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『型破りな教室』

2025年01月16日 | 映画(か行)
『型破りな教室』(原題:Radical)
監督:クリストファー・ザラ
出演:エウヘニオ・デルベス,ダニエル・ハダッド,ヒルベルト・バラーサ,ヴィクター・エストラーダ,
   ジェニファー・トレホ,ミア・フェルナンダ・ソリス,ダニーロ・グアルディオラ他

新年、仕事帰りに2本ハシゴするのは初めてです。テアトル梅田にて。

本国メキシコのみならず全米でも大ヒットしたという作品。2011年の実話に基づく
「感動」という言葉はあまり安易に使いたくはないですが、感動的な話であることはまちがいありません。
主演は『コーダ あいのうた』(2021)で音楽教師役を演じたエウヘニオ・デルベス。教師役がよく似合う。

メキシコ東部のタマウリパス州、アメリカとメキシコの国境に位置するマタモロス。
銃声が鳴り響くのは日常茶飯事、まともな職に就くのは不可能、治安最悪の町

そんな町にあるホセ・ウルビナ・ロペス小学校は、学力テストで国内最下位にランキング。
校長のチュチョをはじめとする教師たちはなんとか状況を打破したいが、どうにもなりそうにない。

教師に欠員が出て、新しく着任したのはセルヒオ・フアレス・コレア。
この学校に希望してやってくるなんて正気の沙汰ではないとは思われていたが、セルヒオは堂々の変わり者。

そもそも進学など考えられる家庭環境ではない児童たちのほとんどは、登校してもやる気なし。
特に不良の兄貴分を持つ少年ニコは、自分も早く学校を辞めて「仕事」を任されたくてたまらない。
一方、ゴミ山の向かいに建つ家で父親と二人暮らしの少女パロマは、本当は勉強が大好きで、
宇宙工学を学んで将来宇宙飛行士になりたいと思っているが、学校では何事にも興味のないふりをして過ごしている。

セルヒオは着任初日にまずは机を使わない授業を始め、児童たちに浮力とは何かを問う。
これまでとはまったく違う先生の登場に児童らは驚くと共に面白がり、授業を熱心に聴くようになる。

ほかの教師たちはセルヒオのやり方に否定的。
セルヒオがいったい何をやりたいのかを理解しかねるチュチョが問いただすと、セルヒオが言うには、
子どもたちは馬鹿じゃない、子どもたちの可能性を信じて、子どもたち自身にやりたいことを考えさせるべきだと。
半信半疑だったチュチョも、セルヒオに任せてみようと思い……。

セルヒオの授業方法は彼独自が編み出したわけではなく、悪い言い方をすれば、動画で知ったほかの教育者の受け売りです。
しかし子どもたちを見る目は確かで、子どもたちの能力が彼によって引き出される。
自分に勉強などできるわけがないと思っていた子どもたちがセルヒオから疑問を投げかけられることにより関心を持ち、
自分たちで調べて結論を導き出そうとします。それがわかったときの子どもたちの破顔が最高。

哲学に興味を持った少女ルペが自分の学校の図書室で本を借りようとするも、
司書を務める教師から「小学生が読むには早すぎる」と断られます。
致し方なく大学の図書館に足を踏み入れてみると、そこではルペのことをちゃんと図書館利用者として扱い、
哲学書の棚に案内してくれるし、借りようとする本についても笑ったりしない。
子どもの可能性を最初から否定しては駄目なのだと強く思わされます。

巻き込まれる校長チュチョも愛すべき人柄で、彼とセルヒオのやりとりにはしばしばふきだす。
それにひきかえ、偉そうに振る舞うお役人の腹立たしいこと。
学力テストを事前に受け取るための収賄もあって、おまえら全員いっぺん死ねと言いたくなりました。

実際にパロマがメキシコの学力テストで1位を取り、大変な騒ぎに。次代を担う人として話題に。
セルヒオ先生が今も同小学校で教鞭を執っているのが嬉しいですね。

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