夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ゲッベルスと私』

2018年07月22日 | 映画(か行)
『ゲッベルスと私』(原題:A German Life)
監督:クリスティアン・クレーネス,フロリアン・ヴァイゲンザマー,
   オーラフ・S・ミューラー,ローラント・シュロットホーファー

暑さにぶっ倒れそうだった三連休。
中日の日曜日はシネ・リーブル梅田で2本ハシゴ。

1本目に観たのは、オーストリアのドキュメンタリー作品。

ヨーゼフ・ゲッベルス。
アドルフ・ヒトラー率いるナチス政権下のドイツで宣伝大臣を務めた悪名高き人物。
そんな彼のもとで秘書として働いた女性がブルンヒルデ・ポムゼル。
彼女が69年の沈黙を破って103歳のときに30時間のインタビューに応じました。
それをまとめたのが本作。

全編、生き証人といえる彼女のほぼモノローグの形。
自分の生い立ちに始まり、ゲッベルスのもとで職を得たきっかけ、
勤めている間の話などを赤裸々と言えば赤裸々に語るわけですが、
話自体にそう驚きも珍しさも感じません。
ホロコーストのことは何も知らなかったという話も別に嘘っぽくはないし、
単にそこに職を得て、命じられる仕事をこなしていただけなんだなぁと。

彼女の話す内容より衝撃度が遙かに高いのは、
しばしば挟まれる当時のニュース映像や宣伝映像、教育映画。
特に、未完成で未公開だという映像に絶句。
ユダヤ人はこうなる運命だという印象を人々に植え付けるのが狙いだというその映像は、
がりがりに痩せたユダヤ人の死体をリヤカーにぽんぽんと投げ込んで運び、
さらにはそれを深く広く掘った土の中に投げ込む様子には、
尊厳を損なわぬようにという配慮など微塵もなく、ただただ悲惨。
ナチスのえげつなさを感じます。

ポムゼル女史はゲッベルスのことを凄い役者だと評していました。
普通に接しているときには別段カリスマ性を感じるわけでもない。
なのにひとたび大勢の聴衆を前にすれば、すべての人を虜にしてしまう。
恐ろしいことです。

「神様はいないけれど、悪魔はいる」。

70年近く経ってなぜインタビューに応じる気になったのか。
このままあの世へ逝ってはいけないと思ったのでしょうか。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする