夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『華麗なるギャツビー』

2013年06月22日 | 映画(か行)
『華麗なるギャツビー』(原題:The Great Gatsby)
監督:バズ・ラーマン
出演:レオナルド・ディカプリオ,トビー・マグワイア,キャリー・マリガン,
   ジョエル・エドガートン,アイラ・フィッシャー,ジェイソン・クラーク他

6月中有効のTOHOシネマズの鑑賞券を使うべく、TOHOシネマズ梅田へ。
これは3Dで観なくてもいいと思っていましたが、
その日のほかの都合との兼ね合いで上映時間が合う3Dにて鑑賞。

1974年のロバート・レッドフォード版は観たはずですが、ほぼ記憶なし。
学生の頃、村上春樹の『ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック』を読んだのは覚えていますが、
彼の翻訳による『グレート・ギャツビー』は未読。
バズ・ラーマン監督の名前に惹かれて観に行ったようなものです。

物語は、原作と同じくトビー・マグワイア演じる青年ニック・キャラウェイが語り手。
彼の回顧録の形を取っています。

ニックが振り返り訥々と語りはじめる1922年。

証券会社に勤務するニックは、ニューヨーク郊外に移り住む。
隣家は宮殿のような豪邸で、週末毎に盛大なパーティーが開かれては乱痴気騒ぎ。
豪邸の主はジェイ・ギャツビーという男だが、誰も彼を見たことがないらしい。
だが、騒ぎをよそにひとりたたずむ彼の姿をニックは幾度となく見かける。

ある日、ニックのもとへギャツビーからパーティーの招待状が届く。
日頃パーティーに出席しているのは勝手に集まった人々ばかりで、
正式に招待状を受け取ったのはニックだけ。
あまりの人の多さにギャツビー本人とは会えそうにもないと観念するが、
ギャツビーのほうからニックに声をかけにやってくる。

ギャツビーはニックに至上の笑みを向け、
以後、何かと誘いの声がかかり、ふたりは旧知の友人のように過ごす。
なかなか自分のことを話そうとしなかったギャツビーだが、
何度か一緒に過ごすうち、彼の生い立ちについてニックは聞かされる。
どこまでが真実なのかはわからない。けれどもギャツビーに強く惹かれるニック。

そんなとき、ギャツビーが頼みがあると言う。
ギャツビーの豪邸の対岸、これまた豪邸に住むトム・ブキャナン。
彼の妻はニックのいとこのデイジーで、
彼女と会えるようにお茶の席を設けてほしいとのこと。
ニックは迷ったものの、ギャツビーの頼みを聞き入れるのだが……。

まばゆいパーティー、訪問客の衣装にゴージャスなステージ。
そしてギャツビー邸からブキャナン邸を臨む構図。3Dで観た甲斐がありました。

キャリー・マリガンは相変わらず可愛いですが、
どうも垂れ乳が頭をよぎってしまうのです。
衣装を着ていても、胸の位置の低さが気になる。(^^;
ちなみに、「キャリー・マリガン 垂れ乳」というのもよく見かける検索キーワードです。

死人に口なし。
彼女を守りとおして黙ったままこの世を去ることになったのに、
彼の汚名は晴らされることがありません。
女の残酷さをサラリ、けれどもグサリと見せる手法がウマイ。

一見すると『ジャンゴ 繋がれざる者』のディカプリオのほうが強烈な印象を残しますが、
「まるで殺人者」のような表情、後ろ姿だけで見せる切ない想い、
どのシーンを取ってみてもやはり凄いやっちゃなぁと思いました。

人間の本質を問い、その価値をどこに見るべきかを問うています。
緑色の光が鮮烈に。バズ・ラーマン監督、あっぱれ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『フェニックス 約束の歌』

2013年06月21日 | 映画(や行)
『フェニックス 約束の歌』(英題:Rockin' on Heaven's Door)
監督:ナム・テクス
出演:イ・ホンギ,マ・ドンソク,イム・ウォニ,ペク・ジニ,シム・イヨン,チョン・ミンソ他

前述の『箱入り息子の恋』とハシゴ。
イ・ビョンホンは好きだけど、イ・ホンギは聞いたこともありません。
けれどもせっかくのTOHOシネマズデー、
時間的にこれしかハシゴできないということもあり、
テアトル梅田からTOHOシネマズ梅田へダッシュ。

冒頭のシーンを観て、「しまった、選択をまちがえた」と苦笑いしかけました。
まるで韓流アイドルスターのミュージックビデオで。
その後ホッ、まさにミュージックビデオの撮影シーンという設定でしたから。

