ミソジニー(女性嫌悪)を図解したような映画。
男の被害者意識の皮をかぶった加害者の陰険さは、たとえばフェミニストや性加害者を告発した人に対する嫌がらせ粘着としてネット上で日常的に目にするけれど、そのヘドロのような言葉に顔と姿を与えた。
当てつけ自殺のような死に方をする、窓の外を落ちていく夫と目が合ってしまう悪夢のような感覚のシーンから始まり、当たり前のようにセクハラ的言動をしてきたり、夫が死んだのはあなたのせいではないですかと取り澄ました顔をしてひどい言葉をかけてくる神父など、男たちがクズを通り越して後半怪物化してくるホラー。
木からリンゴがぽとりぽとりと大量に降ってくるシーンがあるが、聖書でのアダムがイブに受け取った果実と言われるリンゴにひっかけている、つまり人間の原罪は女が誘惑したのから始まる聖書にまで遡っている感じ。
男たちの中に神父が混ざっているのも含めて、寓意があからさますぎてもっと複雑な意味をこめているのかなと考えるくらい。
無調な響きに人声が混じる音楽が実験映画的で刺激的。
クライマックスの奇想イメージの展開はアレックス·ガーランドの旧作「エクスマキナ」同様、今の映像技術で何ができるか知った上で発想しているよう。