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『#彼女が死んだ』

2025年01月29日 | 映画(か行)
『#彼女が死んだ』(英題:Following)
監督:キム・セフィ
出演:ピョン・ヨハン,シン・ヘソン,イ・エル,パク・イェニ,ユン・ビョンヒ,パク・ミョンフン他
 
前述の『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』の次に、同じくキノシネマ心斎橋にて。
よその劇場ではなかなかかからない韓国作品を上映してくれるのは、前身のシネマート心斎橋と同じで嬉しい。
新調された座席は少し後傾していて以前よりも観やすくなっています。
 
監督は本作が長編デビューとなるキム・セフィ。
主演のピョン・ヨハンは『太陽は動かない』(2020)にも出演していた俳優だけど、
TVドラマで主に活躍している人らしく、私の頭の中には残念ながら記憶なし。
 
韓国には不動産公認仲介士という国家資格があるのですね。
「韓国には」と書きましたが、不動産業について何も知らない私は、類似資格が日本にもあるのかどうか知りません。
ただ、聞いたことのない資格の名前だったので、韓国特有のものなのかなと思っただけです。
とにかく、この資格がなければ不動産取引の仲介ができないらしい。
 
本作を観るかぎりでどんなことをする資格なのかを推察すると、
たとえば自分が所有している物件を誰かに貸したいとき、この不動産公認仲介士なる者を通して貸します。
↑これだけが理解に至ったことですが、鑑賞後にネットで調べたら、この仲介手数料がかなり高額で、
公認仲介士の資格を取って数件仲介すれば、大企業に勤務する人と同程度の年収が稼げるそうな。
 
さて、本作の主人公ク・ジョンテ(ピョン・ヨハン)はそんな不動産公認仲介士。
いま若者たちに人気のこの資格について指南する彼のホームページも大人気。
 
そんな彼の決して人に言えない楽しみは、仲介した部屋の大家から預かった鍵を使って住人の留守中に忍び込むこと。
私生活を覗き見した代わりに、ネジの緩んだ箇所を締め直したり水道の詰まりを直したりして退室する。
また、部屋の中を見回してどう考えても不要であろうものをひとつ頂戴してコレクションにしている。
 
おかげで仲介物件の住人のことはたいてい知っているジョンテだったが、まだ何の情報も得ていない気になる女性が近所にいる。
彼女はインフルエンサーのハン・ソラらしく、彼女の私生活が知りたくてたまらない。
どうにか部屋に忍び込む方法がないかと考えあぐねていたところ、なんと彼女のほうからジョンテの事務所にやってくる。
 
ソラが言うには、仕事の都合で町を離れることになったから、部屋を賃貸に出したいと。
大家の了解は得ているのでこの場でジョンテに鍵を渡して後は任せると。
躍りたいほど嬉しい気持ちを隠して鍵を預かったジョンテは、その日からソラの留守を狙って数度侵入。
彼女の私生活に触れて満足感を味わう。
 
ある日、いつものように覗き見のためにソラの部屋に入ると、ソファに横たわったソラが惨殺されていた。
すぐに警察に通報すべきだが、そうすれば自分の不法侵入がバレてしまう。
慌ててその場を去ったジョンテは、賃貸物件を探している途中のカップルに直ちに連絡。
内見に案内するふりをしてそのカップルを先に部屋に入らせ、ソラの遺体を発見させようとするが、
血まみれだったソラの遺体が綺麗さっぱりなくなっているではないか。
 
同じ頃、ソラの親友だというやはりインフルエンサーのホルギが警察へ出向き、ソラと連絡が取れなくなっていることを告げる。
担当した刑事のオ・ヨンジュがソラの部屋を訪れてみると、ソファの下にわずかな血痕が。
事件としての捜査が始まり、ソラの部屋を仲介するジョンテのもとへもヨンジュがやってきて……。
 
以下ネタバレです。
 
とても面白かったですが、気持ちのよい話ではありません。
『ターゲット 出品者は殺人鬼』(2023)でつけ狙われるヒロインを演じたシン・ヘソンが、
本作でもストーキングされる側と見せかけてその実、身も凍りそうな殺人鬼
 
インフルエンサーとしてもてはやされたいがために、食べてもいない「映えるもの」を食べているように見せかけ、
行ってもいないところに行っているように、持ってもいないものを持っているように撮ってSNSに挙げる。
犬や猫の保護に努めているふりをして募金を促しているけれど、見せる役目が終わった動物は無残に殺すという冷酷さ。
自分の悪行をジョンテに見られたと思い込むソラは、彼を罠にはめることを思いつくわけです。
 
ソラのおこないはもちろんおぞましいけれど、覗き見の趣味があるジョンテだって褒められたものではありません。
応援したくなるのはイ・エル(美人!)演じる女刑事のヨンジュぐらいですかねぇ。
彼女は志願して刑事部に配属されたのに、女だからと仕事を振ってもらえない。
逮捕のお膳立てまではさせられても、手柄は全部男どもに持っていかれます。
行方不明のインフルエンサー探しもたいしたことのない話だろうと思っていたら、これがこんな事件で。
濡れ衣を着せられるところだったジョンテがお礼を言いに来たとき、彼に放つヨンジュの言葉が刺さります。
 
自分は被害者ではないということを肝に命じよ。

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