夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『わが母の記』

2012年05月09日 | 映画(わ行)
『わが母の記』
監督:原田眞人
出演:役所広司,樹木希林,宮崎あおい,南果歩,キムラ緑子,ミムラ,
   赤間麻里子,菊池亜希子,三浦貴大,真野恵里菜他

先月末のGW突入時に封切られたシネコン上映作品でどうしても観たかったのは
『テルマエ・ロマエ』『HOME 愛しの座敷わらし』、そしてこれでした。
結論から言って、私は『テルマエ・ロマエ』がいちばん好き、次が本作。
けれど、本作がいちばんだったと言うほうが、人間的には善い人と思われそう(笑)。

平成3(1991)年に他界した、昭和の文豪と呼ばれる井上靖が、
70歳まであと数年という頃に出版した自伝的同名小説が原作。
本人をかぶらせたとおぼしき役に「伊上洪作」と名を与えています。

ベストセラー作家の伊上洪作は、父親危篤の知らせを受け、
両親と妹の志賀子夫婦が暮らす湯ヶ島を訪れる。
とりあえず父親の容態は落ち着いたかに見えたが、洪作が東京へ戻ると訃報が。

母親の八重には認知症の兆候が出はじめている。
その世話をこれまでは志賀子夫婦やもう一人の妹である桑子にまかせていたが、
たまには東京で八重を預かることにする。

洪作は、幼少時に自分だけが両親や妹たちと離れて暮らした経験があり、
なぜ引き離されたのかもわからないまま生きてきた。
桑子や志賀子は「兄さんは得をした」と言うが、
自分は母親に捨てられたのだという思いが拭えず、トラウマとなっている。
それゆえ、自分の娘たちには過干渉となり、
反抗期にある三女、琴子は不満をあらわにするのだが……。

芸達者な人たちが揃い、なんというのか、丁寧な演技に見惚れます。
売れっ子小説家の家庭や、この時代のいわゆる上流階級の暮らしぶりもわかり、
ノスタルジーにも溢れています。
ただ、全体的に優等生すぎて、「良かった~」とは素直に言えない自分が。
これ、素直に「良い」と言える人のほうがやっぱり善人だと思います(笑)。

原田眞人監督については、成島出監督と同様に、
良くも悪くもドラマティックに映像化して見せるのが上手い人だなぁという印象。
上手く言えないのですが、いつも普通に「良かった」と言えて、人にもお薦めできて、
興行的にも成功しそうな作品を撮っている、そんな印象を持っています。
と思ったら、『クライマーズ・ハイ』(2008)の監督&脚本コンビなのですね。

『テルマエ・ロマエ』で上戸彩の母親役だったキムラ緑子が、
役所広司演じる洪作の妹、志賀子役で出演しています。
樹木希林演じる八重から使用人扱いされて怒る様子など、
コミカルな演技がとてもいい味を出していました。
『真木栗ノ穴』(2007)では西島秀俊に色仕掛けするオバハン役、
しかもそれに彼は乗ってしまうのを思い出して笑いました。

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