関東地方でも桜が満開になって、時には寒の戻りがありながらも季節は移り変わっていくなあと感じる。日本の会計年度は4月~3月だから、今年も年度末が近づいてきた。学校を卒業し、新しい学校や職場に行く季節である。民間企業でも新卒社員が入社し、何か新しい気分になる。日本人は「桜」を見ると「別れ」と「出会い」を思い起こして、ちょっと感傷的になる。
多くの職場で人事異動があるが、中でも教員異動には特別な意味がある。地方自治体の行政職や警察などは幹部級職員の異動だけ、新聞の地方欄に掲載される。しかし、教員に関しては新聞が別刷を作って全員の異動を報道する。それだけ読者というか、地域社会に関心が高いのである。単に「お世話になった先生」だからというだけではない。不登校、家庭事情、病気などで登校も大変な児童・生徒がいっぱいいる。その事情を一番つかんでいる学級担任が替わるか、替わらないかは重大問題に違いない。
異動した教員には「離任式」が行われる。(その反対に着任した教員の紹介・あいさつは「着任式」になる。)この問題に関して、東京新聞3月22日付紙面に「先生の異動 年度内に教えて」という記事が掲載された。「お別れ言いたいけど…都の解禁4月1日」「都『年度末まで差し替えも』」というリードがあって、中学生、保護者、教員(元校長)の声が紹介されている。
この問題をどう考えるべきだろうか。実は東京でも多くの高校では年度内に離任式を行っている。自分の体験も振り返ってみても、「異動と離任式」には地域ごとにかなり差があるのが実情だろう。離任式に関しては、①「終業式に続いて行う、②「年度末に登校日を設けて行う」③「新年度の早い時期に行う」④「離任式を行わない」の大体4パターンになるのではないか。年度末に登校させるというのは、地方では結構よく聞く話だけど、東京では行われていない。先ほどの記事にあったように、都教委の基本方針が「異動の発表は発令日の4月1日」というタテマエからだろうか。
東京の教員異動特集は、東京新聞だけが別刷で報じている。(近年は都教委のホームページにも掲載。)でも一時住んでいた千葉県では朝日や読売にも別刷があったので驚いたことがある。それも4月1日より前である。今年の東京新聞のサイトに「公立学校教員異動」のお知らせが掲載されていて、それを見ると千葉、栃木が3月26日(土)、埼玉、茨城、神奈川が3月31日(木)、東京、群馬が4月1日(金)と3つのパターンがある。いや、千葉は随分早いなあと思ったわけである。もちろんどこでも異動の発令日は4月1日である。(退職の発令は3月31日。)細かいことを言い出せば、正式発令前に差し替えがないとは言えないはずである。
(東京新聞の教員異動特集発行日一覧)
だけど、長い教員人生の中で突然差し替えられたケースは見聞きしていない。そもそも「異動発令は4月1日」などと言うなら、相手先(新赴任校)との連絡、打ち合わせもしてはならないはずだ。でもそんなことを言っていては仕事にならない。新任校との打ち合わせは、一回だけは出張が認められている。つまり相手校への交通費は公費から支出される。担任や部活動の希望、家庭等の事情を新任校に伝え、教科の進め方の打ち合わせなどを済ませなければ、新学期にスムーズな仕事始めが出来ない。
自分の場合、中学勤務時は新年度に離任式が行われていた。つまり、異動の発表は年度内にはなかった。その場合、卒業担任の異動ならともかく、学年途中で担任が抜けることもあって、発表を聞かされた生徒たちがエッとどよめくことも多かった。部活動や生徒会活動などは生徒にも引き継ぎが必要なことが多く、やはり年度内に発表して欲しかった気持ちはある。しかし、まあ、実際にはどうしても事前に伝えておくべき家庭などには、非公式に伝えているんじゃないだろうか。いろんな事情を抱えて、そうそう不人情なことも出来ない。少なくとも僕にはそうして伝えたケースもあった。
高校に移ったら、終業式に異動を発表していたので、それでいいんだなと思った。先の東京新聞の記事でも、「なぜ東京では新年度まで秘密にするの」というのは中学生の声だった。小中と高校では何が違うのだろうか。そこには確かに違いもある。それは高校の場合、入学人員を決めて試験を行っているわけだから、新1年生のクラス数は決まっている。多くの全日制高校では卒業式を3月上旬に終えて、その後は新年度に向けた準備期間になる。年度内に新入生説明会を行って、制服や校則、教科書購入などを周知するわけである。だから、新学年団を早期に決める必要がある。
