夜な夜なシネマ

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『孤島の王』

2012年05月11日 | 映画(か行)
『孤島の王』(原題:Kogen Av Bastøy)
監督:マリウス・ホルスト
出演:ステラン・スカルスガルド,クリストッフェル・ヨーネル,
   ベンヤミン・ヘールスター,トロン・ニルセン他

シネ・リーブル神戸にて。
ノルウェー/フランス/スウェーデン/ポーランド作品。

ノルウェー、オスロの南方に位置する孤島バストイ。
マイケル・ムーア監督の『シッコ』(2007)にも登場する刑務所がある島。
現在はバストイ刑務所として運営されていますが、
1900年から1970年までは少年矯正施設として運営されていたそうです。
その当時、ここで実際に起こった暴動事件が題材。

1915年、バストイ島の少年矯正施設に送り込まれた少年エーリング。
新入りの彼に指導係として付き添うことになったのは、優等生オーラヴ。
オーラヴは、このまま問題を起こさなければ、じきに施設を出られる予定で、
エーリングにも頼むからおとなしくしていてほしいと願う。

ここでは少年たちに名前はない。全員が番号を振られ、番号で呼ばれる。
オーラヴはC-1、エーリングはC-19。
エーリングと一緒に送り込まれたのは、ひ弱な少年はC-5。
院長と面会後、寮長を務めるブローテンからあれこれ指示を受けるが、
再教育の名目のもと、非人道的な日常が待ち受ける。

C-1によれば、自分が知る限り、脱走を試みて成功した者はいないらしい。
それでも脱走を企てたC-19は、あえなく失敗。
島に連れ戻されてからはさらに過酷な仕打ちが待っていた。

そんな折り、C-5がブローテンから性的虐待を受けていることを知ったC-1が、
意を決して院長に報告。院長はあり得ない話と一蹴するが、
C-5の持ち場を変えて一旦はブローテンから遠ざける。
しかし、やがてC-5は自ら命を絶つ。

院長はブローテンを追放したかに見えたが、
院長の弱みを握っているがゆえに結局は追い出せなかった。
C-1が晴れて島を出る日、ブローテンが再び島へやってきて……。

酷くつらい内容ですが、きつい労働や懲罰のシーンはわりと控えめな描写で、
想像していたよりは落ち着いて観ることができました。

「愛のない罰は残酷なだけ」、そう語る院長を演じるのはステラン・スカルスガルド
そんなことを言うもんだから、極悪非道なのは寮長だけかと思っていたら、
悪事を働かずにはいられないのですねぇ。
少年たちを守れるのはアンタしかいないのに、保身に回ってしまうなんて。

銛を3本も打たれて、丸一日生きていた鯨がいた。
何度かC-19ことエーリングが口にするこの話が突き刺さります。

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