品行方正とは言いがたいトップアイドルスターのチュンイ。
その日もパーティーに出席したところ、一般客にからかわれて激怒。
口論で済めば良かったものの、先に手を出してしまう。

償いとして社会奉仕活動を命じられ、行き先に決定したのはトンヒョン病院。
マネージャーの運転で、街から遠く離れた病院へと向かうが、
道中、立ちションを少女に激写されて怒り狂う。
少女からカメラを取り上げたところ、通りかかった若い女性から叱責され、
態度を改めないチュンイは、その女性から田んぼに突き落とされる。

散々な思いをしながらたどり着いた病院。
そこにはあの激写少女ハウンと突き落とし女性のアンナが。
ハウンは入院患者、アンナは病院の雑務を手伝っているらしく、なんとチュンイの指導係。
彼女から「よくできました」のハンコを貰えなければ、社会奉仕活動は延々と続くのだ。

どんな病院かもわからずにやってきたが、
患者らはタバコは吸うわ、夜な夜な歓楽街に繰り出すわで、チュンイは唖然。
やがてここは終末期医療を施すホスピスで、
どの患者もすでに治癒の見込みはなく余命わずかであることを知る。

ある日、どこからともなく聞こえてくるギターやベースの音。
音の出どころをたどってみると、アンナと患者数名がバンド演奏しているではないか。
お世辞にも上手とはいえない演奏にチュンイはとりあえず知らん顔。
ところが、資金難にあえぐ病院のため、賞金を狙ってオーディションに参加するという。
出場はオリジナル曲であることが前提で、曲を作れるチュンイに依頼が来る。

とんでもないことだとチュンイは断るが、
もしも曲を作ってくれるならばハンコは2倍押すとアンナが約束。
また、チュンイのアメリカ進出の話が本格化し、
この社会奉仕活動から早めに解放されなければ間に合わないこともあり、
曲作りを承諾、バンドの決勝進出を目指して演奏の特訓を開始するのだが……。

泣ける映画の王道でしょう。
わがままなトップスターと、気が強く余命わずかな女性がいて、難病に冒された少女も。
スターが心を入れ替えて自分たちのために頑張ってくれていると思い込んでいたら、
実はそこには打算があり、それを知った女性が裏切られたと怒り悲しむ。
けれどもそれは勘違いで、戻ってきたスターは彼女たちのために一肌脱ぐという。

終映後に「こんなに泣いた映画、初めて」と言っている女性客を見かけました。
泣きましたよ、私も泣きましたけど、ま、フツー。
でも、患者で入れ墨だらけの元ヤクザ、ムソンは泣かせます。
毎回これがこの世で味わう最後のタバコだと思っているんだと語る表情。
この世に未練はないふうだけれども、本当は怖くてたまらない。
そんな心を吐露するシーンや、みんなへの別れの言葉を綴るシーンはめちゃ泣けます。

『中学生円山』で涙ぐむ私は「泣きのツボ」が相当変なのでしょうね。(^o^;

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『箱入り息子の恋』

2013年06月20日 | 映画(は行)
『箱入り息子の恋』
監督:市井昌秀
出演:星野源,夏帆,平泉成,森山良子,大杉漣,黒木瞳,
   穂のか,柳俊太郎,竹内郁子,古舘寛治他

先週金曜日の晩、職場の某球団友の会の宴会開催。
別に休みを取る必要はないのですけれども、
ちょうどその日はTOHOシネマズデー、午後休を取ってしまおうと。
TOHOシネマズデーだけど、こっちが観たくなってテアトル梅田へ。

『あの女はやめとけ』の市井昌秀監督が大躍進。
もうメジャー級と申し上げてもいいでしょう。嬉しくなります。

市役所に勤務して13年、欠勤・遅刻・早退は皆無だが、昇進も一度もなし、
彼女いない歴=年齢の35歳、独身で童貞の天雫(あまのしずく)健太郎。
余分な口はいっさいきかず、昼休みは自宅へ戻って母親が用意した昼食を。
終業を知らせるチャイムとともに退席、タバコも酒も賭け事もせず、
夕食が終われば自室に閉じこもって格闘ゲームをするだけの毎日。

そんな健太郎を見かねた両親は、婚活を決意。
親同士が息子や娘の見合い相手を探す“代理見合い”にこっそり参加する。
ちょうど一人娘の奈穂子の相手を探しにきていた今井夫妻と知り合うが、
写真と経歴からはどう見てもアタリとは思えない健太郎に、今井夫妻は興味を示さない。
少し言葉を交わしただけですぐに辞去されてしまう。

