夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

ABBA(アバ)、お好きですか。

2009年02月27日 | 映画(番外編:映画と音楽)
『おくりびと』ほどの混みようではないものの、
『マンマ・ミーア!』も大ヒット中。
こんなにも「観に行った」と言う人がまわりに多い映画は久しぶりです。

で、『マンマ・ミーア!』と言えばABBA。
フランスのアニメ『ペルセポリス』(2007)について書いた、
「イランでヘヴィメタ。」でも触れましたが、
ABBAはさまざまな映画にイケてないものの代名詞として登場します。

そして、ゲイが好む音楽として頻出するのもABBA。
たとえば私の大好きなオーストラリア映画『プリシラ』(1994)。
3人のドラァグクイーン(女装趣味のゲイ)がド派手な衣装に身を包み、
砂漠のまんなかにあるリゾート地に向かってバスで旅するロードムービーです。
この作品には1970年代のディスコ音楽がてんこ盛り。
ヴィレッジ・ピープルやグロリア・ゲイナーなどとともに、
まさにABBAの『マンマ・ミーア』も。

なんでこんなことになるのかと不思議ですが、
アメリカではゲイ=ディスコという認識があるそうな。
日本人の研究者の中にも、ディスコ音楽とゲイの関係について、
きちんと論文を書いている方がいらっしゃるようで、
読んでみたいな~と思っています。

世の中にはいろんなランキングを考える人がいるもので、
ゲイが選ぶお気に入りアルバムのランキングというものがあります。
堂々の1位はデヴィッド・ボウイ、
ABBAは42位にランクインしています。
こうして見ると、たいしてゲイが好んでいるわけでもないのに、
なぜゲイ好みの音楽の代表格にABBAが挙げられるんでしょう。

私と同世代の方ならきっと誰でもご存じの『スネークマンショー』。
桑原茂一、小林克也、伊武雅刀の伝説のユニットですが、
そのコントのネタとしてもABBAの名前がちらりと登場します。

ありがたくない扱いを受けている感の強いABBA。
ディスカバリー・チャンネルの『世界を喰らう』という番組。
この番組で世界を食べ歩くアンソニー・ボーディンさんは、
めっちゃイケてる中年&男前な料理人で、私は大ファンです。
しかし、アンソニーさんはABBAが大嫌いらしく、
スウェーデンを訪れたときは、ABBAを的にダーツをしていました。

なぜにこんなに嫌われる。
でも、それ以上に好きな人がいっぱいだから、映画もこんなにヒットする。
ABBAが好きだとは恥ずかしくて言えないけれど、
ついつい口ずさんでしまう人、絶対多いにちがいない。
かく言う私もそのひとり。

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イランでヘヴィメタ。

2009年01月19日 | 映画(番外編:映画と音楽)
フランスのアニメ『ペルセポリス』(2007)を観ました。
原作はイラン出身の漫画家の同名作品で、
彼女の半生を綴った自叙伝。
タイトルは紀元前のペルシア帝国の都市の名前です。

マルジャン・サトラピ、愛称マルジ。
1969年にテヘランの上流階級の家庭に生まれた彼女は、
幼少期をイランで何不自由なく過ごします。

しかし、イラン革命を境にさまざまな変化が。
イラン・イラク戦争が勃発して、
政治犯とみなされれば、直ちにしょっぴかれて処刑される時代だというのに、
恐れを知らないマルジは、綺麗事ばかり言う先生を論破してしまいます。
リベラルな両親はそんなマルジを誇りに思いつつ心配し、
ウィーンのフランス語学校へ留学させることに。
ヨーロッパで送る学生生活は次第に自堕落に。

30カ国以上で出版されたベストセラーというだけあり、
とぼけた風味の絵と話にズルリと引き込まれます。

イスラム教の国ならではの慣わしには、唖然とする話も登場します。
女性を逮捕した場合、処女を殺すことはタブーとされているので、
一度結婚させてから死刑に処するとか。
けれど、これが周知されている国では、『ゴジラ』を観て呆然。
「まったく日本人ときたら、切腹するか怪獣を作ってばかり」とぼやきます。

上流階級ゆえの会話なのか、
豆のパイやクロワッサンが出てきたり、
「ウィーンに行ったらザッハトルテを食べなさい。
最高のチョコレートケーキだから」なんて
両親がアドバイスしたりするのは楽しいです。

