。

 それを言うなら、自公連立はどうなんだというのが僕の感想。自民党は今回「日本で初めて共産主義のイデオロギーに立つ党が政権に影響を与えるかもしれない選挙」なんて言っている。でも公明党と連立を組むときは、「宗教的な背景がある党と連立を組んで大丈夫なのか」と自民党内でも反対がいっぱいあった。特に創価学会と対立してきた親自民系の宗教界からは、非常に厳しい反発があった。でも連立を組んで20年、国家政策が宗教的にゆがめられたわけでもないだろう。要するに高度に発達した情報社会では、一党一派の影響は限定的なんだろう。

 連立を組んだ当初は自民党が参議院で過半数の議席を持っていなかった。そこに連立の意味があったわけだが、近年では自民党一党で衆参両院の単独過半数を持っている。だから連立する意味はないはずだが、もうお互いに連立を止めることは出来ない。多くの自民党議員が野党候補との票差が厳しい状態で、各選挙区で平均2~3万票程度あるとされる公明票抜きでは小選挙区が厳しい。9つの小選挙区と大臣1ポストを渡す代わりに、小選挙区で安心感を得ている。公明票は確実に出る(その地区の自民候補に投票する)ことで知られている。公明党にしても、自公で協力しない限り小選挙区では勝てない。比例区だけだと第3党の地位が危うくなるかもしれないのである。だから、相互依存が恒常化してしまって、今さら抜け出せない状態かと思う。
(岸田総裁と山口代表の連立合意)
 だが選挙後も「自民が単独過半数獲得でも自公連立」と決まってるなら、本来は「連立2党の政権公約」を決めるべきではないのか。今は独自に公約を発表していて、公明党は「18歳以下の子どもに10万円支給」と打ち出している。(しかし、ゼロ歳児に預金口座があるはずもなく、当然親に出すんだろうから「子育て家庭に支給」と言うべきだろう。)この公約の是非は置いといて(僕には疑問が多いが)、実現するんだったら自公の共同公約にするべきだ。公明党だけでは実現出来ないなら、公明党の独自公約って何なのだろう。

 公明党は自民党の公約にかなり批判をしている。「防衛費をGDP2%に増強」「敵地攻撃能力」には山口代表が苦言を表明しているし、選択的夫婦別姓制度にも公明党は賛成していて、反対しているのは自民党だけである。立憲民主と共産を「野合」などと批判している場合じゃない。このように基本的政策が異なる党が連立していて良いのだろうか。「夫婦別姓」などは本来公明党が連立離脱を覚悟して、国会で党議拘束を外して採決すべきだと自民党に迫っていれば、ずっと前に解決していたのではないのか。安保・防衛政策でも、集団的自衛権を容認した時でさえ反対できなかったのだから、今後も連立離脱カードを切って阻止することはないだろう。

 ということで、僕は「立共」の協力問題をあれこれ言ってるヒマがあったら、現実に20年も続いている「自公」連立の意味を検討する方が先だと思っている。ただし、今回は連合からの批判など労働組合の問題を書いていない。そこでもう一回、国民民主党と立憲民主党の全面的選挙協力が何故出来ないのかを考えたい。
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