チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

94歳のお婆さんの干し柿

2023年12月05日 | 日々のこと

曇、9度、68%

 朝のココとの散歩はコースが決まっています。我が家の一帯も昔からの家が少なくなりました。残っている古い家は数軒です。その中の一軒の家をひと月ほど毎日見上げていました。「干し柿」です。この家は毎年「干し柿」が干されます。94歳のお婆さんが一人で暮らす家です。

 「干し柿」が窓辺に並ぶ様子は遠くから見ても家の中から見ても好きな光景の一つです。しかもその「干し柿」が一直線に並んでいるのが好もしいと思います。「干し柿」を作る人の性格が出ているかのようです。毎朝見上げる「干し柿」は一直線に行儀良く並んでいます。朝から気持ちのいい景色、思わずにっこりします。

 夕方のココとの散歩は用事を済ませることもあったり、気儘に歩くこともあります。郵便局に行くついでがあり「干し柿」のお家の前を通りました。94歳のお婆さんが道の掃除をしています。箒を使うだけではありません。入念な掃除です。この半年ほどお顔を見ていなかったので、ご健康を心配していました。でも道が綺麗なのでお元気に違いないと思っていました。季節の挨拶の後、見上げたお家の窓辺に「干し柿」がなくなっています。「あら、干し柿もう取り込まれたのですね。」と言うと「今年は早く作りすぎたわ。」と茶目っ気たっぷりに笑われます。「干し柿」の並ぶ様子が好きで毎朝見ていた事を話しました。「裏庭の柿の木は百数十歳で今年は実が小さくなったのよ。」そしたら急に「お味見に持って帰って。」と家の方に小走りに行かれました。その走る後ろ姿は94歳の人のものではありません。

 お玄関で待つ事5分ほど、選んでくださっているのでしょう。袋を手に裏から出てみえました。「柿の実」は出入りの植木屋さんが毎年採ってくれるそうです。皮を剥き、お湯にドボンと浸して干すのだと話してくださいます。「お返しはいらないからね。」と念を押され、すっかり暗くなった中を家に戻りました。手に持った「干し柿」なんだか暖かく感じました。

 いつ見ても姿勢良く、パトリックスのスニーカーを履いて歩く姿は70代と言っても通じます。素敵なお婆ちゃまです。「友人はほとんど他界したのよ。」とボヤかれますが、湿っぽさのない話ぶりです。

 「干し柿」を食べました。日向の匂い、樹齢100歳を越える木の重み、94歳のお婆さんの手の温もりが伝わります。鄙びた甘さが身に染みました。私の住むこの家にその昔「床の間」がついたトイレがあった事を知るのは、今ではこの94歳のお婆さんと私だけになりました。来年も「干し柿」が綺麗に並んで干されますようにと祈ります。


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