『わたしは最悪。』(原題:Verdens Verste Menneske)
監督:ヨアキム・トリアー
出演:レナーテ・レインスヴェ,アンデルシュ・ダニエルセン・リー,ヘルベルト・ノルドルム,
ハンス・オラフ・ブレンネル,マリア・グラツィア・ディ・メオ,マリアンヌ・クローグ他
シアタス心斎橋にて4本ハシゴの2本目。
ノルウェー/フランス/スウェーデン/デンマーク作品。
ヨアキム・トリアー監督はラース・フォン・トリアー監督の遠縁に当たるのだとか。
レナーテ・レインスヴェは本作が映画初主演だというのに、
第74回カンヌ国際映画祭でみごと女優賞を受賞したそうです。
美人で知的でセクシー、成績優秀なユリヤだが、何事も長続きしない。
医学部に入るも、自分が好きなのは人間の体ではなく心だと考え、心理学に転向。
しかしそれも早々に興味を失い、今度は写真家を目指す。
目指したところですぐに職に就けるわけもなく、書店でバイト。
そんな感じで恋も長続きしないやついっぱいのまま、そろそろ30歳。
ある日、ユリヤは一回り以上年上の風刺漫画家アクセルと恋に落ちる。
いつもどおりに速攻で終わるかと思いきや、同棲を始めたふたり。
良い関係のはずが、子どもをほしがるアクセルにうんざりしたユリヤは、
ちょっと潜り込んでみたパーティー会場でアイヴァンという同世代の男性と出会い……。
玄人受けしそうです。
こういう作品をわざわざ劇場で観なくてもいいとお思いになる人も多いはず。
だから私も人に薦めるつもりはゼロですが、なんちゅうことないのになぜか心に残る。
何事も続かないユリヤが鼻についたりするけれど、共感できる部分も多い。
アクセルの親戚が集まる場に招かれて、お節介おばさんからあれこれ言われる場面には、
私が最悪じゃなくて、あんたが最悪だよと言いたくなったりも。
アイヴァンとは子どもをつくらないと決めていたのにできちゃって、
でもできたから母性が芽生えてふたりで育てる決意をする、
というようなありがちな展開ではないところもよかったです。
主演のレナーテ・レインスヴェは、脱ぎっぷりのよいところも含めてダコタ・ジョンソンに似ています。
アクセルのモデルはロバート・クラムっぽい。クラムは癌で死んだりしていないけど。
またしても癌で亡くなってしまうのですよね、本作のアクセルも。
弟の四十九日を終えても、目にする映画には癌で余命わずかの人ばかり。
原題の“Verdens Verste Menneske”はノルウェー語で、
直訳すると「世界でいちばん悪い人間」という意味なのだそう。
だけど、最悪ってこともない。こんな生き方、こんな自分。