ところが、急に雨が降り出したある日、母親と出かけていた奈穂子が、
母親が車を回してくるまでのあいだ、雨宿りしていると、
そこを通りかかったのが帰宅途中の健太郎。
普段は見知らぬ人に声をかけることなどあり得ない健太郎だったが、
しばし躊躇したのち、奈穂子に自分の傘を押しつけて駆け出す。

几帳面な健太郎の傘には名前を書いたシールが貼られていた。
それを見た奈穂子の母親は、見合いの相手を健太郎にと決めるのだが……。

実は奈穂子(夏帆)幼い頃から徐々に視力を失う病に罹り、いまはまったく見えません。
しかし、その事実を伏せて見合いに臨み、相手の反応を知りたいのだと言います。
会社を経営する奈穂子の父親(大杉漣)は経歴でしか人を判断しませんが、
彼に向かって健太郎(星野源)が意を決して口に出す言葉は鋭く、しんみり。

それでも気持ちをまったく変えない父親と対照的に、
母親(黒木瞳)は心から健太郎と奈穂子の恋を応援しようとします。
健太郎を比較的落ち着いた目で見つめる父親(平泉成)と、
なんだかんだで子離れできない母親(森山良子)の応酬も可笑しい。

健太郎の同僚でヤリマンと噂されている女性職員役の穂のか(石橋貴明の娘)、
上司役で相変わらずのすっとぼけぶりを見せる古舘寛治と、
脇役陣もとてもいい味を出しています。

3度登場する吉野屋のシーンはとても印象深く効果的。
泣いては笑わされ、笑っては泣かされ。

余談ですが、私がかよっていた大学では、なんと体育の授業が男女混合でした。
これはこれで面白くて、特にバスケの試合では、ちょこまか走る女子を尻目に、
アメフト部の男子が肩を入れて激走するわ、
ハンドボール部のGK男子がコートの逆端からゴールを狙うわ。
そのさいに男子同士でよく「吉野屋の牛丼、つゆだく、玉子付き」を賭けていました。
卒業後もなかなか吉野屋に行く機会がなかった私は、
30前になってから頼み込んで吉野屋に連れて行ってもらったことがあります。(^^)

見える人は「見た目」で判断をする。
だけどもっと大事なものがある。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ビル・カニンガム&ニューヨーク』

2013年06月19日 | 映画(は行)
『ビル・カニンガム&ニューヨーク』(原題:Bill Cunningham, New York)
監督:リチャード・プレス
出演:ビル・カニンガム,アナ・ウィンター,トム・ウルフ他

前述の『くちづけ』を観終わってから、梅田ブルク7で思わず「ビール」。
だって、法要時の会食では誰も飲まなかったんだもん。
酒豪の印象があった伯母は「もう全然飲まへんねん」。
イケメンのお寺さんは車で来られていたのでノンアルコールビールを。
私もノンアルコールビールをいただきましたが、
映画の待ち時間にどうしてもアルコールを補給したくなり。(^^;

オシャレにはとんと疎い私ですが、ファッションのドキュメンタリーは大好きです。
『ファッションが教えてくれること』(2009)や『ヴィダル・サスーン』(2010)など、
いくつになろうとセンスを磨きつづける人たちの話は嬉しくなります。

本作は、84歳の写真家ビル・カニンガムを捉えたドキュメンタリー。
米ニューヨーク・タイムズ紙の人気ファッションコラムを担当し、
50年以上もの間、ニューヨークの町をチャリで疾走、
街ゆく人びとのファッションを撮りつづけています。

ファッション以外にはまったく興味なし。
ヴィダル・サスーンのような洒落たおじいさんを想像していたら、
愛用している服はポケットが多くて機能的だという理由で清掃作業従事者のジャンパー。
雨が降ればほとんどビニール袋のようなチープな黒合羽を。
どうせまた破れるからと、空いた穴はビニールテープで補修します。

食べるものにも無頓着。
もっぱらサンドイッチで済ませ、安ければ安いほどいいと笑います。
撮影当時はカーネギーホールの階上の住人で、
狭い部屋にはキッチンなし、ベッドのほかには写真関係のもののみ。
無駄なものにはお金は使わないし、無駄にお金をもらうことも良しとしません。
お金を受け取れば自由がなくなる、自由ほど素敵なものはないと言うのです。

