prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「マ・レイニーのブラックボトム」

2021年01月14日 | 映画
原作オーガスト・ウィルソン。デンゼル・ワシントンが舞台で主演しトニー賞を獲得し、さらに製作監督主演で映画化した「フェンス」の原作者でもある。

詩的なダイアローグとアメリカ黒人の日常生活の市民的リアリズム、さらにはルーツであるアフリカの地と血にも想像が広がる射程距離の長い作劇。

オープニングでヴァイオラ・デイヴィスが歌と踊りのパフォーマンスを見せるところで一気に引き込まれる。森の中を走ってくる黒人少年たちが、一瞬逃亡奴隷かと思わせる。
対してこれが遺作になってしまったチャズウィック・ボーズマンがトランペットの指の動きをマスターしてアーティストとしての誇りとそれを白人企業家に買い叩かれる屈辱を鮮やかに見せる。今さらながら、なんという損失か。

一見してわがままでがめつく傲慢なスターに見えるマ・レイニーが、一歩間違えたら黒人で女だから人間扱いされないところで、人間としての敬意を要求し続けるぎりぎりのところにいるのが、涙で濃いマスカラが流れたようなメイクに見せる。

同時に配信されているメイキングも見もの。