『ロスト・キング 500年越しの運命』(原題:The Lost King)
監督:スティーヴン・フリアーズ
出演:サリー・ホーキンス,スティーヴ・クーガン,ハリー・ロイド,マーク・アディ
リー・イングルビー,ジェームズ・フリート,ブルース・ファメイ,アマンダ・アビントン他
仕事帰りにシュッと行ける劇場で上映してくれていたらありがたかったけど、
本作を観るにはなんばか西宮まで行くしかありません。遠いなぁ。
でもどうしても観たかったから、意を決してTOHOシネマズ西宮へと向かいました。
スティーヴン・フリアーズ監督は、実在の人物を取り上げた物語を撮るのがお得意。
『疑惑のチャンピオン』(2015)とか『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(2016)とか、どれも佳作。
私はかつてジョン・キューザックが好きだったから、『ハイ・フィデリティ』(2000)からの監督ファン。
これまた衝撃の実話に基づく。
500年以上もの間みつからなかったリチャード三世の遺骨を普通の主婦が発見したという話。
その主婦役を『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)のサリー・ホーキンスが演じ、
彼女の夫役のスティーヴ・クーガンがプロデューサーとしても名を連ねています。
フィリッパ・ラングレーは夫のジョンと別居中。
持病のあるフィリッパと息子たちのことを気にかけてジョンはしょっちゅう家に寄ってくれるが、
家庭もこんなふうだわ、仕事も上手く行かないわで落ち込むことばかり。
ある日、息子たちと共に『リチャード三世』を観劇した彼女は、
本物のリチャード三世がはたしてシェイクスピアが描いたような王だったのか疑問を抱く。
本を読み漁ったフィリッパは、“リチャード三世協会”という組織の存在を知って参加。
それはいわばファンクラブのようなもので、一般的に冷酷非情なイメージのある王について、
本当はそうではないとメンバーたちは確信している。
彼らと談義を交わすにつれてリチャード三世に親愛の情を持ちはじめたフィリッパが
王の墓参りをしたいとつぶやくと、それは無理だと皆から言われる。
なぜならば、王の遺骨はいまだ発見されず、埋葬できないから墓がないのだと。
なんとしてでもリチャード三世の遺骨をみつけて正当な評価を受けてほしい。
そう考えたフィリッパは、専門家にコンタクトを試みて資金を集めようとするが、
アマチュアの中年女性の言うことに耳を傾けようとする人はほとんどおらず……。
フリアーズ監督は実話を基に巧みにファンタジーも織り込む。
本作ではフィリッパの目の前にイケメンのリチャード三世が現れます。
執念と直感で遺骨を発見したと言われるフィリッパ。その直感の部分がこんなふうに表される。
腹立たしいのは研究者や大学の面々。
終始フィリッパのことを見下していて、金もろくに差し出さなかったくせに、
本当に遺骨が出てきそうだとなると大きな顔をして手柄を横取り。
世の中こんなもんだなぁと思わずにはいられません。おまえら、恥ずかしくないのかよ。
そんななかで、別居中でも良き夫のジョンとわんぱくな息子たちはフィリッパの心強い応援団。
ふだんはクソババァ呼ばわりする息子たちに応援されるとさぞ嬉しかろう。
シェイクスピアが書けばいかなる人も悪人になるのか。
容姿が悪けりゃ性格も悪いなんてことは、断じてない。