一方で、中学の場合、そもそも何クラスになるか、最後まで決まらない場合がある。今は「学校選択制」などもあるが、公立小学校の生徒数から私立や都立中高一貫校へ抜ける生徒を引けば、2月中には入学する生徒数もはっきり決まるはずだ。しかし、民間企業の転勤が急に決まって、突然一家で引っ越しするケースもある。普通は数人減ろうが増えようがクラス数が変わるはずがないが、時には学級編成の基準数ギリギリの場合もあって、クラス数が増減するのである。そういうケースを見聞きしたこともあるが、急に増えれば教員一人加配である。(クラス数が急に減ったら減員になるはずだが、さすがにそれは行わないことが多いだろう。)そんなこともあってか、新年度の校内人事決定、発表も高校よりずっと遅い。
中学の場合、大体は新年度発足早々の金曜日に離任式があった。どこでも金曜の午後に「学級活動」を置いていて、そこの時間を利用するのである。そして夜に親睦会主催の「歓送迎会」があることが多い。(コロナ禍でもう3年やってないだろうが。)まだ土曜授業があった頃だが、まあ翌日は半ドンだから金曜に飲み会を設定するんだろう。新年度に離任式というのは良いこともあって、異動後の状況を紹介できることである。時には校種が変わったり、管理職になったり、転職したりする場合もあるから、生徒にも興味深いのである。だけど、やっぱり小中も離任式は遅くてもいいから、人事異動の発表は年度内に行うべきだろう。
ところで東京の小中でも年度内に異動を発表している(と思う)場所がある。それは小笠原諸島の学校である。何しろ一週間に一本しか本土への航路がないから、早く乗らないと新任校の始業式までに着かない。前に春休みに小笠原に出掛けたことがあるが、まだ3月中なのに本土へ戻る教員に出会った。埠頭には「○○先生ありがとうございました」などの紙を持った生徒たち、保護者がいっぱい集まっていた。やはりそういう場は必要だなあと思う。
生徒たちが異動する先生に色紙などを書いて渡せる時間的余裕がないと、学校もギスギスしてしまうと思う。教師が誰でも関係ないという人もいるだろうが、多くの人間にはそんな機会があった方が、新年度に向けて気持ちを切り替えられるもんだ。
多くの職場で人事異動があるが、中でも教員異動には特別な意味がある。地方自治体の行政職や警察などは幹部級職員の異動だけ、新聞の地方欄に掲載される。しかし、教員に関しては新聞が別刷を作って全員の異動を報道する。それだけ読者というか、地域社会に関心が高いのである。単に「お世話になった先生」だからというだけではない。不登校、家庭事情、病気などで登校も大変な児童・生徒がいっぱいいる。その事情を一番つかんでいる学級担任が替わるか、替わらないかは重大問題に違いない。
異動した教員には「離任式」が行われる。(その反対に着任した教員の紹介・あいさつは「着任式」になる。)この問題に関して、東京新聞3月22日付紙面に「先生の異動 年度内に教えて」という記事が掲載された。「お別れ言いたいけど…都の解禁4月1日」「都『年度末まで差し替えも』」というリードがあって、中学生、保護者、教員(元校長)の声が紹介されている。
この問題をどう考えるべきだろうか。実は東京でも多くの高校では年度内に離任式を行っている。自分の体験も振り返ってみても、「異動と離任式」には地域ごとにかなり差があるのが実情だろう。離任式に関しては、①「終業式に続いて行う、②「年度末に登校日を設けて行う」③「新年度の早い時期に行う」④「離任式を行わない」の大体4パターンになるのではないか。年度末に登校させるというのは、地方では結構よく聞く話だけど、東京では行われていない。先ほどの記事にあったように、都教委の基本方針が「異動の発表は発令日の4月1日」というタテマエからだろうか。
東京の教員異動特集は、東京新聞だけが別刷で報じている。(近年は都教委のホームページにも掲載。)でも一時住んでいた千葉県では朝日や読売にも別刷があったので驚いたことがある。それも4月1日より前である。今年の東京新聞のサイトに「公立学校教員異動」のお知らせが掲載されていて、それを見ると千葉、栃木が3月26日(土)、埼玉、茨城、神奈川が3月31日(木)、東京、群馬が4月1日(金)と3つのパターンがある。いや、千葉は随分早いなあと思ったわけである。もちろんどこでも異動の発令日は4月1日である。(退職の発令は3月31日。)細かいことを言い出せば、正式発令前に差し替えがないとは言えないはずである。
