『今夜、世界からこの恋が消えても』
監督:三木孝浩
出演:道枝駿佑,福本莉子,古川琴音,松本穂香,野間口徹,野波麻帆,水野真紀,萩原聖人他
全館停電じゃなくて節電で半強制的に職員みんな有給で休みを取らされる日、
朝からクロス張替えのため、業者さんに来てもらいました。早々に終了して、さてどうする私。
家に居たって暑いだけ。やっぱり映画を観に行くことにして、TOHOシネマズ西宮へ。
しかし、時間的にちょうど良い本作にちっとも惹かれない。
三木孝浩監督作品にイマイチ惹かれるものもなければ、
最近超売れっ子の福本莉子の出演作も、若すぎて観ていて恥ずかしくなることが多い。
きっとまたそうなるよなぁと思いながらテンション低めで臨んだのですけれど。
意外によかった。
妻を失った気持ちに整理をつけられずにいる父親は、
仕事を辞めては作家を目指すということを繰り返しているが、全然駄目。
ある日、透はいじめに遭っている友人を救うため、いじめっ子たちの条件を聞く。
その条件とは、学校で人気のある女子、日野真織(福本莉子)にコクるというもの。
話したことすらない真織に「つきあってほしい」と言いさえすればいじめをやめるというのだ。
透がフラれる瞬間を動画に収めようと待ち構えていたいじめっ子たちだったが、
なんと真織は透にOKの返事をする。驚く透に真織は恋人のふりをしようと提案。
放課後までは校内ですれ違ってもお互いに話しかけないこと。LINEは簡潔に。
そしてあくまで恋人のふり、決して本気にはならないこと。
このルールを守ってつきあっているふりをすることになったふたり。
なんだかんだで楽しい日々を過ごしていたが、透はあるとき真織から秘密を明かされる。
実は真織は事故の後遺症で前向性健忘という記憶障害を起こしており、
一度眠ってしまうと、目覚めたときには前日のことをすべて忘れていて……。
寝たら前日のことをいっさい忘れているって『50回目のファーストキス』(2018)のまんまじゃないですか。
だから、二番煎じどころか何番煎じやねんと思って、ちっとも期待できませんでした。
記憶障害のある女子とそれを支える男子の恋愛もの、それ以外に予想できず。
ところが予想に反して意外といいと思ったのは、彼女だけが主役ではないということ。
いつまでも立ち直れない父親を見守る透、そして父親と透を残して家を出た姉(松本穂香)。
家族以外では唯一真織の秘密を知っていた親友の綿谷泉(古川琴音)。
それぞれに大きな葛藤があります。
ふたりがつきあい始めてから真織が事故に遭うのかと思っていたら、
透から「つきあってほしい」と言われた時点で真織は記憶障害を起こしており、
自分の毎日が透とつきあうことで変われば面白いと思っているわけです。
毎日必ず日記を書き、翌朝目覚めるとすぐにその日記を読んで昨日までの私をおさらいする。
自分が記憶障害を患っていることを誰にも知られずに学校生活を送るなんて、実際には無理だと思えますが、
本当にこんな人だっているのかもしれませんね。
彼女の日記を楽しいことで埋めたい。その彼の気持ちが切ない。
お互い本気にはならないと決めていたルールを破ることになるのは当然ですが(笑)、
とても素敵なキスシーンでした。
気乗りしないながらも観に行ってよかったです。
やっぱり、観てみなわからんもんやなぁ。