『ロボット・ドリームズ』(原題:Robot Dreams)
監督:パブロ・ベルヘル
テアトル梅田にて、前述の『コール・ミー・ダンサー』の後に観ました。
無声映画というわけではないけれど、台詞はゼロに等しいスペイン/フランスのアニメ作品。
第96回アカデミー賞長編アニメ賞にノミネートされたほか、数々の映画賞を受賞しています。
ひとり暮らしの犬・ドッグは、ふと寂しさを感じていたときに目にしたCMに驚喜。
これこそ自分が求めているものだと「友達ロボット」を購入する。
数日後到着したロボットを組み立てて電源を入れると、まさにロボットは理想的な存在。
一緒にテレビを観て食事をして、買い物に出かけたり遊びに行ったり。
今まで知らなかった「誰かと共に過ごす日々」の楽しさをドッグは満喫する。
夏の終わり、ビーチに出かけたドッグとロボットは海水浴に大はしゃぎ。
ところがいざ帰ろうとしたとき、ロボットが錆びて動かなくなってしまう。
家に連れ帰ろうにも鉄の塊のロボットをドッグひとりでは動かすことができない。
いったん帰宅した翌朝、ロボット修理の本を買い込んだドッグは再びビーチに向かうが、
昨日でビーチは閉鎖されて扉には鎖がかけられている。
役所に事情を話に行ってもあっけなく却下されただけ。
工具を用いて鎖を切ろうとしていたところを警備員に見つかってお縄状態に。
釈放後もロボットを救出する方法はなく、来年の海開きの日まで待つことにするのだが……。
今年観た海外アニメ作品の中でいちばん好きだったかもしれません。
ただ、感動的なハッピーエンドにはならないから、そういう展開を求めている人には向かない。
来る日も来る日もドッグはロボットだけのことを考えているわけではない。
頭の片隅にロボットのことを置きつつ、ほかに友達を探したりもします。
日々の暮らしが暗くなる一方でもなく、それなりに楽しんでいる様子。
一方のロボットは、ビーチで動けずに横たわったままだけど、意識はある。
舟で乗りつけた奴が助けてくれるのかと思いきや足をもぎとられます。
だけどロボットの陰に巣を作って産卵した鳥は、ロボットに感謝の意を表してくれる。
生まれたばかりの鳥の子もロボットのことが大好き。
大切な人と共に過ごせなくなったとしても絶望的ではないし、生きていけないわけでもない。
それどころか周囲にはいくらでも愉快なことが溢れているわけです。
人生を楽しむ術はたくさんあって、だけど、ふと思い出すその人のこと。
台詞はないのに、目の動きだけでわかる心の裡を思うと切なくて、何度か泣きそうになりました。
音楽も素晴らしい。
アース・ウィンド・アンド・ ファイアーの“September”がこれほど効果的に使われていた作品は、
『最強のふたり』(2011)以来です。