夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『幸せの教室』

2012年05月18日 | 映画(さ行)
『幸せの教室』(原題:Larry Crowne)
監督:トム・ハンクス
出演:トム・ハンクス,ジュリア・ロバーツ,ブライアン・クランストン,
   セドリック・ジ・エンターテイナー,タラジ・P・ヘンソン他

先週、封切り日に近所のシネコンにて。

監督・脚本・主演がトム・ハンクスで、ジュリア・ロバーツ共演と来れば、
いい話を期待しないほうがおかしいっちゅうもんで。
予告編が良かったので、絶対観たいと思っていましたが、
結論から言って、予告編の出来が良すぎ。(;_;)

地元の大型スーパーに勤務するベテラン従業員、ラリー・クラウン(=原題)。
同僚からも客からも慕われ、優秀社員賞を何度もゲットしてきた。
その日、上司から呼び出されたときも受賞の話だと思っていた。
ところが、それは世にも無情な解雇の通達。
さらに非情なことに、理由はラリーが大卒ではないからだという。

打ちひしがれるラリーだったが、家のローンも残っている。
しかも、別れた妻から買い取ったせいで、ローンは以前よりも膨らんだ状態。
銀行は話に応じてくれないし、どうにか稼がなければと再就職活動。
しかし、どこも雇ってくれるところはなく、
ならばと近隣の短期大学で経済学とスピーチの勉強をすることに。

スピーチの授業を担当するのは美人教師、メルセデス・テイノー。
彼女は、ろくに仕事もせずにポルノサイトばかり見ている夫に幻滅し、
人数が集まるとも思えない早朝の時間帯の授業を担当させられ、
いったい自分は何をやっているのか、人生に疲れ果てている。

新しいクラスに集まったのはラリーを含めて10名。
メルセデスの投げやりな授業が始まるのだが……。

何事も始めるのに遅すぎることはない。
そんなメッセージが込められているとは思いますけれど、う~ん。
私の場合、貯まったポイントで観たために、この日はタダだったのですが、
それでもわざわざ劇場で観んでも良かったかと思ってしまいました。
ロケ地にお金がかかるとも思えず、低予算で済みそうな展開。
製作費はギャラが大半を占めただろうという印象が否めません。

とはいうものの、この面々ですから、フツーにはイイんです。
経済学の授業中、ラリーはいじっていた携帯を取り上げられるも、
真面目な勉強ぶりで曲者教授も舌を巻くほどに成長。
数カ月前にはわけのわからなかった住宅ローンの仕組みも熟知し、
最後に銀行に「うりゃ~」と乗り込むところは痛快です。

だったら学生生活に徹してくれればよかったのに。
ラリーとメルセデスのロマンスは要らんなぁ。
いや、ありだとしても、匂わせてくれる程度ならばマシでした。
最後のシーンなんてまったくの蛇足で、
高額ギャラ俳優のキスシーンで帳尻を合わせました的な印象。
ジュリア・ロバーツの豪快な笑い方はいいけれど、
腹の出たオッサンとのキスシーン、別に見とうない。

自作の映画で自ら主演してラブシーンを入れるのって、
それなりの年齢になったらやめていただきたいと切に願うのでした。(^o^;

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『レンタネコ』

2012年05月16日 | 映画(ら行)
『レンタネコ』
監督:荻上直子
出演:市川実日子,草村礼子,光石研,山田真歩,田中圭,小林克也他

シネ・リーブル梅田にて。

『バーバー吉野』(2003)、『かもめ食堂』(2005)の荻上直子監督の作品。
この監督がネコ好きとは知りませんでした。
『ネコを探して』(2009)ではネコと一晩過ごせる実在のホテルが紹介されていま
したが、
こちらは顧客のニーズに応じた期間、ネコを貸してくれる「レンタネコ屋」です。

平屋の純日本家屋で猫に囲まれて、ひとりで暮らすサヨコ。
彼女は“レンタネコ”という商売を営んでいる。
それは、心の寂しい人にネコを貸し出すという商売。

ただし、希望者は誰でも借りられるというわけではない。
サヨコは希望者の自宅を訪れ、環境などをチェック。
ネコをちゃんと可愛がってくれる人かどうかを審査し、
それに適った人のみがネコを借りることができるのだ。

「レンタ~ネコ、レンター~ネコ、寂しい人にはネコ貸します」。
スピーカーでそう呼びかけながら、ネコを乗せたリヤカーを引くサヨコ。

夫に先立たれ、つい最近には愛猫まで失った老婦人。
単身赴任中で、まもなく家族のもとへ帰ることが決まっている中年男性。
めったに客が来ないレンタカー屋の受付嬢(兼なんでも係)。
こんな人たちがサヨコからネコを借りるのだが……。

荻上作品をご存じの方ならおわかりかと思いますが、
力は入っていないけど妙にキチッキチッとした役者のしゃべりかた。
これはリアリティには欠けるので、
このホヨヨンとした空気とネコが好きな人でなければオススメ不可。
ただ、ネコ好きの人にはたまらん作品です。

ネコを借りる3名との定型化されたやりとりにもニッコリ。
ああいう申込書を出されたら、あなたなら何と書きますか。
サヨコの副業もなかなかワラかしてくれます。

それ以上にワラかしてくれるのは、謎の隣人を演じる小林克也。
女装したオッサン役ではなく、れっきとしたオバハン役で登場し、
『ベストヒットUSA』のあの声で、いつもサヨコにニッコリ痛烈な一言。
「あのババァ、許さん~」とサヨコは心の中でこぶしを握りしめます。
そんなババァだからこそ、最後の玉子には和みました。

悪意ある人は出てこない作品です。
心地よくて眠りに陥りそうにならなくもないですが、ネコ好きにはぜひ。
ネコが嫌いな人にとっては拷問でしょうね(笑)。

それにしても、ネコを貸してほしいという人が吉岡、吉田、吉川、吉沢。
みんな「吉」で始まる姓だというのは、何か意図がある?

心の穴ぼこ、ネコと一緒なら埋まります。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ビースト・ストーカー/証人』

2012年05月15日 | 映画(は行)
『ビースト・ストーカー/証人』(原題:証人)
監督:ダンテ・ラム
出演:ニコラス・ツェー,ニック・チョン,チャン・ジンチュー,ミャオ・プゥ,リウ・カイチー他

現在公開中の2008年の香港作品
シネマート心斎橋3本ハシゴの3本目。そしてこれも泣きました。

刑事のトンは、同僚でベテラン刑事の新爺とともに、
重犯罪者の張日東とその一味を追跡、激しいカーチェイスの末に追い詰める。
逃走しようとする車に銃弾を撃ち込み、身柄を確保。

ところが、車のトランクを開けてみると、そこには横たわる少女が。
トンの撃ち込んだ銃弾は、犯人らの身動きを取れなくしただけではなく、
イーという少女の命をも奪っていたのだ。

イーは張日東の事件と担当する女性検事、アンの長女。
娘を亡くしたアンだったが、引き続きこの事件を担当すると言う。
数カ月後、意識不明で入院中だった張日東が目を覚ます。

一方のトンは今も立ち直れずにいた。
アンのもう一人の娘で、イーの妹に当たるリンは、
何も知らずにトンのことを「お兄ちゃん」と慕う。

ある日、幼稚園の行事に参加していたリンとアン。
一瞬の隙を突いて、リンが何者かにさらわれる。
行事を見学していたトンが追うが、間に合わない。

やがてアンのもとへ犯罪組織から電話がかかってくる。
リンを無事に返してほしければ、裁判の証拠を隠滅しろというのだ。
強盗現場から採取された血液さえなければ、張日東は証拠不十分で無罪だから。

犯罪組織は、元ボクシング選手のホンにリンの拉致監禁を依頼。
ホンは病に伏した妻にかかる高額な治療費のために、
いまは凄腕の殺し屋として犯罪に手を染めていた。

リンのことは絶対に守ってみせる。
そう誓ったトンは、新爺の助けを借り、ホンを追いはじめるのだが……。

タイトルどおり、追うほうも追われるほうも獣のよう。
トンを演じるニコラス・ツェーは、線の細そうな綺麗な顔立ちなのに、
男臭いのなんのって。傷だらけの姿がまた泣かせます。

トン、アン、ホン。
一見たまたま事件に関わることになってしまった3人なのに、
実は……のラストに呆然、胸が締めつけられました。
『クロッシング』(2009)を思い出しましたが、
『クロッシング』より衝撃度と哀愁度はずっと上。

同監督と同主演コンビの『密告・者』(2010)の高評価を受けて、このほど公開された本作。
『密告・者』は未見なので、必ず観ようと思っていますが、
こんなに切ないもんをまた見せられるんかと思うと、観る前から泣けてくる。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ジョイフル♪ノイズ』

2012年05月14日 | 映画(さ行)
『ジョイフル♪ノイズ』(原題:Joyful Noise)
監督:トッド・グラフ
出演:クイーン・ラティファ,ドリー・パートン,キキ・パーマー,ジェレミー・ジョーダン,
   コートニー・B・ヴァンス,デクスター・ダーデン,ジェシー・L・マーティン他

シネマート心斎橋にて3本ハシゴの2本目。
最近、第七藝術劇場では「窓口にブロッコリーを持参した人、1,000円に割引」
というキャンペーンをしていてウケましたが、
こちらでは「音楽関連学校の学生&先生は1,000円に割引」です。

アメリカ南部、ジョージア州の小さな町、パカショー。
不景気に町は沈鬱ムード。店も次々に閉店を余儀なくされている。

住民に唯一の希望をもたらすのは、教会の聖歌隊。
全米の聖歌隊コンクール“ジョイフル・ノイズ”に出場して優勝すれば、
町は活気を取り戻すにちがいないと誰もが思っている。

ところが、長年聖歌隊の指導に当たってきたバーニー(♂)が急逝。
バーニーの遺言と教会の意思により、後任にはヴァイ(♀)が選出されるが、
教会の大口スポンサーでもあるバーニーの妻G.G.(もちろん♀)はちと不満。
それでもなんとか聖歌隊を盛り上げようと、気を落ち着けて参加する。

そんなある日、G.G.の孫で、悪ガキで通っていたランディが町に舞い戻る。
どうやら母親から追い出された様子で、G.G.の家へ身を寄せることに。
聖歌隊の練習を聴いたランディは、ヴァイの娘オリビアの美貌と歌声に魅了されて……。

聖歌隊といえば、もともとご存じの方はともかく、
天使のごとき子どもたちが清楚な服を着て讃美歌を歌うというイメージを持っている人もいるかも。
もしも後者のイメージを持っていたなら、本作でビックリ仰天。
“ジョイフル・ノイズ”が実在のコンクールなのかどうかはわかりませんが、
本作のコンクール中継ははちゃめちゃに楽しい。
出演者も観客もノリノリで、ゴスペルの醍醐味バッチリ。
音楽×映画にただでさえ弱い私は、『カエル少年失踪殺人事件』とはまたちがう涙。

ヴァイ役のクイーン・ラティファとG.G.役のドリー・パートンが本職の歌で魅せてくれるのはもちろん、
オリビア役のキキ・パーマーとランディ役のジェレミー・ジョーダンも素晴らしい。
他界してしまったホイットニー・ヒューストン、そのニュースのバックには必ず、
彼女の代表曲として“Always Love You”がかかっていますが、
あれはカバーで、オリジナルはドリー・パートンでっせ。

そのドリー・パートン、ぷりっぷりの唇とキューッと上がった口角、
バレーボール級の胸はやはり整形じゃないとムリだと思うんですけど。(^^;

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『カエル少年失踪殺人事件』

2012年05月12日 | 映画(か行)
『カエル少年失踪殺人事件』(英題:Children...)
監督:イ・ギュマン
出演:パク・ヨンウ,リュ・スンリョン,ソン・ドンイル,ソン・ジル,キム・ヨジン他

GW中、ハンカチ握りしめて泣くつもりで劇場へ足を運んだのに、
これこれではほとんど泣けず、号泣してしまったのが本作でした。
シネマート心斎橋にて3本ハシゴの1本目。

“韓国三大未解決事件”のひとつと言われる、実在の迷宮入り事件の映画化。
ちなみに、あとのふたつの事件も映画化されていて、
『殺人の追憶』(2003)と『あいつの声』(2007)だそうな。
後者は昨年公開されたところで、DVD化は未定。はよ観たい。

1991年3月26日、統一地方選挙の日。
大邱近郊、トアプ山のある麓ののどかな村で、小学生5人が行方不明になる。
カエルを捕りに行くと言って出かけた少年たちはどこへ消えたのか。
警察や軍、地元民を挙げての必死の捜索にもかかわらず、手がかりは皆無。
少年たちの生死すらわからないまま、5年以上の歳月が流れる。

TV放送局に勤めるカン・ジスンは、視聴率を稼ぐことにしか興味がない。
野生の鹿を追ったドキュメンタリーを撮り、最優秀作品賞を贈られるが、
後日、やらせだったことがバレて左遷される。

左遷先はあの少年失踪事件のあった村。
少年の親たちにとっては何年経とうがまだ事件は終わっていない。
仕事を辞めて捜索を続けている親もいた。
昔なじみのパク刑事もまだあきらめていない様子。

その執念になかば呆れるカンだったが、特ダネはほしい。
事件に関する未編集のビデオテープを見るうち、
大学で心理学の教鞭を執るファン教授のコメントに興味を引かれる。
それは失踪した少年の親に疑惑の目を向けるもので……。

地味で暗くて重い。悲惨な光景を包む美しい夕焼けと音楽に胸が痛みます。
しかも音楽は「長調」の曲であるところも私にとってはミソ。
「短調」の曲がもの悲しいのは当たり前なのですが、
「長調」で切ない曲というのがたまらん。

犯人扱いされた父親は、濡れ衣が晴れたとき、
濡れ衣を着せられたことはどうでもいい、そんなことよりも悲しいのは、
「みんな、息子が死んだと思っている」ことなんだとむせび泣きます。

特ダネを取ることしか考えず、結果的に誤認となる捜査を煽ったカンは、
こんな状況でも「やっちまった」程度の気持ちで、詫びる顔もへらへら。
しかし、やがて自分にも娘が生まれ、初めて親の気持ちに思いが及びます。

2006年に時効を迎えたこの事件。
最後の最後、少年の母親のもとを訪れたカンに、その母親がぽつりと明かす言葉に号泣。
しゃくりあげるほど泣いてしまったのは久々でした。

切なくて、悲しい悲しい物語。
思えば母親のそれも、序盤に登場する“認知的不協和”を解消しようとするゆえの行為。
参りました。秀作だと思います。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする