夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『スマイル 聖夜の奇跡』

2008年06月10日 | 映画(さ行)
『スマイル 聖夜の奇跡』
監督:陣内孝則
出演:森山未來,加藤ローサ,田中好子,谷啓,高樹沙耶,
   森公美子,松重豊,モロ師岡,RIKIYA他

梅雨時に「聖夜」もないですが、
昨冬に公開された作品がDVD化されるのがちょうど今頃。
陣内孝則監督の一風変わったスポ根ものです。

プロのタップダンサーになる夢をあきらめた修平は、
北海道でフィギュアスケートのコーチを務めている恋人、静華のもとを訪れる。
ここの小学校で早くも教師の職にありついた修平は、
いきなり静華にプロポーズ。静華は喜んで受け入れる。

問題は静華の父親。
断固としてふたりの結婚を認めようとしないが、
もしも自分が所有する弱小少年アイスホッケーチーム“スマイラーズ”を
次の試合で勝たせることができれば、結婚を考えてやってもいいと言う。

アイスホッケーのルールなどもちろん知らない、
それどころかまともに滑ることもできない修平だったが、
静華と結婚したい一心で、大見得を切って引き受ける。

今まで勝ったことがないという“スマイラーズ”の少年たちに
やる気を持たせることに成功し、奇跡的に勝利。
ところが、静華の父親は「勝てば考えてやると言っただけ。
道大会で優勝すれば結婚を認めてやる」と言い出して……。

汗と涙にまみれて練習を積み重ねるスポ根ではありません。
そもそも“スマイラーズ”の少年たちは、それなりの力を持っていて、
単に人数がかつかつで、交代要員もゼロ。
4セット分の人員を持つ強豪チームと対戦すると、
開始5分後まではいい試合をするけれど、
そこからは息切れしてどうにもならず。
こんな少年たちに、タップを踊りながらハッパをかける修平の姿に、
笑えなくてシラけてしまう人も多いかも。

だけど、これは、大げさなギャグに乗った者勝ち。
少年たちはみんな、紛れもなくアイスホッケーが大好き。
それぞれが複雑な家庭環境の中で(グレているわけではない)、
家族との絆を形にしながら、育って行く様子はやはり熱い。

小学生の淡い恋心も巧く描かれています。
難病を患っているマドンナを、みんなで勇気づける姿に涙。
恋敵なのにそのマドンナの快復を心底願う男勝りの少女も◎。

陣内孝則の人脈なのか、友情出演メンバーがとっても豪華。
こんなところにこんな人が!の楽しみもいっぱい。
警備員役の寺島進は特にオススメ。

もしも死んでしまっても、生まれ変わったらきっと逢える。
そう信じたくなる一本です。

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『ダーウィン・アワード』

2008年06月05日 | 映画(た行)
『ダーウィン・アワード』(原題:The Darwin Awards)
監督:フィン・テイラー
出演:ジョセフ・ファインズ,ウィノナ・ライダー他

進化論を唱えたダーウィンにちなんだ、
ダーウィン賞というものが実在するのだそうです。
ただし、偉大なダーウィンには失礼なジョークで、
受賞対象者は「劣化した遺伝子を人類の遺伝子から絶つ行動をした者」。
つまり、信じがたいアホをやらかして死に至った者です。
こんな賞を題材にできあがってしまったブラックコメディ。

マイケルは優秀なプロファイラー(犯人像を分析する人)。
しかし、血を見ると失神してしまう欠点がある。

ある日、連続殺人犯を見事に捕えるが、
格闘のさいに流れ出たわずかな血を見て失神。
犯人を取り逃がして市警をクビになる。

新しい就職先を探すにあたり、売り込み先として思いついたのが保険会社。
ダーウィン賞に値する死に方をするような人びとが
保険会社に多大な損害を与えているにちがいない。
自分のプロファイリング能力を保険金請求の調査に駆使すれば、
バカげた思考ゆえに死に至った人への保険金支払いをグッと減らすことができる。

そう熱弁をふるうマイケルに、
会社側は、プロファイリングが本当に役立つと証明できるなら
雇ってもいいと答える。期限は4週間。
マイケルは保険調査員のシリと組み、不可解な事故の調査に挑む。

人間の想像力って凄いなぁと思います。
本作に出てくる数々のバカげた死に方。
調査を進めるうち、そんなアホな人びとに対して、
マイケルが「ある種の尊敬の念」を抱き始めるのは
なんとなくわかるような気がします。

だって、こんなこと、普通はチャレンジしようとは思いません。
高層ビルに嵌め込まれたガラスが強化ガラスであることを証明しようと、
ガラスに体当たりして、ガチャン、パリ~ン。そのまま転落死。
自動販売機から飲み物をくすねようとして、
取り出し口に手を突っ込んだところ、抜けなくなってもがいていたら、
自動販売機が倒れて下敷きに。
オンボロ車にロケット・エンジンを積んで発進したら、そのまま飛んだ。
ヘヴィメタバンドのメタリカ(ホンモノが出演)のコンサート会場に行き、
チケットがないので塀を乗り越えたら、
塀の向こうは相当な高さの絶壁だった、などなど。

全編、プロファイラーのドキュメンタリーを製作中の学生が
手持ちカメラで撮影しているという設定なのも楽しいです。

卓越した想像力と、バカげた思いつきって、紙一重かも。

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『アフタースクール』

2008年06月02日 | 映画(あ行)
『アフタースクール』
監督:内田けんじ
出演:大泉洋,佐々木蔵之介,堺雅人,常盤貴子,田畑智子他

『運命じゃない人』(2004)を観たとき、
あんなに「幸せなヤラレタ感」を受けた作品は初めてで、
翌日以降もしばらくニンマリしていました。
同監督の最新作をロードショーにて。

どこから話してもネタバレになるので、多くは語れません。
とりあえず『運命じゃない人』をレンタルして、
ハマった人は映画館へ直行してください。

誰もが知っている一流企業、梶山商事に勤める木村。
身重の美紀に見送られて出勤する途中、
中学の同級生で、親友の神野と出会う。
木村はちょうど良かったとばかりに、神野に車を貸してくれと言い、
神野の愛車ポルシェに乗って行ってしまう。

その日、木村は出社しなかった。
病欠の連絡を会社に入れていたが、
同僚が横浜のホテル前で、木村が美女とポルシェに乗り込む姿を目撃。
携帯で撮影した写真を社内の喫煙室で見せびらかしていると、
上司がその写真をくれと言う。

アダルトグッズショップの店員兼探偵の北沢のもとへ、
その写真を持った男が現れる。
男は素性をまったく明かさず、木村捜しを依頼する。
報酬に釣られて引き受ける北沢。

木村が地元を離れていないとにらんだ北沢は、
同窓会サイトで木村の同級生の情報を得ると、
中学の同級生をよそおって、木村の母校へ。
そこにいたのが母校で教師を務める神野だった。

木村に会いたいという北沢に、
神野は、木村と今朝から連絡が取れないこと、
産気づいた美紀を木村に代わって病院へ連れて行ったことを話す。
なぜ木村を捜しているのかと聞かれ、
探偵であることを隠せなくなった北沢は、例の写真を神野に見せると、
依頼に来た男の尾行を半ば強引に神野に任せる。
やがて、木村の連れの女性をヤクザが追っているという噂が届き、
しっちゃかめっちゃかな展開に。

キャッチコピーどおり、甘く見てるとダマされちゃいます。
監督がキャストを選ぶに当たり、
良い人にも悪い人にも見えそうな俳優にこだわったそうですが、
神野役の大泉洋、北沢役の佐々木蔵之介、木村役の堺雅人のいずれも
まさにそんな人。だからダマされる。

本作もやっぱり「幸せなヤラレタ感」。
印象的だった神野の台詞は、
「おまえがつまらないのは学校のせいじゃない。
 おまえがつまらないせいだ」。

人生は楽しく。
頼もしく熱く優しい同級生。ずっと一緒に。

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