目が見えないにも関わらず美女への思慕を抱えている按摩、という設定がいい。目あきより歩くのが早いのが自慢で、何かにつけ目明きより上と自信があり、そしてその自信が落とし穴になる悲哀。
今では再現不可能な風景を捕らえたロケ撮影が魅力的。和傘をさした人物など、一幅の画のよう。
今だったらもっと効果音が入るところで、山道で馬車の音や風の音も入らないのは不自然な感じはする(1938年製作)。
傘をさした高峰三枝子が物思いにふけっているシーンで、歩いている間をとばして同じ構図で姿だけが遠ざかっていくカットをディゾルヴでつないでいく処理など、「ミツバチのささやき」のようで詩情たっぷり。
「メクラ」という言葉がばんばん出てくるのが気持ちいい。按摩が自分のことを「メクラ」と堂々と言うのだし。
(☆☆☆★★)