街角で彼に黙殺されるのはオシャレを自負する人にとっては屈辱的なこと。
けれどもビル自身には黙殺しているなんて意識はありません。
自腹を切って自分だけの着こなしをする人を追っているだけのこと。

彼についてコメントを求められた著名人の話も楽しい。
彼に写真を撮られたからこそ著名になった人もそこにはいます。
ファッションに対するまなざしにはいつも愛情が込められ、
悪意を持った写真など一枚も存在しないと。
ときには彼の写真が明らかにした事実により、騒ぎになってしまうこともあるのだそう。
けれども、それは彼の写真のせいではなく、他者が彼の写真に付けた見出しによって、
悪意を持った写真となってしまうのですね。

センスは誰でも持っている。ただ、多くの人にはそれを使う勇気がないだけ。
そう言われても、いや、その格好はできんやろ!と思うファッションも多数。
でも、人種にも職種にもまったく偏見を持たず、
ひたすらファッションだけを追うビルの目にニッコリさせられることしきり。

好きなことだけをするために、ほかのものはあきらめてきたこともわかります。
だけど、多くのものを手に入れるよりもファッション一筋のビル、実にいい顔をしています。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『くちづけ』

2013年06月17日 | 映画(か行)
『くちづけ』
監督:堤幸彦
出演:貫地谷しほり,竹中直人,宅間孝行,田畑智子,橋本愛,
   麻生祐未,平田満,嶋田久作,岡本麗,伊藤高史他

先週は伯母の七回忌で、出席者を親戚の女性に限った「女子会」。
やたらB型が多くて(だからってこともないのでしょうけれど)、楽しい面々です。
男性は(私たちから見れば)まだお若いイケメンのお寺さんのみ。
いつもオバサンたちに囲まれてお疲れさまです。(^o^)

和気藹々とした法要を東生駒で終えたあと、梅田へ。
法要が何時に終わるともわからなかったため、
観られるかもしれない映画の時間はつぶさにメモして出かけていました。

梅田に到着した時間がブルク7の本作上映開始時間をちょっと過ぎた頃。
最初の1分も観逃したくない私ですが、
今日観ておかないとDVD化されるまで観られそうにないしと、
観念して5分ほど経過してから劇場に入りました。

宅間孝行が自身の劇団“東京セレソンデラックス”のために書き下ろした戯曲を映画化。
本人が監督するかと思いきや、それは堤幸彦監督におまかせして。
ちなみに、『愛と誠』(2012)の脚本もこの人によるものです。

かつて人気漫画家として活躍した阿波野幸助、ペンネームは愛情いっぽん。
出産直後に亡くなった妻に代わり、漫画家業の手を止めて、
男手ひとつで知的障害のある娘のマコを育ててきた。

マコは30歳になるが、いっぽん以外の男性に極端な恐怖心を見せる。
そんなマコのそばを片時も離れずにいられるようにと、
いっぽんは知的障害者が集団生活する「ひまわり荘」を訪れ、
マコを預けるとともに、自分はそこで住み込みで働くことに。

予想に反してマコは男性入居者らのことも怖がらず、毎日落ち着いた様子。
特に35歳のうーやんには心を開き、結婚の約束まで交わす。
穏やかに流れる毎日だったが、いっぽんは自分が病に冒されていることを知り……。

もとは舞台劇だということもあるのか、セットも舞台風ならば、
出演者のアクション大きめ、滑舌よく、表情豊か。
最初はそのテンションの高さに、桂雀三郎の落語を聴いているかのような印象。
ドタバタぶりも可笑しくて、こんな題材であるとは思えません。

そのドタバタが落ち着きを見せはじめる頃、
さまざまな問題について深く考えさせられるようになります。
善意の経営者がいて、そこを必要としている入居者がいても、
それだけではどうにもならないあれこれ。
悲しい結末ではありますが、こうすることが幸せだったと思ってしまいます。

善人そのもののひまわり荘経営者に平田満。
その妻には近ごろ肝っ玉母ちゃんのイメージがダダはまりの麻生祐未。
彼らの娘はるかを演じる橋本愛が絶品で、
頭のはたきかたなど、ツッコミのセンスを感じます。
ともすれば偽善的になりがちなテーマを上手くまとめていると思います。

学生の頃に何度か参加した知的障害児のキャンプ。
子どもより自分が先には死ねないという親の目を間近で見たことを思い出し、
やるせなさを感じました。
観て泣いているだけでは駄目だなぁとは思うのですけれども。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする