prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「アメリカを斬る」

2014年03月15日 | 映画
1969年作。まず撮影監督として一家をなしたハスケル・ウェクスラーが監督・脚本も兼ねて、しかもカメラマンを主人公にしたストーリーだというのが眼目になる。ウェクスラーはもともとドキュメンタリー畑の人で、劇映画以外にもドキュメンタリーをコンスタントに撮影・演出している。

冒頭の主人公のカメラマンが自動車事故を撮影するのを救急車を呼ぶのより優先する光景から、その場に居合わせると人の生死よりまずカメラをまわしてしまう性を端的に見せる。
この頃はカメラマン、特に動く映像のカメラマンは限られたプロだけだったから撮る者撮られる者の区別がはっきりしていたが、今だと誰でもどちらにもなりうるから、ますます状況はややこしくなっている。
ラストシーンはそれを端的に見せたが、やや図式的な印象はある。

原題はMedium Cool。当時マーシャル・マクルーハンが「メディアはメッセージである」と言ったところからとったのは明白。マクルーハンは「熱いメディアは受容者による参与性が低く,冷たいメディアは参与性あるいは補完性が高い」とも言ったのだが、映画の作り手としては、ホットなテレビに対して、自分たちはクールなメディアを志向するといった意識があったと思われる。

1968年の民主党の党大会でベトナム戦争反対運動が昂じて起きた暴動の実景を取り入れているのだが、臨場感というだけでなく、一方で作者が一定の距離を保っているのが独特の緊張感を出している。長い横移動撮影が印象的。偶然にせよ、銃と車と暴動と、先日見たゴダールの「ウイークエンド」と似てきている。同じ時代の空気を写し取った結果だろう。

製作プランでは民主党大会を撮ることは決めていたが、実際に暴動が起きることまでは当然わからず、撮った後で自然にクライマックスができていったのだと音声解説でわかる。
フランスではシネマ・ベリテと言われた、実際にカメラを向けたところで起きることを取り入れていく、撮りながらシナリオを作っていくフィルムを原稿用紙代わりに使う(喩えが古いね)ような技法のアメリカでのひとつの典型だろう。

黒人が撮影隊にくってかかり、いかにテレビの報道が自分たちの主張を排除しているかをえんえんと語るシーン、いかにも自由に喋らせているようで実は全部セリフはできていた、ただしきわめて的確に書かれていたので感情が乗ったのだという。
このあたりも虚実皮膜感は、音声解説を聞くとより強くなる。通常の音声解説以上に興味深いところ。

主人公の部屋に「勝手にしやがれ」のジャン=ポール・ベルモンドのタバコをふかしている顔のポスターが貼られていて、真似してタバコを吸って見せるところがある。
作中でゴダールについて触れるセリフがあるし、DVD特典の音声解説でもゴダールを意識したと監督が発言している。まさに造反運動が盛り上がりそれにゴダールがアンガージュしていたまっ最中だろう。

主人公の恋人の連れ子で父親がベトナムに行っている少年が伝書鳩を飛ばしているのが、大島渚の「愛と希望の街」みたい。貧しさ(父親は元炭鉱夫)のひとつのシンボリックな表現であり、メディアのごく原始的な形の対比的な表現でもあるだろう。

「マスターズ・オブ・ライト」に収録されているウェクスラー・インタビューによると、製作会社のパラマウントの親会社のガルフ・アンド・ウェスタンから圧力がかかったというし、これといった性描写があるわけでもないのにX(成人)-指定になった。明らかに当局に嫌われていたのだろう。
後に公開された資料だと、作者たちが考えていた以上に政府は自分に対する批判に神経質になり恐れていたのがわかったという。権力にとっては、民衆が自分は無力だと思い何も批判しなくなる方が都合がいいのだ、と。

これまた特典についている予告編を見ると、TIMEとかLIFEとか NEWSWEEKといった一流誌の賛辞がずらり。インテリ、それもリベラル向けという感じはする。



3月14日(金)のつぶやき

2014年03月15日 | Weblog

【劣化コピー】最低限の火葬用の費用を誰かに預ける制度があれば利用しますよ。アウト・オブ・タイムに大江アナがそばにいないから見るかどうか微妙。 韓国側の応対がどうだったとか。 rekkacopy.com


【本棚登録】『スカルノ―インドネシア「建国の父」と日本 (歴史文化ライブラリー)』後藤 乾一 booklog.jp/item/1/4642055…


【本棚登録】『ビッグコミック SPECIAL ISSUE 別冊 ゴルゴ13 NO.183 2014年 4/13号 [雑誌]』 booklog.jp/item/1/B00IPON…


湯川秀樹博士がノーベル賞をとった時は「紙と鉛筆だけでとったのだから大したもの」という妙な誉められ方したそうだけれど、今の研究の大掛かりで費用がかかること隔世の感。 #ss954


理研も多くの偉大な先人出しているところだからなあ。残念。 #ss954


河野談話ができるまでの経過の検証はするけれど談話自体は見直さないと何べんも言っているんですけどね。聞いてないのか曲解しているのか。もともと経過に問題あるのを承知の上で出した談話なのだし、検証の結果どうなろうと変えなくてどこもおかしくない。 #ss954


違いますよ。証拠の有無を争うより問題の早期決着をはかって手をうったのであって、歴代の内閣全部意味を認めています。否定したら法的決着を遡って無視する韓国と同じになる。 @sekki_jidai  河野談話自体、意味の無い談話なんだから検証も修正も要らないということか。#ss954


気のせいか知りませんが、差別意識を指摘されると見下された=差別されたような気がして怒る人間って結構いませんか。 #ss954

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しかし、どこのバカだ。あんな幕出したのは。堂々と出て来いといいたいところだけれど、出てきたら変に英雄視される気もする。 #ss954


これも広い意味での危機管理の甘さということになりますね。早めに危険なことだとわからない甘さ、対応の遅さ、物事を矮小化しようとする小細工。 #ss954


拡散しないで下さいというのは、拡散してくれというのと一緒。 #ss954


昔のアメリカ南部で白人は差別する意識がないどころか、愚かな黒人は自立しては生きられないから奴隷にして雇って守ってやっているつもりですらいましたよ。つもりで決められたらたまらない。 #ss954

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同質の人間が集まって熱狂すると排他的になるのだろうか。 #ss954


日本の恥さらしほど我こそは日本人という顔したがる。 #ss954

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加害者の方が被害者意識を持つという心的メカニズムってどんなものだろう。 #ss954