『オマージュ』(英題:Hommage)
監督:シン・スウォン
出演:イ・ジョンウン,クォン・ヘヒョ,タン・ジュンサン,イ・ジュシル他
シネ・リーブル梅田にて、前述の『コンペティション』とハシゴ。
期せずして映画作りについて描かれた作品を続けて観ることになりました。
監督として3本の映画を撮ったものの、スランプに陥っている。
公開中の監督作『幽霊人間』もまったく客が入っておらず、これが最後になるかも。
自分では稼げないから、サンウに生活費を入れてほしいと言っても無視されている。
そんな折、彼女に舞い込んだバイトの話。
それは、1960年代にはまだ珍しかった女性映画監督が撮った『女判事』という作品の修復作業。
フィルムは現存しているが、途中から音声が欠落しているらしい。
口の動きから音声を拾い、声優を雇って音声を吹き込む作業を開始したジワンは、
フィルムそのものに切り刻まれているシーンがあることに気づく。
このままでは作業を進めたところで不自然な作品になると考え、
『女判事』の監督ホン・ジェウォンや編集に関わった人々を探しはじめるのだが……。
本作はフィクションではありますが、『女判事』という作品は実在し、
そのモデルになった韓国で女性初の判事も実在するそうです。
女性監督が3本撮って業界を去ることになったことを自分と重ね合わせるジワン。
当時は女が映画を撮るなんてと思われていた時代。
また、切り刻まれたシーンには何が映っていたのかと思ったら、
女性がタバコを吸うところが映っているという理由でカットされていたんですね。
ジワンは『女判事』が上映されたはずの映画館に足を運ぶ。
そして廃業間際の映画館で失われたフィルムを見つけます。
いまだに家の中でも外でも「女の分際で」という気風が流れるなか、
ジワンと当時の映画編集者だった老婆が額を寄せ合って修復作業をおこなう姿が楽しそう。
モラハラかと思われる夫も、ジワンが倒れたときには優しさを見せます。
母親に理解を示し、いつも明るい息子に救われる。
ジワンが美人じゃないところもいいですよね(笑)。イ・ジョンウン、上手い。
不遇の時代に生きた人たちよ、やすらかに眠れ。