夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『1票のラブレター』

2003年10月09日 | 映画(あ行)
『1票のラブレター』(英題:Secret Ballot)
監督:ババク・バヤミ
出演:ナシム・アブディ,シラス・アビディ他

前述の『歌え!フィッシャーマン』と続けて観たら、
あまりの心地よさにこれまた眠気に襲われました。
心地よさは同じだけど、鼻水も凍る寒さのノルウェーとはうってかわって、
こちらは青い空と海が果てしなく続くペルシャ湾、キシュ島。

島の警備兵ふたりは、海岸にパイプ製のベッドを置き、
交替で睡眠をとっている。

ある日、空から箱が降ってくる。
今日は選挙の日。
パラシュートで落ちてきたその箱は投票箱だった。

箱を拾った警備兵は、自分は寝る時間だからと
そそくさとベッドに入ってしまう。
起こされた警備兵は後から来るはずの選挙管理委員を待つことに。
自分の今日の仕事は委員の護衛をすることらしい。

小さな船でやってきた選挙管理委員は若い女性。
「女の言うことなんて聞いてられるか」と警備兵は不機嫌な態度。
しかし、上からの命令にそむくわけにもいかず、
彼女と彼は軍のジープで僻地をまわることに。

選挙の日に投票箱を持って砂漠の村をまわること自体、
私たちには想像できないこと。
軍のジープに恐れをなして逃げてしまったり、
投票したいのに読み書きができなかったり、
候補者リストを無視して神に投票したり。
土地と家畜をみずから所有している人は
自分のものさえ確保できれば選挙なんて興味なし。

投票権は16歳から。
投票を断られて、「12歳で結婚もできるのに投票できないなんておかしな法律」と話す女性。
また、男性主導のこの地では、
投票するのも妻の考えだけでは決められない。
ひとり1票あるのだと言われても、「主人に聞かなければわからない」。

でも、決して堅苦しくはない物語です。
最初は女性管理委員に不快感をあらわにしていた警備兵が、
彼女の懸命な姿にほだされて、少しずつ理解を示します。
なんとかひとりでも多くの人の票を集めようと、
音をあげかける彼女を逆に励ましてみたりして。
無骨な兄ちゃんのそんな姿、ええなぁ。

『キシュ島の物語』(1999)でも舞台になったこの島。
車なんか通らないのに、いつまでも青に変わらない信号もあったりして、
時間の流れがゆるやかです。

ところで、この作品って、いったいどういうジャンルやねん?と思ったら、
「社会派ドラマ」としているHPと「ファンタジー」として紹介しているHPがありました。
「社会的要素を含むファンタジー」に1票。

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