晴れ、30度、87%
香港に来て、初めて飼った生き物はアフリカンマイマイでした。雨上がりの朝にでもなると道端の何処かしこに、日本で見るかたつむりとは色も形も大きさも違うアフリカンマイマイがウニョウニョいました。通常のもので6センチから8センチ前後、日本のかたつむりのように丸くはなくタニシを大きくしたような殻です。
このアフリカンマイマイは非常に危険だと知ったのはつい数年前のことでした。このマイマイに毒性があるのではなく、マイマイの寄生虫が時には死に至らせる程の悪者なのだそうです。その事を知った時にはそれはそれはびっくり仰天。なぜならば、30年程前に飼っていたばかりではありません。朝走る道には夏中、このマイマイが道を這っています。一匹や二匹ではありません。よく前を見ていないと踏みつぶします。心ないジョガーはバリバリ踏んで行く程いました。道の真ん中を這っているマイマイを見つけると道の端に逃がします。「マイマイの国の王様に表彰されてもいいわ。」などとうそぶく程このアフリカンマイマイを触って来ました。今考えると、よくその悪い寄生虫を貰わなかったものだと思います。脳神経を冒す寄生虫だそうです。
日本でも南方の島、沖縄や父島などにはこのマイマイたくさんいるそうです。名前の通り東アフリカが原産で東南アジアではごく普通の繁殖力の優れたマイマイだそうです。しかも大きいので、食用に繁殖させている所もあると聞きます。脱け殻ですがゆうに20センチを超えるものを見たこともあります。もしもそれが這っている所を見たら、やはり仰天です。
ところがこの10年で香港の我が家の周辺のアフリカンマイマイが減りました。この夏はまだ10匹程しか見ていません。雨上がりの側溝を行列していた頃が懐かしくなる程です。10年程前、朝早く大きな缶を携えてこのマイマイをとりに来るおばさんがいました。気が付くとセントラルの市場で身体に良いといって売られていることもありました。そればかりかフレンチのビストロが大いに店を増やし始めた時期です。エスカルゴの代わりにこのマイマイを出しているなどと実しやかに言われていました。真偽の程は分かりません。
香港島のこの一帯だけにマイマイがいなくなった訳ではないと思います。香港は岩盤地質でよく土砂崩れが起きます。そのために護岸工事をします。そのとき使う土は中国から運ばれて来ているそうです。このアフリカンマイマイに代わって最近見られるかたつむりがいます。日本のかたつむりに色も形も大きさもほぼ同じです。少し無愛想に見えるのはこの私だけでしょう。沢山いるわけではありませんが、この香港にとっては新種のかたつむり、おそらく中国の土と一緒に運ばれて来たのではないかと思います。これは私の推測です。
このアフリカンマイマイ、戦時中は南の島での良い食糧だったようです。火を通せば寄生虫も死んでしまうのでしょう。かたつむりが好きな私は、決してエスカルゴを食べません。