『世界の終わりから』
監督:紀里谷和明
出演:伊東蒼,毎熊克哉,朝比奈彩,増田光桜,若林時英,岩井俊二,
市川由衣,又吉直樹,冨永愛,高橋克典,北村一輝,夏木マリ他
紀里谷和明監督はどうしても宇多田ヒカルの元旦那という印象が強い。
『CASSHERN』(2004)しか知らなくて見くびっていたら、
『ラスト・ナイツ』(2015)は意外に面白くて驚いたおぼえがあります。
しかしその『ラスト・ナイツ』が面白かったこともいつしか忘れてしまい、
本作もキリヤンか~、パス。とスルーしていました。
せっかくの水曜日、映画料金が安い日は何か観なきゃもったいない。
かと言って大阪市内や西宮まで遠征するのはしんどくて、
お手軽に109シネマズ箕面で観ようとすると、本作しかなかったのです。
でもまたこれが意外と面白くて、また謝りたくなりました。
ごめんよ、キリヤン。
幼い頃に事故で両親を亡くし、祖母に育てられた志門ハナ(伊東蒼)。
今その祖母まで亡くなり、どうやって生きていけばいいのかわからない。
17歳の女子高生である彼女がバイトで稼げる金はわずか。
祖母が残してくれた貯金もたいした額ではなく、すぐに底をつくだろう。
登校すればいじめっ子たちに金をせびられ、話せる相手は幼なじみのタケル(若林時英)のみ。
タケルから卒業後はどうするのかと尋ねられてイライラが募る。
ハナのもとへやってきて、最近「夢」を見なかったかと聞く。
江崎によれば、あと2週間でこの世界に終わりが来るらしい。
ハナが見た夢について話せばそれを防げる、世界を救えるのはハナしかいないと言われ……。
「私なんか」が口癖のハナ。
親も友だちもいなくて、お金もなくて、生きている意味もわからない。
だからといって死ぬ勇気もなく、毎日イジイジしているだけ。
そんな少女がいきなり世界の行方を委ねられたらどうしましょう。
いじめっ子の存在がものすごく腹立たしくて、
だから、ハナの護衛についた玲子がいじめっ子をしばくシーンは血が沸いた(笑)。
彼女と江崎の存在はハナにとってとても心強いものになります。
毎熊克哉は作品によって善人と悪人の差が大きすぎる。
そのおかげでイメージが固定されることなく、どちらの役でも安心して見ていられます。
本作では善人のほう。どうか彼は死なないでと思ったけれど。
官房長官役の高橋克典の悪いこと。政治家ってこんな感じだなぁ。
期待せずに観はじめたということもあるかもしれませんが、想像以上に面白かった。
安易なハッピーエンドではなく、むしろ悲しいエンディングなのに、
こうして人は生まれ変わり、繋がって行くんだよと言われているかのようで、
死ぬのは怖くないと思えました。観ている間だけはですけど。(^^;
出番は少なくもキーパーソンとなる冨永愛にも泣かされます。
思った以上に壮大なテーマの物語でした。