prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「それでも夜は明ける」

2014年03月23日 | 映画
鞭打ちの場面をえんえん長まわしで撮っているのだけれど、どういう仕掛けなのだろう。まともにあんなに叩かれていたら、死んでしまうと思う。叩いた背中から血しぶきがあがるのがちらっと見えるだけなのがかえってリアル。CGを使っているにせよ、むしろ使っているように見せないために手がかかっているのではないか。

カットの初めのうち、鞭打ちを命じる農場主の妻の声だけが聞こえて姿が見えないのが何か農場主にとっては内部からの、あるいは天からの声であるかのように聞こえるニュアンスを出したりして、さまざまな要素が入れ替わり立ち代りしてせめぎあうのを丸ごと示す演出は他でも随所に見られる。。

中途半端に首を吊られた姿勢でえんえんと耐えている遠景ショットで、それを見て見ぬふりをしているのだろう他の奴隷たちの姿がずうっと写り続けている、その「だろう」というところを必ずしも明示しないで据えっ放しの長まわしの中に暗示するあたりも印象的。
鞭打ちのリアルな表現は容赦ないが、社会派的なリアリズムからはいくらか離れた手法で作られているのが面白い。

時制の交錯など、シナリオの段階でどんな風に書かれていたのかと思う。12 years slave script の冒頭を読んだだけでも、編集段階でまったく構成を変えているのがわかる。

アメリカの恥部を描いたアメリカ映画ではあるけれども、監督・主演は(アフリカ系)イギリス人だし、資本もイギリスが入っている。アメリカだけだと難しいところはあるのだろう。「プラトーン」と似たケースか。

「それでも夜は明ける」という邦題は、アパルトヘイトを描いた1987年作「遠い夜明け」と対になっているみたい。皮肉にもというか幸いにもというか、アパルトヘイトは1990年のマンデラ釈放から1994年の憲法設定にかけて完全撤廃されたのだから、「遠い」ものではなかったのだな。

主人公を助ける役割を果たすブラッド・ピット扮する宣教師がカナダ人ということだけれど、カナダではどうもアメリカ南部のように綿花栽培をすることはなかったから、奴隷の労働力を必要としなかったということらしい。現在でも黒人の人口比は2%程度とアメリカの13%に比してかなり低い。先住民を征服して行った軋轢はあるだろうが。
なんとなく国際社会での存在感の薄い国だけれど(失礼、ということになるのか?)、アメリカの隣国でれっきとした先進国なのにかなり国柄は違う(たとえば銃が規制されている、国民皆保険が実施されている)。
(☆☆☆★★★)



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それでも夜は明ける@ぴあ映画生活

映画『それでも夜は明ける』 - シネマトゥデイ

3月22日(土)のつぶやき

2014年03月23日 | Weblog

巨大な発電所だった建物を改造した無料の国立近代美術館「テート・モダン」に行ってきました - GIGAZINE gigazine.net/news/20140321-… 「未来世紀ブラジル」に出てきた拷問室は破棄された発電所を使ったんでしたよね。


外国人が日本のアイスを見て驚愕「WHY!なんて言うサンドウイッチなんだい」 - 秒刊SUNDAY yukawanet.com/archives/46459… え、毎週一回は食べてますけど。そんなにびっくりするものだとは思わなかった。シェアしやすいんだよね。


【これ聴いてます】プロコフィエフ/カサド/ベートーヴェン/ヒンデミット:チェロ作品集(シュタルケル) ml.naxos.jp/album/IMV011 #nml