夜な夜なシネマ

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『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』

2025年03月10日 | 映画(は行)
『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』
監督:木村真人
出演:八木勇征,井上祐貴,櫻井海音,椿泰我,カンニング竹山,阿部亮平,
   高橋洋,馬渕英里何,平野宏周,工藤美桜,笹野高史,田辺誠一他
 
私の友だちの中でいちばん年上だった人が亡くなりました。
ステージ4の膵臓がんで闘病中だったけど一度も寝込むことなく、まだまだ大丈夫と思っていたら、旅先で。
悲しみに暮れつつも彼女の笑顔しか思い出せず、楽しかったことばかり頭の中をめぐる。
 
そんな彼女は、私のと同じく、私の予定を変えなくていい日程で亡くなったとしか思えない。
お通夜も告別式も私の予定を避けるかのような日程で、「行っておいで〜」と言ってくれているかのよう。
告別式の後、私は喪服から普段着に着替えてなんばへ。NGKの前にTOHOシネマズなんばにて映画を1本。
 
原作は鈴木おさむの同名朗読劇なのだそうです。
アイドル起用の若い子向け映画だと思ってナメていたのに、不覚にも泣いてしまいました。(^o^;
 
山間の小さな村に生まれ育った高校3年生の男子4人、アキト(八木勇征)、ハルヒ(井上祐貴)、ナツキ(櫻井海音)、ユキオ(椿泰我)。
今年18歳を迎える彼らは、村の長老・テツ爺(笹野高史)に呼び出され、村の秘密を打ち明けられる。
 
その秘密とは、村に生まれた男子は全員、18歳になると1回だけ魔法が使えるというもの。
ただし使えるのは20歳までの間の2年間で、命に関わることに使うのは禁止という条件付き。
命に関わることに魔法を使うと、村に不幸が訪れるというのだ。
 
魔法が使えるだなんてあり得ないと最初は笑って聞いていた4人だが、真面目な顔のテツ爺を見て押し黙る。
自分たちより上の世代の者は皆それを知っているし、男性は全員通ってきた道らしい。
 
帰宅後に「秘密を聞いてきた」と親に話すと、反応はさまざま。
しかし一様にして、後悔のない使い方をするように言われているように思う。
4人は魔法の使い道について話し合う機会を設けるのだが……。
 
親友同士の4人ですが、将来の夢はそりゃマチマチ。
楽器店の息子アキトは東京の芸大に進学してピアニストになりたい。
ハルヒは生まれつき心臓に疾患があります。
造園業を営む父親のもとに生まれたナツキはサッカー選手になりたかった。
村のダム開発に携わった父親を持つユキオは工作が大好き。
 
魔法を何に使いたいかを明かすのは気恥ずかしい彼らは、最初は他愛のない願いについて話します。
イクラの食感が嫌いだからそれがなくなってほしいとか、グリーンピースの苦みが消えてほしいとか。
この辺りは無邪気で可愛いのですが、それを聞いていたナツキが突然ブチ切れ、
みんなもっと自分の欲に素直になれよと出て行ってしまいます。彼が無邪気ではいられない理由がそこにはあって。
 
命に関わることに使うのは禁止だと聞いて、私は「誰某に死んでほしい」とかいうのが駄目なんだと思ったら、
誰かの命を救いたいというのが駄目なんですね。私のなんと邪悪な気持ち(笑)。
かつて誰かが誰かを救おうとしたことで村が不幸に見舞われたというのは、
決まっている運命を人がいじることには代償がつきものなのでしょうか。天命ってあるのかなって。
 
泣いてしまったのは、「人が死ぬということにはちゃんと意味がある」という台詞を聞いたときです。
短命の人、長寿の人、命にはさまざまな長さがあるけれど、どの死にも意味がある。
 
魔法を使ったら、何に魔法を使ったかを歴代の人々が記してきたノート。
そこに溢れていたのは誰かの幸せを願うものばかり。
 
小さな幸せに気づくということ。

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