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『コンペティション』

2023年03月23日 | 映画(か行)
『コンペティション』(原題:Competencia Oficial)
監督:ガストン・ドゥプラット,マリアノ・コーン
出演:ペネロペ・クルス,アントニオ・バンデラス,オスカル・マルティネス,ホセ・ルイス・ゴメス,
   イレーネ・エスコラル,マノロ・ソロ,ナゴレ・アランブル,ピラール・カストロ,コルド・オラバリ他
 
最近、シネ・リーブル梅田に行くときはいつも車だったので、電車で向かうのは久しぶり。
阪急茶屋町出口から梅田スカイビルへの道がかなり変わっていてびっくり。
あちこちに「うめきた」の文字もあるけれど、全容をわかっていない私にはいまいちピンと来ない。
ただただ、劇場へ抜ける道が遠くなりませんようにと思うばかり(笑)。
 
アルゼンチン出身のガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン監督コンビによるスペイン/アルゼンチン作品。
同監督といえば『ル・コルビュジエの家』(2009)が強烈でした。
本作もそれに負けず劣らずのヘンテコぶりで、かつそれ以上にシニカル。
終盤のあるシーンでは声に出して「マジか!」と言ってしまいました。
 
一代で製薬会社を築き上げた大富豪ウンベルト・スアレスは、老いた今ふと考える。
自分には金はあるが、世間の目に自分はどう映っているのだろう。
世の中に貢献しているというイメージがほしい。そのために映画の製作資金を出そうと。
 
ノーベル文学賞の受賞作家の作品の映画化を一流監督に任せたい。
スアレスの秘書が推す監督は、変人だが天才肌の女流監督ローラ・クエバス。
ローラは主演に実力派の舞台俳優イバン・トレスと華のある映画俳優フェリックス・リベロを指名。
このふたりが因縁のある兄弟役を演じることに決定する。
 
リハーサルの初日。
本読みの1行目から細かい指示を出すローラにイバンとフェリックスは困惑気味。
ふたりのライバル意識とプライドも相まって先行きが心配されるのだが……。
 
金持ちの老人は、自分のイメージをよくできるものであれば何にでも金を出すつもり。
映画を作ると言い出した彼に秘書は「監督したいんですか」と尋ねます。
すると「監督できるわけがないだろ。資金を出すんだよ!」と怒鳴る。
そうか、一応、自分に映画監督ができると思っているわけじゃないんだ(笑)。
 
しかし、ウンベルトは自分が原作に選んだくせに、その本を読みもしていない。
ノーベル賞を取った作家の本だから大丈夫でしょ、僕は読んでないからさ、
アンタどんな話か説明してよと平然とローラに言います。
 
なんたら賞の受賞作品だから良いに決まっている。世間の評価はきっとそんなもの。
ウンベルトは自分のイメージアップのために、まさにイメージに囚われた作品選びをしているんですね。
 
主演の3人はいずれも実際にそういった賞の受賞歴がある人だから、
映画の中とはいえ、それを皮肉る台詞や行動てんこ盛りで大丈夫かと思うほど。
ローラ役がペネロペ・クルス、イバン役がオスカル・マルティネス、フェリックス役がアントニオ・バンデラスですからね。
 
ローラからリハーサル現場にトロフィーをいくつか持ってきてよと言われて、
イバンとフェリックスが厳選したトロフィーを持参したのに、
ぐるぐる巻きにされて身動き取れなくなったふたりの前でローラはトロフィーを粉砕。
そればかりかローラ自身が受賞した国際映画祭のトロフィーもぶっ壊します。
ヴェネツィアやらカンヌやら、ちゃんと映画祭の名前も出てきます。
 
可笑しいのは、「この映画でオスカーを取るかもね」とフェリックスから言われたイバンが
「あんな大衆的な賞に関わるのはごめんだ。金を貰っても要らん」みたいな返事をしつつ、
ひとりのときにこっそり受賞を妄想したスピーチの練習をしていること。
もしかすると多くの俳優が「賞をやると言われたら断るけれど、賞から無視されるのは嫌だ」と思っているのかも。
 
終始皮肉に満ちていて面白かった。この後どうなるかを観てみたいぐらい。
でも、ミニシアターでは映画を観ない人は「何この映画!?」となるはず。
私はこんなのもあんなのも、何でも楽しみたい。

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