(東京新聞の教員異動特集発行日一覧)
だけど、長い教員人生の中で突然差し替えられたケースは見聞きしていない。そもそも「異動発令は4月1日」などと言うなら、相手先(新赴任校)との連絡、打ち合わせもしてはならないはずだ。でもそんなことを言っていては仕事にならない。新任校との打ち合わせは、一回だけは出張が認められている。つまり相手校への交通費は公費から支出される。担任や部活動の希望、家庭等の事情を新任校に伝え、教科の進め方の打ち合わせなどを済ませなければ、新学期にスムーズな仕事始めが出来ない。
自分の場合、中学勤務時は新年度に離任式が行われていた。つまり、異動の発表は年度内にはなかった。その場合、卒業担任の異動ならともかく、学年途中で担任が抜けることもあって、発表を聞かされた生徒たちがエッとどよめくことも多かった。部活動や生徒会活動などは生徒にも引き継ぎが必要なことが多く、やはり年度内に発表して欲しかった気持ちはある。しかし、まあ、実際にはどうしても事前に伝えておくべき家庭などには、非公式に伝えているんじゃないだろうか。いろんな事情を抱えて、そうそう不人情なことも出来ない。少なくとも僕にはそうして伝えたケースもあった。
高校に移ったら、終業式に異動を発表していたので、それでいいんだなと思った。先の東京新聞の記事でも、「なぜ東京では新年度まで秘密にするの」というのは中学生の声だった。小中と高校では何が違うのだろうか。そこには確かに違いもある。それは高校の場合、入学人員を決めて試験を行っているわけだから、新1年生のクラス数は決まっている。多くの全日制高校では卒業式を3月上旬に終えて、その後は新年度に向けた準備期間になる。年度内に新入生説明会を行って、制服や校則、教科書購入などを周知するわけである。だから、新学年団を早期に決める必要がある。
一方で、中学の場合、そもそも何クラスになるか、最後まで決まらない場合がある。今は「学校選択制」などもあるが、公立小学校の生徒数から私立や都立中高一貫校へ抜ける生徒を引けば、2月中には入学する生徒数もはっきり決まるはずだ。しかし、民間企業の転勤が急に決まって、突然一家で引っ越しするケースもある。普通は数人減ろうが増えようがクラス数が変わるはずがないが、時には学級編成の基準数ギリギリの場合もあって、クラス数が増減するのである。そういうケースを見聞きしたこともあるが、急に増えれば教員一人加配である。(クラス数が急に減ったら減員になるはずだが、さすがにそれは行わないことが多いだろう。)そんなこともあってか、新年度の校内人事決定、発表も高校よりずっと遅い。
中学の場合、大体は新年度発足早々の金曜日に離任式があった。どこでも金曜の午後に「学級活動」を置いていて、そこの時間を利用するのである。そして夜に親睦会主催の「歓送迎会」があることが多い。(コロナ禍でもう3年やってないだろうが。)まだ土曜授業があった頃だが、まあ翌日は半ドンだから金曜に飲み会を設定するんだろう。新年度に離任式というのは良いこともあって、異動後の状況を紹介できることである。時には校種が変わったり、管理職になったり、転職したりする場合もあるから、生徒にも興味深いのである。だけど、やっぱり小中も離任式は遅くてもいいから、人事異動の発表は年度内に行うべきだろう。
ところで東京の小中でも年度内に異動を発表している(と思う)場所がある。それは小笠原諸島の学校である。何しろ一週間に一本しか本土への航路がないから、早く乗らないと新任校の始業式までに着かない。前に春休みに小笠原に出掛けたことがあるが、まだ3月中なのに本土へ戻る教員に出会った。埠頭には「○○先生ありがとうございました」などの紙を持った生徒たち、保護者がいっぱい集まっていた。やはりそういう場は必要だなあと思う。
生徒たちが異動する先生に色紙などを書いて渡せる時間的余裕がないと、学校もギスギスしてしまうと思う。教師が誰でも関係ないという人もいるだろうが、多くの人間にはそんな機会があった方が、新年度に向けて気持ちを切り替えられるもんだ。