オルカ=シャチが人間と同じくらいの知能と感情を持っているという前提の物語で、ウィル・サンプソンの先住民とシャーロット・ランプリングの海洋学者の両方からこれでもかとオルカの知能の高さをレクチャーされるし、オルカが善玉でそれを殺す人間が悪玉という図式がはっきりしているので、なんだかイルカ漁で悪玉にされている日本人としては微妙にひっかかる話ではある。40年近く前の映画だから、エコについてはシーシェパードみたいに傲慢で高圧的ではないが。
いくら知能が高くても海の中から地上のパイプラインの位置とかわかるのか、という疑問は湧く。見せ場を派手にするための方便の感が強い。
ジョーズが公開されたのが1975年、これが1977年だからずいぶんな早業。「フリー・ウイリー」の公開が1995年となる。どこまで本物のシャチでどこまでアニマトロニクスなのかおよそ見分けがつかないくらいよくできている。時期的には本物を使ったところが多かったのかと思える。
こと特殊効果については「ジョーズ」よりよくできていて、オルカ全般のさまざまな感情を表現しているアップはおそらく知能の高さの賜物だろうし氷の上を走り回る人影を海中から捉えたショットなどどうやって撮ったのかと思わせる。
「ジョーズ」で鮫捕りに行く船の名前がORCA号だし、ここに出てくるシャチ捕り船も構造や大きさはそっくり。意識的にそうしているのだろうし、ラストの滑り台みたいになるシーンなど明らかになぞった上で一ひねりしている。
リチャード・ハリスの船に乗っている若い女性がやたらと美人だなと思っていたらボー・デレク。一時期「10」で世界最高の美女という設定で一世を風靡していた人。
エンニオ・モリコーネの音楽がやたらと格調高い。