夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ふれる。』

2024年10月13日 | 映画(は行)
『ふれる。』
監督:長井龍雪
声の出演:永瀬廉,坂東龍汰,前田拳太郎,白石晴香,石見舞菜香,
     皆川猿時,津田健次郎,江口拓也,大塚芳忠,平野文他
 
仕事帰りにイオンシネマ茨木にて2本ハシゴの1本目。公開初日でした。
 
『空の青さを知る人よ』(2019)の長井龍雪。
余談ですが、私はこの監督の名前を見ると必ず永井龍雲を思い出し、
その瞬間から頭の中で“道標(しるべ)ない旅”が回りはじめます。って、前にも書いていますね(笑)。
 
メインの声を担当するのが永瀬廉坂東龍汰前田拳太郎の3人。
私が認識できている顔は永瀬廉だけだなと思っていたけれど、あとの2人の出演作も観ているじゃあないか。
全国のTOHOシネマズでは舞台挨拶中継付きの上映回があるのを知り、
伊丹まで行こうかと思わなくもなかったのですが、ハシゴの都合でそれはパス。
 
子どもの頃、思いを口にすることが苦手だった小野寺秋は、暴力で体現しようとするため問題児扱いされていた。
そんなとき秋が見つけた不思議な生き物。ハリネズミのような風貌のそれは、古くから島に伝わる“ふれる”と呼ばれる生き物だった。
触れた者同士が手を繋ぐなどして互いの体に触れ合えば、口に出さずともお互いの心の声を聴けるのだ。
偶然にもふれるに触れた秋と祖父江諒と井ノ原優太は、以降お互いの気持ちを簡単にわかり合えるおかげで親友に。
 
20歳になった3人は、島を出て東京・高田馬場で共同生活を始めていた。
料理が得意な秋はみんなの食事をつくり、料理も出すバーでバイト。
不動産会社に就職した諒は、パワハラ上司のもと頭を下げてばかりの毎日。
デザイナー志望の優太は、服飾専門学校にかよっている。
 
ある日、女性がひったくりに遭う瞬間を見た秋は犯人を追いかけ、彼女の鞄を取り戻す。
いたく感激する彼女がお礼を言う間もないほどとっととその場を去る秋。
後日、秋の住まいを探し出したその女性・浅川奈南(なな)が親友の鴨沢樹里と共に来訪。
 
3人が住む一軒家に部屋が余っていることを知り、奈南と樹里はしばらく同居させてほしいと言う。
なんでも奈南はストーカーに狙われているらしく、ここなら安全だろうと。
安請け合いをする諒にむっとしながらもその話を受け入れる秋。
一方の優太は以前同じ服飾専門学校にかよっていたという奈南にぞっこんで……。
 
秋の視点の物語です。
上手く話せないせいで友達がいないどころか誰からも遠ざけられていた秋。
ふれるのおかげで親友になった諒と優太は、秋にとって非の打ち所のない人物たち。
私はこの時点でちょっとした違和感をおぼえました。
だって、ふれるが現れるまでは、諒も優太もいじめとまでは行かずとも秋を執拗にからかっていたのですから。
そんなふたりが悪い感情を微塵も持たない人物とは考えづらい。
 
話が進んでみれば、やはりそうではなかったことがわかります。
ふれるは、人の心を伝える役目を果たしてくれているけれど、実は良い感情と悪い感情をふるいにかけている。
嫉妬などの気持ちは伝えないばかりか、相手が聞きたくないであろう気持ちは伝えない。
それが悪い感情ではなくて、「あの子のことが好き」だとか、「あいつと俺、つきあっているから」みたいなことでも。
 
聞きたくないことがいっさい入ってこないのですから、相手のことを出来た人物だと考える。
本当は腹黒い感情が渦巻いていることだってあるのに。
自分にとって都合の悪いことを聞かずに済むならつきあいは楽だ。
 
面白い設定だとは思いましたが、私はちょっとイライラ。
「言わなわからん」が信条のせいか、言わずにわかってもらおうという魂胆が嫌(笑)。
どれだけわかってくれていると思ったとしても、実はそうじゃなかったなんてこと、なんぼでもある。
わかってくれていると思いすぎるのはどうかと思うし、自分が相手のことを全部わかっていると思うのは傲慢だと思う。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする