prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「零落」

2023年03月25日 | 映画
冒頭「猫顔の女性は苦手」といった字幕が出て、猫顔そのまんまの玉城ティナの顔を後ろから撮ったり髪で隠したりとなかなかはっきり見せない撮り方をしているので何だろうこれはと思わせるが、主人公が苦手なのに合わせてまともに顔を見られない主観的表現ということになるか。

原作者浅野いにおの半自伝的内容と思しく、 斎藤工扮する主人公の漫画家が 長期連載を終えてぽかっとブランクのような状態になった時に あれこれと迷ったように妻や女性アシスタントなど様々な女たちの間をパチンコ玉のように弾かれながら行き来する「8 1/2」的展開を辿るが、その中に猫顔の風俗嬢の趣里も異物のように混ざっているという仕掛け。
女性出演者たちがちょっと出るだけの風俗嬢を含めてそれぞれ微妙に怖くて魅力的。

一度はヒット作を出した漫画家なので相当態度がでかい。というか、勘違いしているファンを含めて周囲が変な気の使い方をするくせに本当には「ヒット作」だけが欲しいので作者の人格になど興味がない構造がそうスポイルさせているわけでもある。

零落といっても本当に売れなくて金に困ってるわけではないのでわざとのような勝手さの方が目立つ。やってることのレベルは昔の無頼派文士なみ。
ラストの初めてアップになる玉城のセリフからして、作り手の方もこの男の異物性みたいなものに意識的だろうと思う。

女は猫に似ている、呼んでも来ないし、呼ばないと来ると言ったのは誰だったか、伊丹十三だったか。