陰鬱な話も鮮やかに吹き飛ばして豪快。
予想をはるかに超える器の大きさと明るさでもって魅せてくれます。

本筋とは別に、私が笑ったのが表題のこと。
路地で闇商品を売る怪しげな男たち。
その路地を訪れたマルジに次々と声がかかります。
「エスティーヴィー・ワンダー」、「ジャイケル・マクソン」、
「フリオ・イグレシアス」、「ピンク・フロイド」(この2つはなぜかまともに発音)、
「口紅、マニキュア、トランプ」など、
すべて無視して歩いていたマルジがハタと立ち止まったのは
「アイアン・メイデン」の声がかかったときでした。
きっちり値切ってカセットテープを入手したマルジは、
帰宅すると、テニスのラケットをギターに見立ててヘッドバンギング。

ハリウッド映画ではダサイものの代名詞であるABBA(アバ)。
本作でもダサイと罵られていました。
そんなABBAの曲満載の『マンマ・ミーア!』は今月末公開です。

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もうちょっとだけ、ヘヴィメタ。

2008年07月28日 | 映画(番外編:映画と音楽)
なにしろ私は、つい最近まで、
メロイックサインの存在すら知りませんでした。

ついでなので、メロイックサインって何?という方へ。
指でキツネの形を作って、中指と薬指を折り込み、
その上に親指を乗せると、それがメロイックサイン。
メタルのコンサートではバンドメンバーも聴衆もこのサイン。

『ダーウィン・アワード』
(2006)では
「巨大メロイックサイン♪」と叫ぶシーンもありましたが、
字幕では「悪魔サイン」と記されています。
ほかに訳しようがないのでしょうが、
「メタルしようぜ」ぐらいの意味?

なぜメロイックサインがメタルの常識となったのか、
前々述の『メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー』では、
その起源などにも触れられています。

で、メタルの知識がもう少しあれば、
もっと楽しめただろうなぁという作品を観直したくなり、
『リトル・ニッキー』(2000)を再見。
メタルを全然知らなかった当時でも十分楽しめたけれど、
やはり今のほうが笑えるシーンいっぱい。

こんなストーリー。

地獄を仕切る魔王には3人の息子がいる。
長男と次男が悪魔にふさわしい極悪人なのに比べ、
三男のニッキーはメタル好きの心優しき悪魔。
現在メタルのマイベスト盤を製作中。

自分の父親を魔王の座から追い出して、
その後継者の地位を狙う長男と次男は、
地上で悪さをすることを思いつく。

ある日、長男と次男は地獄の火をくぐり抜けて脱出。
火が消えた状態では、魔王の力が衰えてしまう。
2人を連れ戻さなければ、やがて魔王は消える運命。
父親の命を救うため、ニッキーは意を決して地上へ。
期限はちょうど1週間。

まず、ニッキーの部屋はメタルのポスターだらけ。
地上でニッキーが火を噴くのを偶然見て、
悪魔にちがいないとニッキーのファンになる2人組は
アイアン・メイデンとモトリー・クルーのTシャツ姿。
パンテラのTシャツ着用のときもありました。
レコードを逆回しすると悪魔のメッセージが聞こえるという噂に、
オジー・オズボーンのレコードを逆回ししてみる2人。
ところが、ニッキー曰く、悪魔的メッセージが聞こえるのは、
オジーじゃなくて、シカゴのレコード。
メタル=悪魔ではない。

特典がまたおもしろいので必見。
重要な役で出演するオジーが、コウモリを食べるシーンがありますが、
それが彼自身のパロディだったことも特典を見て理解。

メタル、楽し。

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テレサ・テンを偲ぶ。

2007年06月07日 | 映画(番外編:映画と音楽)
経済大国化する中国。
偽造品がまかり通り、なんでも有りに映るこの国を、
良くないイメージで捉える日本人は多いと思います。

私の中国人に対するイメージも決して良いとは言えません。
だって、なんとなく中国人ってけたたましい。
海外のどこへ行こうが、近くに中国人がいればすぐにわかる。
数人寄れば喋りっぱなし、しかも喋る声、デカすぎよ。

しかし、私はなぜか中国に縁があります。
そもそも大学での専攻は中国文学でした。
第一外国語も中国語でした。
イメージが良くないと言いながら、中国の映画が大好きです。
私の定義では、その国の映画が好きならその国に住めるんですから、
中国にも住めると思っています。

