夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ピンク・スバル』

2012年05月29日 | 映画(は行)
『ピンク・スバル』(英題:Pink Subaru)
監督:小川和也
出演:アクラム・テラーウィ,ラナ・ズレイク,グリアーナ・メッティーニ,
   川田希,ダン・トーレン,小市慢太郎,ニダル・バダルネ,サルワ・ナッカラ他

学生のときに原付の免許を取り、就職してからも原付で通勤していました。
「死にたなかったら原付では走らんほうがええで」と言われていた、
大阪・中央環状線をずっと、50ccの原チャリ(←私より若い世代は“原チャ”)で。

原チャリがぶっこわれたときは、私のからだはなんともなく、
原チャリがなんともなかったときは、私は前十字靱帯を派手に損傷。
そろそろ車の免許の取りどきなのかのかなと考えて、
教習所へ通いはじめました。そのときの話はこちら

免許の取得後、初めて運転したのは、親戚から譲り受けたスーパーシビック。
所有者だった親戚の知人はなぜか一度も乗ることなく月日が過ぎたそうで、
走行距離はほぼゼロの新古車でした。

ちょうど弟も免許を取ったところで、
タダでもらったこの車で姉弟ふたりとも練習し放題。
壁に擦るまで寄せて(もちろんわが家の壁です)、車幅感覚を鍛え(?)、
廃車にするころには助手席のドアが開かず。
申し訳ないことをしたと思っていますが、
あの車があったからこそ、運転が好きになりました。

その後、キョンキョンのCMが懐かしいオートザムのレビューを購入。
10万kmを超えたところで息も絶え絶えになり、
次のスバルで15万km、そして今もスバルに乗っています。

さて、これは2009年の日本/イタリア作品。
昨年の公開時に観逃し、先月末DVD化されて即レンタル。
劇場で観た作品を優先してUPしていたら、出番が今日になっちゃいました。
まさに“スバル”のお話です。

1970年代以降、近代化にともなって、自動車社会へと変容したかったイスラエル。
しかし、世界の多くの自動車メーカーはイスラエルへの輸出を躊躇。
富士重工だけがイスラエルへの輸出に乗り出しました。
こうして“スバル”はイスラエルの希望の星、幸せの象徴となります。
イスラエルのスバル車のシェアは実に80%以上でした。

本作の舞台となるタイベは、イスラエルとパレスチナの境界にある町。
平和な町として知られる一方、車泥棒が家業として成り立っている町でもあります。
というのも、隣接するパレスチナ地区にはカーディーラーが少なく、
車を必要とする住民が多いのに、供給が追いつきません。
そこで、タイベの車泥棒がイスラエル都心部で盗んだ車で境界を越え、
パレスチナのトルカレムという町で解体・再生して売るのだそうで。

物語の主役、ズベイルは、妻に先立たれて以来、
妹のアイシャとともに2人の子どもを育てる実直な中年男。
数日後に控えたアイシャの結婚式の送迎に間に合わせたくて、
20年間、こつこつ貯めてきたお金でレガシーを買います。
納車された黒のピカピカのレガシーに、隣近所をあげてのお祭り騒ぎ。

ところが、翌朝、表に出ると、レガシーがありません。
保険が下りると思いきや、保険は週明けに掛けるつもりだったとディーラーの姉ちゃん。
半狂乱のズベイルは、大泥棒のアデルに捜索を依頼。
アイシャはレガシーが見つかるまで結婚しないと言いだして、婚約者は涙目。
怪しげな魔術師やら“スバルの母”と呼ばれるおばちゃんやらも登場し、
そのうち親族やら駐在の日本人やらも巻き込まれてしっちゃかめっちゃかに。

盗まれたのはただの車じゃない。希望の星なわけで。
いや~、おもしろかったです。

後部座席で子どもがほたえている車を、そうとは知らずに盗んだ男は、
子どもに気づいてもうろたえないし、子どもも「誰?どこへ行くの?」てな調子。
男は「泥棒だよ。どこまで行くの。送るよ」と答える。
目的地に着けば、子どもは親に電話をかけて
「泥棒さんに送ってもらった。先に着いてるからね」と屈託がない。
物騒なんだか平和なんだかわかりません。

結局、レガシーは見つかりますが、簡単に返却されはしません。
その場に集合した全員が妥協できる案が練られ、恨みっこなし。
なんだかとてつもない器の大きさを見せられたようで、
笑顔が気持ちいい作品なのでした。

エンディングテーマ曲はもちろん、谷村新司の『昴』です。

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