夜な夜なシネマ

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『アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台』

2022年08月07日 | 映画(あ行)
『アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台』(原題:Un Triomphe)
監督:エマニュエル・クールコル
出演:カド・メラッド,ダヴィド・アヤラ,ラミネ・シソコ,ソフィアン・カメス,
   ピエール・ロタン,ワビレ・ナビエ,アレクサンドル・メドヴェージェフ他
 
なんばパークスシネマにて、前述の『海上48hours 悪夢のバカンス』の次に。
 
実話に基づくフランス作品。
監督のエマニュエル・クールコルは、『君を想って海をゆく』(2009)の脚本家。
クルド難民の少年がドーバー海峡を泳いで渡ろうとする話で、心に残っています。
監督としてはこれがまだ2作目だそうで。
 
輝かしい時代もあったものの、今は無職の舞台俳優エチエンヌ。
このたび彼が引き受けた仕事は、刑務所囚人相手に演技指導をすること。
さして演劇に興味があるとは思えない囚人たち相手にエチエンヌは奮闘し、
とりあえず刑務所内でおこなわれる発表会で芝居を披露する。
 
それが好評だったことから、エチエンヌは彼らに今後も演劇を続けさせたいと考える。
かつての盟友で、今は劇場経営者に徹する儲け第一のステファンに、
一日だけ劇場を貸してほしい、この舞台で囚人たちに上演させてほしいと懇願する。

たった一日の舞台にエチエンヌが選んだ演目はサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』。
それも成功して、あちこちから出演オファーが舞い込むようになり……。
 
エチエンヌのクラスを選択した囚人は6名。意味のわからない不条理劇に彼らは困惑しきり。
なかでも文盲のジョルダンは、字も読めないのに難解な台詞を覚えねばならず、時折パンク。
対照的にとても知的でベケットを知っていた囚人パトリックもいる。
彼なんぞはもともとはクラスにいなかったのに、どんな下心があるのか、
どうしても演じたいと言って、元いた囚人を追い出してまで参加します。
 
エチエンヌ自身も、下心とは言えないまでも、誰のためなのか途中からわからなくなってくる。
囚人たちのためと思いきや、長く無職の自分がこれで認められるわけですから、
そりゃ知らず知らずのうちに熱が入りますよねぇ。そこを一人娘に指摘される。
 
刑務所長も大変です。
いくら本物の劇場を借りることができたところで、判事の許可を取らねばならない。
凶悪な強盗を犯した罪で服役している囚人を外に出してもいいものか。
 
「予想外のラストが、あなたを待っている」とあります。確かに予想外。
感動的なラストかどうかを聞かれたら、ちょっと厳しい。
少なくとも映画をあまり観ない人は、憮然とするのではないでしょうか。
 
ネタバレですが、信じていたのに裏切られちゃうのですからね。
あれでやっぱり彼らが戻ってきたというオチであれば感動しますけど。
もしも感動を求めて観に行くなら「なんか違う」ということになりそうです。

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