大陸中国で育った人間は、ただひたすらたくましく、
あつかましく(失礼)、どんな国でも生きていける、
そんな私の中のイメージを揺り動かした作品が『ラヴソング』(1996)でした。

本作中、大陸中国の象徴となっているのがテレサ・テンです。
先週末、木村佳乃主演で『テレサ・テン物語』が放映されたので、
今の私と同い年で亡くなった彼女のことを偲んで。

大陸中国出身の男女、シウクワンとレイキウが香港で出会います。
マクドナルド(=都会の象徴)で働くレイキウ。
大陸から出稼ぎにやってきたシウクワンは、
初めて入るマクドナルドで、注文するのにも一苦労。
すでに都会に馴染んでいるように見えるレイキウは
大陸出身であることに劣等感を抱きながらも、
どことなく同じ匂いを感じ、シウクワンに興味を持ちます。
そして、お互いに惹かれながらも友だちの壁を崩せず、
すれちがったまま十年の月日が過ぎてゆきます。

私が観てから十年以上が経っているのに
なぜかしょっちゅう思い出して切ない気持ちになるのは、
本作で初めて、大陸中国人の心のすき間を見たような気がするからです。

原題はテレサ・テンの曲にならい、『甜蜜蜜』。
彼女の曲がいたるところで使われています。
大陸中国から都会へ渡った者たちの夢であり、
心の支えであるテレサ・テン。
くじけそうになったとき、彼女の曲が流れてくると、
彼らはここで生きて行こうと再び決意します。
テレサ・テンが強く愛されていた理由を、私は本作で知りました。

別れざるを得なくなったふたりは、お互い別の人と結婚。
偶然再会したときに燃えあがる想い。
「もう一度、二人であの歌を聴けたら」。

これぞ、純愛。

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ピアニストの映画

2005年05月23日 | 映画(番外編:映画と音楽)
現在、世界中の話題をさらっているのは、
先月、英国の海岸でずぶ濡れで発見された謎の人物。
着用していたスーツからはラベルが切り取られており、
おどおどした様子のこの男性は
発見されてから現在に至るまで、ひと言も口をきいていないとのこと。

ところが、収容された病院で、名前を書かせてみようと紙を渡したところ、
そこに彼が描いたのはコンサート用のグランドピアノの絵。
ピアノの前に連れて行くと、いままでの怯えた様子はどこへやら、
堂々たるプロ並みの演奏を披露して周囲を驚かせたそうな。

真相が気になるところですが、
ピアニストをはじめとする音楽家は神経をすり減らしながら生きているのか、
話題性に富んだ人物が多いですね。

以前に自分で書いた日記の二番煎じだらけになりますが、
『シャイン』(1995)の主人公で実在のピアニスト、
デビッド・ヘルフゴットも深く精神を病んでいました。
でも、ピアノを前にしたときだけは人が変わります。
この作品で私がもっとも好きなシーンは、
雨のなか、街をぶらつくデビッドが、ガラス張りのバーの店内にピアノを見つけて、
吸い寄せられるように近づいていくところ。

あきらかにまともではない恰好の彼がピアノの前に腰かけるのを見て、
店員や客は引きますが、その指から奏でられる曲に驚き、
みんながデビッドの虜になります。
演奏し終えたあとの聴衆の喝采と拍手に胸が熱くなります。

『戦場のピアニスト』(2002)の主人公、
やはり実在のポーランドのピアニスト、ウワディク・シュピルマン。
戦禍で被われた町から命からがら逃れた彼は
明らかに精神状態がおかしくなっています。
しかし、食糧を求めて忍び込んだ廃屋で
一心不乱に弾くピアノは凄まじいほどの素晴らしさ。
彼を見つけたドイツ軍の大尉は、本来なら射殺してもおかしくないところ、
黙って彼のピアノに耳を傾ける姿が印象に残ります。

さて、ピアノマンはどうなりますことやら。

あ、そうそう、ピアノマンの話にそっくりだからと
配給元が必死で宣伝している『ラヴェンダーの咲く庭で』
日本ではまもなく公開ですが、そんな手を使って宣伝しなくとも、
見応えのある女優さんがいっぱい出ています。
大女優ジュディ・デンチをはじめ、
ハリ・ポタのマクゴナガル先生、マギー・スミスも。
ふたりとも整形とは縁がなさそうな、シワの美しい女優さんです。

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