夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『はさみ hasami』

2012年05月07日 | 映画(は行)
『はさみ hasami』
監督:光石富士朗
出演:池脇千鶴,徳永えり,窪田正孝,なんしぃ,綾野剛,樋浦勉,
   白石まるみ,石丸謙二郎,烏丸せつこ,竹下景子他

大阪・十三の第七藝術劇場の下階にあるシアターセブン、初体験。
客席数36の小さな映画館で、噂には聞いていましたが、座席の番号がめちゃくちゃ。
あちこちからかき集めた椅子を想像して、座り心地にも期待していませんでしたが、
意外や意外、ちょうど良いかたさです。

1月に新宿で公開されたのを皮切りに、全国で順次公開中。
大阪ではこのシアターセブンのみで、すでに終映しましたが、
関西ではあとは神戸元町映画館と京都みなみ会館にて。
なんとも控えめでニタッと微笑みたくなる上映館。

監督が『大阪ハムレット』(2008)の光石富士朗、主演が池脇千鶴と来れば、
大阪が舞台と思い込んでいましたが、東京・中野区が舞台でした。
池脇千鶴の標準語がなんとなくこそばゆい。

中野サンプラザで知られるこの町にある理容美容専門学校。
卒業生である久沙江(ひさえ)は、いまは教員として学生たちに指導している。

生徒たちは実にさまざま。

美容科の弥生は、カットが苦手。ハサミが言うことを聞いてくれない。
コンプレックスの塊で、朝も起きられず遅刻ばかり。

同じく美容科の洋平は、情緒不安定気味。
父親とその再婚相手との間に息子が生まれ、洋平にとっては年の離れた弟になるわけだが、
どうしても受け容れることができずにいる。

理容科のいちこは、おデブでイケていないが、大の優等生。
弥生はそんないちこのカット技術に目を見張り、ふたりは友人になる。
しかし、ギャンブル好きの父親がいちこの奨学金にまで手をつけてしまう。

こんな生徒たちと懸命に向き合い、自分も成長を続ける久沙江。
スポ根同様、生徒たちがもがく様子とそれを見守る教師の姿は、
見ていて胸が熱くなるし、文句なくイイです。

ただ、いまひとつのめり込めなかったのは、
頻繁に出てくる「~してあげる」という言葉のせい。これがどうも引っかかる。
池脇千鶴演じる久沙江が、生徒に向かって「~しといてあげるね」と言うたびにゲンナリ。
そこ、別に「~しとくね」でいいんじゃな~い?

上映時間112分の作品のラスト20分を切ったところで、
それまでほとんど映らなかった女子生徒がいきなり「辞める」と言うのもなんだかなぁ。
こんなに急ぎ足でエピソードを加える必要があったのか。
しかも、この生徒の母親は「娘の言うとおりにしてあげたいんです」。

だけど、生徒たちはみんな可愛くて一生懸命でした。
ベテラン教員を演じる竹下景子も頼もしく。
彼女の「ハサミのせいにするなんて10年早い」に対する、弥生の言葉、
「10年後にハサミのせいだと言ってみせます」が良かったです。

美容師と言えば思い出すのは、
小学校の頃にハマった柴田あや子の漫画『まゆ子の季節』。
懐かしくて、また読みたくなりました。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする