画面サイズが1:1.37というほとんど正方形に近いサイズ。 だから ほとんど ヒロインだけが画面を支配する主観的な世界という形になっている。
人工中絶の話なのだが 相手の男はほぼ出てこない 。大学の男の教官が進路についての相談に限って相談の相手になるくらい(というか、立場上相談しないわけにいかない)。
フランスで中絶が非合法だった時代の話で、医者も協力したら罪に問われて免許を剥奪されるだろうからまったく当てはならない、その孤独感が凄い。
望まない妊娠で実際に一生が逸れていってしまった女性が無数にいることをことさらに強調はしていないが、明らかに背後に透けて見えて、原作者アニー·エルノーおよびオドレイ・ディワン監督の中絶体験をもとにしているというから、そのキャリアを棒に振っていたかもしれない可能性と恐怖が裏に張り付いている。
徹底してヒロインが一人だけで自分の肉体も未来も引き受けければいけないのを被害者意識でなく苦痛とともに 自分で選び取ってくのが凄みがある。アナマリア・バルトロメイ のまなざしと声が全編を圧している。
トイレで具体的に何がどうなっているのかどうもよくわからないのだが、昔の日本だったらあそこにボカシがかけられていたのだと思うとややマシになったか。
これとは別に、日本でのバースコントロールの認識と制度の遅れっぷりも十分一本の映画になるだろう。