夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ぼくとパパ、約束の週末』

2024年12月03日 | 映画(は行)
『ぼくとパパ、約束の週末』(原題:Wochenendrebellen)
監督:マルク・ローテムント
出演:フロリアン・ダーヴィト・フィッツ,セシリオ・アンドレセン,アイリン・テツェル,
   ヨアヒム・クロール,ペトラ・マリー・カミーン,レスリー・マルトン他
 
『UTADA UNITED 2006』【ライブ音響上映】の後、同じくなんばパークスシネマにて。
 
『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』(2017)のマルク・ローテムント監督によるドイツ作品。
私はこの監督がやっぱり好きだと確信する1本となりました。実話に基づく。
 
ミルコとファティメの間に生まれた息子ジェイソンは、幼いときに自閉症と診断される。
音に敏感、冗談が通じない、他者となじむのは難しいなどなど医師から言われる一方で、
なんらかの分野において特別な能力を発揮することもあるという。
 
独自のルーティンやルールを持つジェイソンは、それが少しでも乱されるとパニックに陥る。
ただ、宇宙への興味は尽きることなく、量子学に際立った才能を見せるが、
いくら惑星について詳しくても同級生たちには理解できないからジェイソンをからかうだけ。
 
あるとき、同級生から好きなサッカーチームを問われたジェイソンは、お気に入りのチームを見つけようと考える。
そのためには、ドイツ国内56チームすべてを現地で観戦しなければならないと言い、
仕事仕事で忙しい父親ミルコに土曜日毎にスタジアムを巡る約束をさせるのだが……。
 
ジェイソンが自閉症と診断されたときに、この子のために全力を尽くすと決めた両親。
しかし実際のところは仕事を辞めたファティメのワンオペに近い状態。
もうひとり子どもが生まれて手がかかるようになっても、ミルコは仕事で家を空けること多数。
息子と家族のために稼がなければならないというのが建前ですが、
ジェイソンの相手をするよりも仕事をしているほうが楽だというのが本音です。
 
ジェイソンとふたりきりで出かけるようになって、初めてわかる妻の苦労。
列車内の食堂に入れば、トマトソースのパスタを頼み、パスタとソースを分けるようにオーダーするジェイソン。
パスタにわずかにソースが付いただけで気も狂わんばかりに怒ります。
それを見たほかの乗客は躾がなっていないとミルコに冷たい目を向ける。
息子のことを愛しているのは間違いない。けれど、自分の手に余ると思いはじめます。
 
スタジアムにはジェイソンの苦手とすることが多数。
触れられるのが嫌いなのに接触は避けられないし、そこらじゅうに雑音が溢れています。
また、ジェイソンの中ではサステナビリティ(持続可能性)の重要性が高い。
トイレだったりエレベーターだったり、どれも試してみないことにはスタジアムを去れません。
無駄なマスコットがいたり、円陣を組んだり、選手の靴下の色が微妙に違って揃っていなかったりするのもアウト。
 
どうであろうが孫は孫だとあたふたしない祖父母、特に祖父が○。
そしてミルコが勤務する全国展開のファストフード会社の女社長がサイコーです。
 
宇宙物理学を究めたいというジェイソン。それが夢ではなくなる日もきっと近い。
モデルとなった本物の一家もエンドロールに登場します。美少年で目が釘付け。
ヨーロッパには全部で21万5千のサッカーチームが存在するそうな。
父子のスタジアム巡りの旅は今も続いているとのことです。

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『UTADA UNITED 2006』【ライブ音響上映】

2024年12月03日 | 映画(あ行)
宇多田ヒカルがデビュー25周年を迎えたそうです。
それを記念して“HIKARU UTADA LIVE CHRONICLES in cinema”と称し、
なんばパークスシネマでライブ音響上映がおこなわれました。
1999年4月のファーストライブから今年の最新ライブまで、9つのライブを一挙上映するという企画です。
 
宇多田ヒカルといえば、デビュー直後にが連絡してきて、
どえりゃー歌手が出てきたから聴いて!とのこと。
知ってるっちゅうねん!と返事をした思い出があります。
 
ちなみに「ライブ音響上映」とは、映画館にライブコンサート向けの音響機材を持ち込んでセッティング。
発声、拍手、手拍子、ペンライトもOKだから、ライブの臨場感そのままというのがウリ。
けど、みんなどこかしら照れがあるのか、控えめに手拍子をしている人が少々いるくらいです。
派手に掛け声が飛ぶ応援上映体験者だと、えっ、なんでこんなにおとなしいの!?と思うかも。
 
みんなおとなしいライブ音響上映ではあるのですが、誰もが楽しそう。
私の前列に座っていた若者男子3人組もウキウキしている様子で肩を揺らしているし、
数席離れたところのおじさまは曲が終わるたびに拍手していました。
 
ライブ音響上映は腹に響くほどの音です。
手拍子したとしても、それが映像の中の音なのか、いま劇場で発せられている音なのか判断しにくいぐらい。
 
私は宇多田ヒカルのことが好きか嫌いかと聞かれたら断然好きですが、ファンというにはほど遠く、
知っている曲もBTSのように2曲だけではないものの(笑)、どの曲もわかるとは言いがたい。
でもほとんど知っている曲でしたねぇ。
 
小坂明子の“あなた”が実体験に基づく曲だと知ったときはドン引きしたけれど(すみません)、
宇多田ヒカルが“First Love”を15歳かそこらで作ったというのはすごいなぁと思う。
アンコールはもちろん“Automatic”で。
弟が「どえりゃー歌手が出てきた」と連絡してきたのはもちろんこのアルバムのときだから、
聴きながらちょっと涙ぐんでしまいました。
 
会場にお誕生日の客がいるとかで、「お誕生日おめでとう」と叫ぶヒッキー。
「生まれてきたことと、いま生きていることに感謝しよう」。
今はもうこの世にいない弟だけど、「観てきたで」と報告したのでした。
 
2006年のこのライブ映像しか観られなかったけど、今後またこんな記念上映があるのなら、
そのときはほかの年のライブも観たいと思っています。すごく良かった。

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