2023年1月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3541ページ
ナイス数:824ナイス
■クジラアタマの王様 (新潮文庫)
読み初めは伊坂幸太郎と決めて、いそいそ頁を開く。前半はニヤニヤしながらグイグイ先へと進んでいたのに、格付けチェックやらドリーム東西ネタ合戦やらをつけたらそちらに神経が行って集中できず。但し、最後はやっぱりいつものとおり、あの人ともこの人とも繋がってジワ〜ンと沁みる。伊坂さんまでこんなにコロナに寄せるのかと思ったけれど、それより前の作品だったのですね。今日の私たちのために、夢の向こうで踏ん張ってくれている人がいるのかもしれない。巻き込まれるかもしれなくても行く。何かあってから考えればいい。その考え方が好き。
読了日:01月03日 著者:伊坂 幸太郎
■騒がしい楽園 (朝日文庫)
年末に同著者の旧作を読んだばかりですが、新年も中山七里を読まずば明けた気がしない。車通勤の私は、通勤ラッシュ時の女性専用車両がそんなことになっているとは知らず驚愕。敵は多かろう舞子先生、誰にも媚びない姿勢が私は好き。しかし次は霊長類と聞いて、まさか子どもは殺さないだろうと思っていたのに、七里センセ、鬼(泣)。その描写はなかったのが救い。騒音と待機児童という社会問題を扱っているのは著者らしくて面白いものの、期待値が高いせいか犯人もその動機もショボく感じてしまいます。連続刊行作品中に大当たりがありますように。
読了日:01月05日 著者:中山 七里
■このゴミは収集できません (角川文庫)
私が結婚するとき、母から言われた唯一のことは、「ゴミの出し方には『人』が出るから気をつけや」でした。昨年末、ネットニュースで、缶が見事に潰されている画像の提供者がお笑い芸人でゴミ清掃人であり、本も書いていることを知りました。母の話を思い出しながら読んだら、めちゃめちゃ面白い。ゴミを見ればその暮らしぶりも人となりもわかるのは本当なんですね。悲しいかな貧乏人は貧乏人の姿がゴミの中に表れる。文才のない私が言うのもなんですが、この人、文才ありますよねぇ。三島由紀夫が割腹するような覚悟で私も断酒するか。しないけど。
読了日:01月09日 著者:滝沢 秀一
■廃墟の白墨 (光文社文庫)
まったくもって暗い。遠田潤子が紡ぐ物語はいつも凄絶で暗い。なのに吸い寄せられるように読み始めてしまうのです。病床の父親宛てに届いた手紙を無視できず、指定された場所に出向く息子。そこにはかつて父親と同じビルに住んでいた男たちが集まっていて、その全員が最上階に住む艶めかしい大家と寝ていたという。大家の惚れ込む男をクズだと言うけれど、ほかの男たちだってクズ。大家の幼かった娘の心配をしたところで罪滅ぼしにはならない。誰も好きになれないのに読むのをやめられません。償おうにも償う相手がこの世にもういないとは。苦しい。
読了日:01月12日 著者:遠田潤子
■一匹羊 (光文社文庫)
山本幸久の何を最初に読んだのだったか。『ある日、アヒルバス』だったか『男は敵、女はもっと敵』のどちらかだったように思います。どハマりして大人買いしたけれど、読み切れず積んだままになっていたもの多数。久しぶりに読んでみたら、ハマったときほどの面白さは感じない。だけどやっぱり落ち着ける。突飛なことは何もない、私を含めてその辺に居そうな人たちの、日々の些細な不満。そしてそれをほんの少しだけ向こうに吹き飛ばしてくれるささやかな幸せ。読み終わった後に頭の中に流れるのは、第一章のせいで本文とはあまり合わない石野真子。
読了日:01月13日 著者:山本 幸久
■ミスコン女王が殺された (創元推理文庫)
このシリーズに関しては、必ず1作目から順に読むことをお勧めします。ってまだ私もやっと2作目を読んだところですけれど。楽しい。すごく楽しい。CIAの凄腕エージェントでありながら、訳あって田舎町で身を潜めなければならなくなったフォーチュン。まったく興味のないメイクやファッションを覚えるはめになっても、いざというときにはエージェントの血を隠せません。町のどんな男も伸してしまえそうな彼女にとって唯一手強い保安官カーターとの行く末も楽しみ。全然違うのに、なぜか“よろず建物因縁帳”の春菜と仙龍を思い出してすみません。
読了日:01月19日 著者:ジャナ・デリオン
■噓つきは殺人鬼の始まり SNS採用調査員の事件ファイル (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
面白いけど嫌な話を書く、そんなイメージのある作家です。本作も何がどうなるのか先が読めず、真相がわかったときには中山七里のドンデン返し並に驚きました。就活生のSNSの裏アカを特定して企業に報告する探偵。彼のせいで内定を取り消された大学生。このふたりがコンビを組むようになるのがたまたまのことではなかったなんて。血も涙もないと思われた借金取りのオッサンのまさかの活躍に胸を熱くしていたのに、こんなラストはアンマリだ~(泣)。ところで「行けたら行く」はやはり断りの文句なんですかね。言葉通りの意味で使う人、好きかも。
読了日:01月24日 著者:佐藤 青南
■神様ゲーム (講談社文庫)
この表紙ならもう少し身構えて読み始めたと思うのですが、今は二重表紙になっていて、子どもがクレヨンで描いた絵。小学生たちが探偵まがいのことをして犯人を引っ捕らえる話を想像していたらとんでもない。猫は切り刻まれるわ、複数の子どもが死ぬわ、内ひとりは『サスペリア』かと思うような串刺し状態、トラウマ級の殺され方。誰の悪もすべてお見通しの「神様」=鈴木くんが天誅を下す。鈴木くんっていったい何者なんでしょか。片想い相手の女の子が主人公少年の父親とデキているかもしれないなんておぞましすぎる。小学生だっちゅうの。ビビる。
読了日:01月26日 著者:麻耶 雄嵩
■旅のオチが見つからない おひとりさまのズタボロ世界一周! (MF comic essay)
「メキシコは怖いところだから気をつけて」と言われてメキシコに向かったスペイン語堪能な知人が、現地の空港で「大阪は怖いところだから用心しろ」というメキシコ人同士の会話を聞いたと言っていたのを思い出しながら読みました。私にはこんな旅は絶対にできないし、したくもないけれど、めちゃめちゃ楽しい。ふきだしてしまった箇所がいくつもあります。紹介されているお料理も美味しそうで惹かれる。博物館に勤務している私は、特にモンゴルの衣装に「あるよあるよ、この衣装」とウキウキしました。牛糞で焼いたマシュマロは食べたくない(笑)。
読了日:01月30日 著者:低橋
■誠実な嘘 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
京極夏彦も顔負けの750頁余、ぴったりのブックカバーは無いし、頁を開いて持っている手も辛い厚さ。いや、京極さんはもっと分厚いか。序盤はアガサの目的がわからず、単にメグに憧れているのかと思う。そのうち少し印象が変わり、今村夏子の『むらさきのスカートの女』に登場する黄色いカーディガンの女のような存在を想像。そういうことかとわかる頃には不気味さが募り、時折聞こえる闇の声に多重人格者を疑ったりも。誰のための秘密か。誰のための嘘か。タイトルが意味するところはイマイチ私にはピンと来ません。読み応えはあるけれど、不穏。
読了日:01月31日 著者:マイケル・ロボサム